地球外生命
地球外生命は存在するか。 | ![]() |
知能の高低は問わず、知的生命でないものも含む[1]。また、大気圏外にあって生存してはいても地球由来の生物(宇宙飛行士や宇宙船内の実験用生物)はこれを含まない[1]。
英語(事実上の国際共通語)では、"extraterrestrial(日本語音写例:エクストゥラティレストゥリアル、日本語慣習読み:エクストラ テレストリアル)" [3]、"extraterrestrial being" [3]、"extraterrestrial biological entity" [3]、"extraterrestrial life" [3]等々、様々な名称が用いられるが、日本語の「生命」「生命体」「生物」のもつ語意のようなものがそれぞれに異なるのと同様、少しずつニュアンスが異なる。ET(イーティー)という略語も頻用されるが、これは extra-terrestrial の頭字語である[3]。EBE(イーバ)も略語で、こちらは extraterrestrial biological entity の頭字語[3]。また、それが知能の低くない異星人(ヒトと相似する、異星の知的生命)であれば、"alien life" ともいう。
概要

1970年代から天文学者が主に電波望遠鏡を用いて地球外の知的生命の活動の兆候を探索しているが、未だに地球外生命体の存在は確認されていない。
1787年ころ、イタリアの神父で博物学者のラザロ・スパランツァーニが、「そもそも地球の生命は地球外から来た」とする説を唱えていた。生命の起源が地球外にあるとする説は「パンスペルミア説」というが、こうした説(仮説)は、DNAの二重らせん構造を発見したフランシス・クリックも表明している[4][5]。
十九世紀の観測
アメリカの天文学者パーシヴァル・ローウェル(1855-1916年)は、火星を観測した結果、その表面に「運河」などの人工的な建造物に見える巨大構造があると信じ、火星に文明が存在する証拠だと著作で述べた。サイエンス・フィクションの分野では火星に棲むタコ状(イカ状)の生命体(たこ型火星人)がさかんに描かれたが、これはイギリスの作家H・G・ウェルズが1898年に発表したSF小説『宇宙戦争』によるイメージの定着が発端であるとされる。
1959年、イタリアの物理学者ジュゼッペ・コッコーニとアメリカの物理学者フィリップ・モリソンが、地球外生命に言及する論文を学術誌に初めて発表し(※誌は『ネイチャー』)、「地球外に文明社会が存在すれば、我々は既にその文明と通信するだけの技術的能力を持っている」と指摘した。また、「その通信は電波で行われるだろう」と推論した。この論文は自然科学者らに衝撃を与え、一般人も知的生命体がこの宇宙に存在する可能性について大真面目に語り、様々な憶測、様々な空想が語られるようになっていた。
ドレイクの方程式
1961年にアメリカの天文学者フランク・ドレイクがドレイクの方程式を示し、画期的なことに、可能性・確率について具体的に数値で論ずることを可能にした。我々の銀河系に存在する通信可能な地球外文明の数を仮に「N」と表すとするならば、そのNは次の式で表せる、と述べたのである。
ローウェルが描いた火星の“運河” 火星を観測した天文学者パーシヴァル・ローウェル(1855-1916年)は、スキアパレッリがイタリア語で "canali"(※『運河』の意もあるが、ここでは自然地形としての『溝』の意)と呼んだ地表面の直線的地形を英語で "canal"(運河)と解釈し[6]、「人面岩」など人工建造物に見える巨大な構造体があるのにも気付き、これらがスキアパレッリの言うような自然地形ではなく人工物に違いないとの認識の下[6]、文明の存在を示すものであろうとの説を、1894年にボストン科学ソサエティで行った講演で初めて唱え[6]、次いで、1895年の自著 "Mars "(和題:火星)[7]、1906年の自著 "Mars and Its Canals " [8]、1908年の自著 "Mars As the Abode of Life "(和題:火星 生命のすみか[6])[9]にも記した[6][注 1]。しかしながら、後世に行われたマリナー計画(1962-1973年)による探査と研究により[6]、パーシヴァルの見ていたものが自然地形であった事実が判明し[6]、火星人工物説を巡る論争は完全否定される形で決着した[6]。知的生命の火星での現生は確認できず、パーシヴァルが指摘した文明の痕跡も否定されたことから、太陽系内における地球人以外の知的生命の存在可能性は限りなく低いと見做されるようになった。
