文化庁の補助金交付
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「あいちトリエンナーレ」の記事における「文化庁の補助金交付」の解説
8月2日、記者会見で柴山昌彦文部科学大臣は以下の見解を示した。 愛知県で開催されている「あいちトリエンナーレ」の企画の一つである「表現の不自由展 その後」において慰安婦を象徴する少女像など、公立美術館などで展示不許可になった作品等が出品されているということです。事実関係について申しますと、「あいちトリエンナーレ」に対しては、文化庁の「文化資源活用推進事業」のもとで、外部有識者による審査を経て採択がされておりますけれども、現時点において、補助金交付の決定はまだされておりません。審査時点では、申請書に基づいて、事業の目的、具体的には各地域が誇る様々な文化観光資源の体系的な創生・展開ですとか、国内外への戦略的広報の推進、文化による国家ブランディングの強化、観光インバウンドの飛躍的・持続的拡充といった事柄に合致しているかという観点から審査を行いましたが、具体の展示物、展示内容についての記載はなかったということであります。今回、今お話しになられたように、展覧会についての具体的な内容が判明をし、実施計画書の企画内容や本事業の目的等と照らし合わせて、確認すべき点が見受けられることから、補助金交付の決定にあたっては、そうした事実関係を確認した上で、適切に対応していきたいと考えております。 また、同日に菅義偉官房長官も記者会見で「補助金交付の決定にあたっては、事実関係を確認、精査して適切に対応したい」と述べた。芸術祭実行委員会会長代理も務める名古屋市の河村たかし市長は、開催経費の市負担分について政府と共同歩調を取ることを表明し、支払わない場合がありうることを示唆した。 その一方で、自由民主党の武井俊輔衆院議員は3日のTwitterで「政府や行政に批判的な人でも納税している。政府や行政に従順、ないしは意向に沿ったものにしか拠出しないということは、決してあってはならない」と反論している。また、名古屋学院大学の飯島滋明教授ら憲法学者91人が補助金交付の見直しについて「自分が気に入らないという理由だけで禁止し、抑制しようとするもの」と批判し、アレクシス・ダデンらが「ポピュリストの要求を唯々諾々と受け入れ、あまつさえテロリストの恫喝(どうかつ)に屈するなどということは到底受け入れられるものではありません。」と「日本の芸術家、ジャーナリスト、学者を支持する声明」を発表した。 芸術祭実行委員会会長を務める愛知県の大村秀章知事は8月5日の記者会見で、「あいちトリエンナーレ」が補助金の審査対象とされたことについて、憲法21条違反の疑いがあると批判を行った。この問題に対して、大村は以下の見解を示している。 税金でやるからこそ、公権力でやるからこそ、表現の自由は保障されなければいけない。逆に、分かりやすく言えば、この内容は良くてこの内容はいけないということを公権力がやるということは許されていないということではないでしょうか、ということ。むしろね、民間企業さんとか個人なら、社の方針としてこの範囲、うちはこうだよねと、こういうことでやるというのはあってもいいのかなというふうに思いますが、公権力ですね、国だけじゃなくて、県も市もですね、公権力が、この内容は良くて、この内容は駄目だよと言うのは、これはこの憲法21条からして、違うのではないでしょうか。 9月26日、文化庁は補助金審査の結果として、以下の理由により補助金を全額不交付とすることを決定した。 補助金申請者である愛知県は、展覧会の開催に当たり、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず、それらの事実を申告することなく採択の決定通知を受領した上、補助金交付申請書を提出し、その後の審査段階においても、文化庁から問合せを受けるまでそれらの事実を申告しませんでした。これにより、審査の視点において重要な点である、[1]実現可能な内容になっているか、[2]事業の継続が見込まれるか、の2点において、文化庁として適正な審査を行うことができませんでした。かかる行為は、補助事業の申請手続において、不適当な行為であったと評価しました。