物語のネズミ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 19:10 UTC 版)
中国では、火山の火の中に「火鼠」がすんでいると信じられていた。竹取物語では、かぐや姫が求婚者の安部御主人(あべみうし)に対して、結婚の条件として、火鼠の皮衣(ひねずみのかわごろも)を入手してくるよう求めている(正体は石綿という説がある)。 『宇治拾遺物語』の巻第三には、「子子子子子子子子子子子子」を何と読むかという判じものが載る。答えは「ねこのこ、こねこ。ししのこ、こじし」(猫の子、子猫。獅子の子、子獅子)である。「子」の字の二種類の読みかた「ね」および「こ」を巧みに組み合わせると正解が得られる。 鎌倉時代に成立したとされる『源平盛衰記』では、平清盛の栄華を予告する存在として登場し、鼠は大黒天神の使者といわれ、吉兆を表す動物として扱われている。 室町時代に成立したとされる御伽草子『弥兵衛鼠』は、京都東寺の塔に住む白鼠の弥兵衛が主人公の物語。妊娠した弥兵衛の白鼠の妻が雁の肉を食べたいと言い出し、弥兵衛が妻のために雁をとろうとしたところ、弥兵衛は雁の胸にぶらさがったまま、常陸国まで連れ去られ、その地の人間の長者の屋敷に住みつく。弥兵衛はそこでは、大黒天の使者として歓待され、やがて長者達の助力もあって都に帰るが、その後、長者は大黒天の加護で益々繁盛し、弥兵衛も「福祥の大膳の介」に任ぜられ、富貴を極めるというもの。 室町時代に成立されたとされる『東勝寺鼠物語』は、京の鼠阿弥陀仏という鼠とその子孫の鼠太郎穴元という鼠を主人公にした物語。鼠阿弥陀仏は諸国を巡り、奥州に立ち寄った際に、奥州54郡の領主の鼠に泊めて貰う。ところが、鼠阿弥陀仏は領主の鼠が悪行の報いにより、一族共々、猫に食い殺されてしまう所に遭遇してしまい、替わりに、奥州の領主の座におさまる。そして、その後の子孫の鼠太郎穴元は世の無常を観じ、妻とともに美濃の東勝寺という禅寺に穴を作って移り住む。しかし、幼い子鼠達が寺の至る所で悪さをしたため、ついには、僧達によって子鼠達は皆、打ち殺されしまい、薬と称して食われてしまう。それを見た鼠太郎穴元達は、これも悪行の故と悟る。 室町時代から近世初期にかけて成立されたとされる『猫の草子』では、僧侶姿の一匹の鼠が高徳の僧の夢枕に、二度にわたって立つ。一度目は、洛中に解き放たれた猫達によって鼠達が死んでいく惨状を訴えるが、高徳の僧に今までの鼠達のもたらした実害の報い、諸悪の報いであると説かれ、納得して消える。二度目は、洛中の鼠達と評定して近江の国に移住することに決議した事を高徳の僧に述べ、無念さと未練の言葉を残して、僧の前から消える。 歌舞伎「伽羅先代萩」では悪家老の仁木弾正が妖術でネズミに化け、大切な巻物を盗む。 御伽話『鼠浄土』では、落とした握り飯を追って穴に落ちた爺が、ネズミたちに歓待される。 説話集『沙石集』中の『ねずみの婿とり』(『ねずみの嫁入り』)では、ネズミの親が娘に天下一の婿を得ようと太陽を訪ねるが、より優れた者を薦められるうちに、結局ネズミこそが最も優れた者であると結論する。 ネズミを詠んだ俳句は文字通り枚挙に暇がないが、特に小動物に温かいまなざしを注ぎ続けた小林一茶や正岡子規に秀句が多い。例えば一茶の句には「菜の花や鼠と遊ぶむら雀」「朝顔の花に顔出す鼠かな」「ぞくぞくと鼠の穴もきのこ哉」、子規の句には「鼠追えば三匹逃げる夜寒哉」「長き夜の悪夢驚きて鼠落つ」「むしあつし鼠でも出よかりて見ん」などがある。 ドイツの民話、『ハーメルンの笛吹き男』で、ネズミはハーメルンの街を荒らす不吉な存在として描かれている。笛吹き男は笛の音によって、ネズミの群れをおびき寄せ、河で溺死させ退治した。報酬を出し渋る街の住民に怒った笛吹き男は、笛の音によって子供たちをすべてさらってしまう。 C・S・ルイスの小説『ナルニア国物語』にはリーピチープなど物言うネズミが登場する。 ダニエル・キイスの小説『アルジャーノンに花束を』には、脳外科手術によって知能を増大させたネズミ、「アルジャーノン」が登場する。 アニメ(カートゥーン)『トムとジェリー』では、ネズミのジェリーとネコのトムがドタバタを繰り広げている。 ネズミのキャラクターで最もよく知られているのはミッキーマウス。初めて映画に登場したのはアニメーション『蒸気船ウィリー』(1928年)である。ウォルト・ディズニーが飼っていたネズミがモデルであるとされる。体は黒く、黄色い靴に赤いパンツを着用している。 1959年-1972年の児童小説『ミス・ビアンカシリーズ』は「囚人友の会」代表しろねずみのミス・ビアンカと家ねずみのバーナードの冒険譚。 1972年の児童小説『冒険者たち ガンバと15ひきの仲間』はラットのガンバとその仲間が団結して宿敵白イタチと戦う話。続編に『ガンバとカワウソの冒険』がある。それぞれアニメ化もなされている。 1976年の小説『滅びの笛』大量発生したネズミによるパニック小説。 1999年の映画『スチュアート・リトル』の主人公スチュアートはがんばりやのハツカネズミ。 特撮映画『大群獣ネズラ』では銀座裏の下水道でネズミが破棄されていた宇宙食S602を食べ過ぎて巨大化したネズミが東京を襲撃するというストーリーだが、製作は中止となった。 漫画・アニメ『ドラえもん』の主人公であるネコ型ロボット、ドラえもんの苦手な物としてネズミが登場する(ネズミ(2112年 ドラえもん誕生ではネズミ型ロボット)にネコ耳をかじられ失ってしまった過去がトラウマとなっている)。 イタリアの人形劇『トッポ・ジージョ』の主人公トッポ・ジージョはネズミである。 ドイツのアニメ『de:Die Sendung mit der Maus(マウスといっしょ)』(『だいすき!マウス』という日本版がNHK教育テレビで放映)』の主人公マウスはネズミである。 絵本『ぐりとぐら』の主人公「ぐり」と「ぐら」は仲良しの野ネズミである。 ゲーム・アニメ『ポケットモンスター』では、ピカチュウやマリルやサンドパンなど、ネズミがモチーフのキャラクターが多数登場する。 E.T.A.ホフマンの児童文学小説「くるみ割り人形とねずみの王様」にはネズミの女王・マウゼリンクス夫人が登場する。 ゲーム『マッピー』の主人公はネズミがモチーフ。 イタリアの漫画『ラットマン』の主人公はネズミ。 宮沢賢治の短編小説『ツェねずみ』、『クンねずみ』は、ともに意地の悪いネズミを主人公とした寓話である。 開高健の小説、パニックでは、鼠害を取り扱っている。 『HUGっと!プリキュア』に登場する妖精ハリハム・ハリーはハムスターだが、見た目から周りの者にネズミと誤解され、そのたびに「ネズミちゃうねん!ハリハム・ハリーさんや!!」と突っ込み、時にはハリネズミのように逆毛を立ててキレる。
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