地球にも熱水噴出孔付近など、摂氏400度を超え、太陽光も届かない過酷な環境でも生物が生きているという事実から、エウロパなど宇宙の星々にも、微生物などの地球外生命が存在するのではと語るNASAの研究者もいる[10]。
太陽系内の原始的生命
アラン・ヒルズ84001から見つかった生命の痕跡とされる構造。 火星に知的な生命はいないにしても、原始的な生命に関しては、火星はかつて大気と液体の水を持っていたと考えられている(その証拠とされるものが見つかっている)ので、生命が発生していた可能性もある、と考えられている。
1970年代にNASAが送り込んだ火星探査機バイキング1号および2号は火星表土のサンプルを採取し、そこに生命活動の兆候が見られるか確認する試験を行ったが、結果は生命の存在を肯定するものではなかった。
1996年にギブソンらが行った報告では、火星由来の隕石に化石状の構造が認められ、生命の痕跡と考えられるとしている。ただしこの見解は統一見解には至らず、論争の的になっている(詳細はアラン・ヒルズ84001を参照)。
2003年にESAが火星に送り込んだビーグル2号はバイキング以来はじめての生命探査を目的とした着陸機だったが、大気圏突入後に交信が途絶えて失敗に終わった。
火星以外では、木星の衛星であるエウロパやガニメデ、土星の衛星であるエンケラドゥスなどが、原始的な生命がいる候補として注目されている。これらの天体は主に氷や岩石から出来ているが、地下には液体の水の層が存在しているのではないかと考えられている。水中にはバクテリアがいるかもしれない。また、土星の衛星タイタンも、厚い大気圏を持ち、表面に液体の炭化水素が存在していることなどから、生命の存在する天体の候補に挙げられている。
太陽系外
原始的生命に関しては太陽系内での探索が続けられているが、知的生命に関しては太陽系内は望み薄と判断されるようになり、太陽系外での探索が続けられている。
ケプラー442b(想像図)と地球の比較 NASAなどによって地球外知的生命体がいるのかどうかの探査(地球外知的生命体探査、頭字語:SETI)が行われている。現在行われている探査・研究活動はいくつかの手法がある。ひとつは、宇宙空間を通じてやってくる電波のパターンを受信し解析することで地球外の知的存在の活動を発見しようという試みである。特に近い星を絞り込んで行う手法もある。他の手法としては、地球から近い恒星の中から、生命の生まれる可能性がありそうな惑星を持つものを見つけ、その惑星に対して電波をこちらから送信してやり、反応があるかどうか調べる、という方法である。地球に最も近い恒星・惑星群の中には、地球から(わずか)数光年~数十光年程度の距離にあるものもあるので、実験として現実的な年数の間に生命からの反応・返信が得られるかも知れないという期待とともに探査が行われている。受信方式の探査を「パッシブ」、送信方式の探査を「アクティブ」と呼んでいる。
詳細は「地球外知的生命体探査」を参照
脚注
注釈
出典
- ^ a b c 小学館『デジタル大辞泉』. “地球外生命”. コトバンク. 2020年4月1日閲覧。
- ^ 横尾広光 (cf. researchmap)、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “地球外生命”. コトバンク. 2020年4月1日閲覧。
- ^ a b c d e f “Extra-Terrestrial”. 英辞郎 on the WEB. アルク. 2020年4月1日閲覧。
- ^ Crick 1981.
- ^ クリック 2005.
- ^ a b c d e f g h i j ナショナルジオグラフィック 2016年11月23日 p. 2
- ^ Lowell 1895.
- ^ Lowell 1906.
- ^ Lowell 1909.