また、「文化資源活用推進事業」では、申請された事業は事業全体として審査するものであり、さらに、当該事業については、申請金額も同事業全体として不可分一体な申請がなされています。 これらを総合的に判断し、補助金適正化法第6条等により補助金は全額不交付とします。 この決定に対して、TBSの世論調査は適切とする意見が46%、不適切とする意見が31%であることが報じられた。 大村は記者会見で「合理的な理由があるのかということについて、国の『国地方係争処理委員会』で理由を聞くことになる」と述べた。また、午後の記者会見で「憲法21条が保証する表現の自由に対する重大な侵害だ。抽象的な事由で一方的に不交付が決定されるのは承服できない。合理的な理由がない」と発言。決定の取り消しを求め、国を訴える考えを明らかにした。その後も、森友学園問題や加計学園問題を引き合いに出して政府批判を続け、10月24日に愛知県は文化庁に対して補助金適正化法に基づき同庁に不服を申し出た。 芸術監督の津田大介も「事後的に交付決定を覆されたら、企画内容に強烈な自粛効果が生まれる。事後検閲的な効果が強いという点でも、手続き論的にも問題の多い決定」と批判し、実行委員の野田邦弘、キュレーターの鷲田めるろが抗議のため文化庁から嘱託された役職を相次いで辞任した。津田と展示再開派はインターネットの署名サイトChange.orgで文化庁の決定撤回を求める署名を開始し、あいちトリエンナーレのあり方検証委員会で座長を務めた山梨俊夫国立国際美術館長も「個人的にも、国立美術館長としても反対」と表明した。このほかにも、日本マスコミ文化情報労組会議と韓国の報道労組による抗議集会、東京大学教員167名によるあいちトリエンナーレへの補助金の不交付決定に対する抗議文が10月9日に文化庁に提出されるなどの動きがあった。 政界からも、日本共産党の小池晃書記局長が「憲法が禁止している明らかな検閲だ」「後から補助金交付を却下するやり方がまかり通るようになれば、主催者は政権の顔色をうかがってやらざるを得なくなる」と批判し、立憲民主党の枝野幸男代表も「萎縮効果を働かせるようなことを公的な機関が行うことは表現の自由に対する侵害だ」、「文化庁は廃止した方がいいんじゃないか」などの批判を行った。また、前新潟県知事の米山隆一も「法的根拠も合理性もなし。法の支配を歪め、行政運営の根本も揺るがす過った決定」と批判を行った。自民党の稲田朋美幹事長代行は「(従軍慰安婦を象徴する少女像などを展示した)あれを公金を使ってやるのはおかしいことだと思うし、判断を責められるべきではない」と反論した。元大阪府知事の橋下徹は「政治的な主張に行政が偏った関与をしてしまうと、プロパガンダに使われてしまうかもしれないし、非常に危険。行政がお金を出しながらやるんだったら、中立性を保たないといけないといけないし、それは表現の自由の問題とは別だ」と論じた。 2019年12月18日、あいちトリエンナーレのあり方検証委員会は最終報告で、『遠近を抱えて PartⅡ』について、芸術監督の津田大介が「大浦氏の新作映像の内容を知り、またその出品を5月27日に正式決定したにもかかわらず、作品リストに掲載せず、またその事実とそれがもたらす混乱の可能性やリスクを事務局やキュレーターチーム、会長に伝えないまま展覧会の開催日を迎えたこと」と認め、2020年3月19日、愛知県は「補助金の申請を行った令和元年5月30日よりも前の段階から、来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような事態への懸念が想定されたにもかかわらず、これを申告しなかったことは遺憾であり、今後は、これまで以上に、連絡を密にする」と意見書を文化庁に提出した後、2019年4月25日付けの交付申請書の申請額から展示会場の安全や事業の円滑な運営にかかる懸念に関連する経費等を減額することを申請した。文化庁も愛知県が遺憾の意を示した上で今後の改善を表明したこと、展示会場の安全や事業の円滑な運営にかかる懸念に関連する経費等の減額を内容とする変更申請がなされたこと等を踏まえて交付の可否を検討した結果、愛知県から変更申請のあった金額(6,661万9千円)について、補助金を満額で交付することを決定した(当初の金額は7,829万円)。
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