四季-12の性格的描写とは? わかりやすく解説

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チャイコフスキー:「四季」-12の性格的描写

英語表記/番号出版情報
チャイコフスキー:「四季」-12性格的描写Les saisons - 12 Morceaux caracteristiques Op.37bis作曲年: 1875(1,2)1876(3-12)年  出版年1876年 

作品概要

楽章・曲名 演奏時間 譜例
1 1月 「炉端で」 No.1 "Au coin du feu"3分30秒 No Image
2 2月 「謝肉祭」 No.2 "Carnaval"2分00 No Image
3 3月 「ひばりの歌」 No.3 "Chant de l'alouette"2分00 No Image
4 4月 「松雪草」 No.4 "Perce-neige"2分00 No Image
5 5月 「白夜」 No.5 "Les nuits de mai"4分00 No Image
6 6月 「舟歌」  No.6 "Barcarolle"4分00 No Image
7 7月 「刈り入れの歌」  No.7 "Chant de faucheur"1分30秒 No Image
8 8月 「とり入れ」  No.8 "La moisson"3分00 No Image
9 9月 「狩の歌」  No.9 "La chasse"2分30秒 No Image
10 10月 「秋の歌」 No.10 "Chand d'automne"3分30秒 No Image
11 11月 「トロイカ」  No.11 "Troika en traineaux"2分30秒 No Image
12 12月 「クリスマス」 No.12 "Noel"3分00 No Image

作品解説

執筆者: PTNA編集部

 チャイコフスキー(1840-1893)の「四季」Op.37bis〔1876年〕は、ペテルブルク月刊誌『ヌウェリスト(小説家)』上で連載”された作品で、12ヶ月対応した12の小品から成ります季節の然のみならず、民衆の生活をも生き生き描写したユニークな作品で、その音楽には、祖国ロシア自然と人々を見つめるチャイコフスキーのあたたかな眼差しがつねに息づいています。
 音楽は、心あたたまる家の中情景(「1月 炉ばたで」)で始まり、祭のにぎわい(「2月 ロシア謝肉祭」)とともに、春が訪れ自然が目覚めると、自然の情景とそれに付随した人々の心の動き描写されます(「3月 ひばり雲雀の歌」「4月 待雪草」「5月 白夜」「6月 舟歌」)。続いて自然と結びついた民衆の生活が描写されます(「7月 刈入れ人の歌」「8月 収穫」「9月 狩り」)が、秋を迎え然は枯れていきます(「10月 秋の歌」)。再び冬が訪れ(「11月 トロイカ乗って」)人々明る気分1年終えます(「12月 クリスマス週間」)。各々小品表題編集者与えたものですが、チャイコフスキーは、これらの情景を、過ぎゆく季節いとおしむように優しい音遣いでえがき出してます。ほとんどの曲が前の曲の近親調始められており、余韻から翌月音楽浮かび上がるような効果が、1年通じた大きな流れ感得させる所以となってます。
 ところで、「四季」は、特定の楽器思わせる書法散見されるなど、きわめて管弦楽的な発想作曲されているので、そのオーケストレーション意識して味わうと、鑑賞の愉しみも倍増するのではないでしょうか実際20世紀ソ連指揮者作曲家アレクサンドル・ガウク(1893-63)が管弦楽編曲しており、スヴェトラーノフらによる録音聴くことができますが、チャイコフスキー自身による管弦楽版残されていればどんなに素敵だったことか、と夢想してしまいます