- ^ “深海エビ、地球外生命体の鍵を握る? NASA研究”. 日本版CNN (CNN). (2014年11月24日) 2014年12月12日閲覧。
文献一覧
参考文献
- 倉谷滋(cf. KAKEN[https://nrid.nii.ac.jp/ja/nrid/1000000178089/]、日本の研究.com[https://research-er.jp/researchers/view/165890])『地球外生物学 SF映画に「進化」を読む』工作舎、2019年11月15日。OCLC 1132274261。ISBN 4-87502-515-7、ISBN 978-4-87502-515-3。
- フランシス・クリック 著、中村桂子 訳『生命 この宇宙なるもの』(再装版)新思索社、2005年7月(原著1981年)。OCLC 676509361。ISBN 4-7835-0233-1、ISBN 978-4-7835-0233-3。
- 原著:Crick, Francis (1981) (英語). Life itself : its origin and nature. New York City: Simon & Schuster. OCLC 1145196451 ISBN 0-671-25562-2, ISBN 978-0-671-25562-6.
- マイケル・J・クロウ 著、鼓澄治・吉田修・山本啓二 訳『地球外生命論争1750‐1900 ―カントからロウエルまでの世界の複数性をめぐる思想大全』工作舎、2001年3月1日(原著1988年2月26日)。OCLC 835080841。ISBN 4-87502-347-2、ISBN 978-4-87502-347-0。※3分冊・続きページ形式。
- 原著:Crowe, Michael J. (26 February 1988) (英語). The Extraterrestial Life Debate 1750-1900. The Idea of a Plurality of Worlds from Kant to Lowell. New York City: Cambridge University Press
- 桜井邦朋『地球外知性体―宇宙物理学、探査40年の到達点』クレスト、1997年5月。OCLC 675095356。ISBN 4-87712-053-X、ISBN 978-4-87712-053-5。
- 矢沢サイエンスオフィス編編「最新地球外生命論 : 銀河系に「知的生命」を探す」『最新科学論シリーズ』第21巻、学習研究社(現・学研ホールディングス)、1993年3月1日。
- Lowell, Percival (November 1895) (英語). Mars (1st ed.). Boston, Massachusetts: Houghton Mifflin Harcourt
- Wikisource:en:Mars (Lowell)
- 復刻版の一例:Lowell, Percival (23 May 2010) (英語). Mars. Whitefish, Montana: Kessinger Publishing ISBN 1161441565, ISBN 978-1161441567.
- Lowell, Percival (1906) (英語). Mars and Its Canals (1st ed.). New York City: Macmillian Company. ASIN B0006AESDY
- 復刻版の一例:Lowell, Percival (24 August 2010) (英語). Mars and Its Canals. Charleston, South Carolina: Nabu Press ISBN 1177666103, ISBN 978-1177666107.
- Lowell, Percival (1909) (英語). Mars As The Abode Of Life (1st ed.). New York City: Macmillian Company
- 復刻版の一例:Lowell, Percival (12 September 2013) (英語). Mars As The Abode Of Life (1st ed.). TheClassics.Us ISBN 123086170X, ISBN 978-1230861708.
関連文献
- P・ウルムシュナイダー 著、須藤靖・田中深一郎・荒深遊・杉村美佳・東悠平 訳『宇宙生物学入門』丸善出版〈World Physics Selection〉、2012年8月1日(原著2006年6月15日)。OCLC 802326937。ISBN 4-621-06178-X、ISBN 978-4-621-06178-7。
- 原著:Ulmschneider, Peter (15 June 2006) (英語). Intelligent Life in the Universe: Principles and Requirements Behind Its Emergence. Advances in Astrobiology and Biogeophysics (ver.2006 ed.). Berlin, New York City: Springer. OCLC 873667585 ISBN 354032836X, ISBN 978-3540328360.
- マーク・カウフマン 著、奥田祐士 訳『地球外生命を求めて』ディスカヴァー・トゥエンティワン〈Dis+Cover Science 9〉、2011年9月15日。OCLC 755701903。ISBN 4-7993-1045-3、ISBN 978-4-7993-1045-8。
- 佐藤勝彦『ますます眠れなくなる宇宙のはなし─「地球外生命」は存在するのか』宝島社、2011年12月14日。OCLC 768731556。ISBN 4-7966-7795-X、ISBN 978-4-7966-7795-0。
- 観山正見『太陽系外惑星に生命を探せ』光文社新書〈光文社新書 029〉、2002年2月15日。OCLC 674835431。ISBN 4-334-03129-3、ISBN 978-4-334-03129-9。
関連項目
内部リンク
- 生物学上の未解決問題
- 日本宇宙生物科学会
- 極限環境生物学会
- 緩歩動物 - 宇宙空間で生存が可能な唯一の動物。
- 宇宙人
外部リンク
- Mason, Betsy (2016年11月23日). “火星地図200年の歴史、こんなに進化した15点 観測・探査の進歩とともに、未知の地形があからさまに”. 日経ナショナルジオグラフィック社. pp. 1-4. 2020年4月2日閲覧。
宇宙植物
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 07:25 UTC 版)
「To LOVEる -とらぶる-」の記事における「宇宙植物」の解説
セリーヌ 詳細は「To LOVEる -とらぶる-の登場人物#セリーヌ」を参照 ホレ草 ホレ星の薬草。催淫効果を持ち、摂取した者は一定時間、興奮状態になってしまう。バレンタインの前日、御門がララにチョコの作り方を聞かれた際、リトにあげると誤解したために、ほんの悪戯心からチョコにホレ草を入れるように教えた。 シバリ杉 オキワナ星に棲む、意思を持った植物。根の部分を触手のように自由自在に操り、人間を縛り上げたり、つるし上げたりすることができる。モモがオキワナ星に訪れて以来の友達。 (ウリ星の)食用スイカ 声 - 宮原弘和 味にプライドを持っている巨大スイカ。本来は食用なので本来はおとなしいが、プライドをキズつけられると怒り、人を襲うようになる。 デビルークハーブ デビルーク星のハーブ。飲料の材料として用いられるが、地球人が摂取するとしばらくの間、酩酊状態になる。 パワダの花 惑星ミストアに生息する、毒性を持つ花。近づく者に花粉を吹きかけ、触手のような蔓で襲いかかる。花粉の成分には、吸い込むと一時的に体力を消耗させる効果がある。 ラックベリー タコのような根で地上を走る果樹。その実は「カレカレ病」をはじめ、さまざまな病に効果をもたらす万能薬である。 アドレナの花 匂いを嗅いだ者は、アドレナリン全開の興奮状態になる。 ケンジャの花 沈静効能を持つ花。一仕事終えた感じの虚脱感に向かう。 アメフラワー まるでゲリラ豪雨のように、大量の水を撒き散らす大輪の花。 惑星ゼラスの黒バラ トゲに強力な毒を持つ黒いバラ。毒の効果は絶大で、例えかすり傷程度でも、触れた者は全身が麻痺して動けなくなってしまう。 キャノンフラワー ジュダ星の鳳仙花の一種。拳大の種子を砲弾のように発射する危険指定種。 ダヅールの種 ピンチのとき地面にたたきつけると衝撃で急速に発芽して、相手の身体に絡みついて動きを止める。 虹色のバラ 花びらが七色に変化する、観賞用の綺麗なバラ。 ジキドの花 香りを嗅いだ人の性格を別人のように変えてしまう危険な花。 ミルケアの花 分泌する蜜には美肌だけでなく、肌に深く浸透し、疲れを癒す成分が含まれている。 チュッチュ草 クチビルにも似た花びらで近付いた生き物に吸い付き、分泌される体液を養分にする宇宙7大猥褻植物の1つ。 フィリングスの花 ピンク色の花びらの綺麗な花。花を咲かせるまでに枯れてしまうことが多いため、希少種とされている。セフィが希少植物センターで買ってきて、モモにプレゼントした。花言葉は「犠牲と思いやり、そして笑顔」。 ホレダンの花 この花から出る花粉は、女性が吸い込むと、目にした男性に猛烈に惚れ込んでしまう効果がある。 しかし、既にその目にした男性に恋心を抱いている女性が吸い込んでも効果はない。 ニャンニャン草 花の部分が猫の形をしており、触ると睡眠ガスを出す。
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