1月 炉ばたで」(イ長調)は弦楽四重奏思わせる心あたたまる音楽で、炉ばたで暖をとりながらあれこれ思い巡らせているようです
2月 ロシア謝肉祭」(ニ長調)では打楽器加えた大編成のトゥッティで、人々お祭り騒ぎ描かれます。息の長いcresc.が、遠くから近づいてくる行列生き生き描いてます。
3月 雲雀の歌」(ト短調)は、澄み切った虚空静かに響くひばりのさえずり。弦のしっとりとしたハーモニー乗せて歌われるクラリネット・ファゴット・フルートの掛け合い美しいかぎりです。
4月 待雪草」(変ロ長調)は、スノードロップの和名で、春を告げる花と言われています。その花言葉希望」の通り春になり自然が目覚めた喜びが、管楽器軽やかなリズム乗せて希望をこめて歌われます。
5月 白夜」(ト長調)は、ハープ純白響き包まれ優しく澄み切った音楽で、夏の白夜現在の暦では6月)の解放感や、その美しさへの感動えがかれています。
6月 舟歌」(ト短調)は、チャイコフスキーピアノ曲のなかで最も親しまれているもので、穏やかに揺れ伴奏音型が波のメタファーとなり、揺れ小舟から見上げた夏の星空へ陶酔ロマンティック歌われる名曲です。
7月 刈入れ人の歌」(変ホ長調)は、を刈る人々の鎌をふるうリズムにのせて、民謡風ののどかな歌が歌われます。
8月 収穫」(ロ短調)は、弦のピツィカートのみで奏される第4交響曲スケルツォ彷彿とさせるような音楽で、農作物取り入れで慌しい人々のようすが描写されています。穏やかな中間部束の間休息
9月 狩り」(ト長調)では、トランペットや、“狩り楽器ホルン角笛)が高らかに鳴り響き、秋の狩猟光景力強く描かれます。連符リズム狩りメタファーです。
10月 秋の歌」(ニ短調)は、オーボエチェロによって、秋の愁いが愛情込めて歌われます。中間部デュエット幸せな日々回想しているかのようです
11月 トロイカ乗って」(ホ長調)は、一面の銀世界となった広大なロシア雪原を、鈴の音とともにトロイカ(馬3頭立てのそり)がさっそうと駆け抜けます。中間部sfは、鞭のメタファーでしょうかラフマニノフ愛奏曲でもあった名曲です。
12月 クリスマス週間」(変イ長調)は、クリスマスから1月6日主顕節までの洗礼祭期を指し静かな祝祭ムードが、新年への期待とともに描かれ、あたたかい余韻残して1年締めくくります。


 なお、「四季」の各々小品には詩が引用されており、聴き手想像力ふくらませる一助となってます。


炉ばたで―1月
 穏やかな 安らぎのひとすみ一隅
うっすらくる包む 夜の闇。
暖炉のなかの かすかなほのお焔
燃えかすつきの 消えたろうそく。  ―プーシキン

ロシア謝肉祭2月
もうすぐ 湧きあがるよ
にぎやかな 謝肉祭
盛大な お祭り騒ぎが。  ―ヴャゼムスキィ



ひばり雲雀の歌―3月
野原は花のさざなみ漣に揺れ
 空には光の波が流れ
 春の雲雀たちの歌声
 果てなき青さ満ちる   ―マイコフ

まつ待ゆきそう4月
 水色の 清らかな
待雪草の花
 傍らに 透きとおる
消えかけの
 過ぎ去り悲しみによせて
 最後の涙流し
 初め夢見るのだ
 また別の幸せを。       ―マイコフ

白夜5月
なんて安らぎ満ちた夜だろう!
ありがとう、北のふるさと故郷よ
氷におおわれ王国から
降りしきる王国から
5月よ、
君はなんてすがすが清清しく
鮮やかに飛びたつのだろう!    ―フェート

舟歌6月
 岸辺出よう
 僕らの足に波はくちづけ
秘めやか愁いの星が 
僕らの上に光るだろう。  ―プレシシェーエフ

刈入れ人の歌―7月
肩よ うなれ、
手を振り上げろ!
南風、顔に吹きつけろ!  ―コリツォフ


収穫8月
人々は 家族みんなで
収穫かかった
根元まで刈り取るんだ、
背高ライ麦を!
麦束は 山のように
ぎっしりと積まれた。
荷馬車から一晩じゅう、 
音楽鳴り響く。     ―コリツォフ

狩り9月
さぁ時間だ!と鳴るホルン角笛
狩装束猟犬番らは
夜明けが先か 馬にまたがり
一群 飛び跳ねる     ―プーシキン

秋の歌10月
秋よ、われらが粗末な庭は一面
落葉おおわれる
黄色木の葉風に舞い……  ―トルストイ

トロイカ乗って11月
憂いをもって道を見る
 トロイカのあとを急いで追うな
 胸の内憂うおそ懼れ
 すぐさま とわ永久にかき消せよ    ―ネクラーソフ

クリスマス週間12月
 洗礼祭期のある晩に
 娘たち占った
 履いている靴をすっぽり
門の向こう放り上げて。  ―ジュコフスキィ

訳  岡崎卓巳
文  内藤 晃
2008/11




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