各地の実例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/11 22:00 UTC 版)
北海道地方 広大な面積と希薄な人口密度により、元々モータリゼーションとの親和性が高い土地柄であったが、1970年代以降は産炭地の衰退とそれに伴う北海道自体の人口減少と相まって鉄道路線の廃止や減便が進み、北海道の国鉄の大半が赤字路線となり次々と廃線に追いやられた。1987年にJR北海道に転換後も、函館本線の上砂川支線が1994年に、深名線が1995年に、旧池北線の経営を引き継いだ第三セクターのちほく高原鉄道が2006年に廃線となった。2011年にJR北海道の経営危機が顕在化してからは廃線の動きが加速し、2014年に江差線の木古内駅~江差駅間、2016年に留萌線のうち留萌駅~増毛駅間が、2019年に石勝線の新夕張駅~夕張駅間が、2020年に札沼線の北海道医療大学駅~新十津川駅間がそれぞれ廃止された。また台風により2016年以降運休になっている日高本線の「鵡川-様似」間が2021年4月に正式に廃止・バス転換が決定した。将来的には留萌線全線の廃線も検討されている。その一方で高規格幹線道路の整備は着実に進み、廃止が検討されている留萌線の深川駅-留萌駅間に並行して深川留萌自動車道が1998年から、石北本線に並行する旭川紋別自動車道が2002年から順次開通していき、鉄道から自動車へのシフトが更に進んだ。 他地域同様、郊外型ロードサイド店舗が増える一方、中小都市中心部の商店街が衰退しシャッター通り化している。町村部においてもその自治体で唯一のスーパーマーケットが閉店し、生鮮食料品の購入できる店が地区内に全くなくなるかコンビニエンスストア(セイコーマート)のみとなるなど、俗に言う「買い物難民」の高齢者世帯の増加が深刻化している。「出前商店街」などの移動販売、宅配、買い物代行、「デマンドバス」によるアクセス支援、市民協働による店舗誘致活動など、行政その他で各種取り組みが行われている。 両毛デルタ地帯 関東北部における「両毛デルタ地帯」と呼ばれる地域は、日本でも早期からモータリゼーションが発達した経済圏を形成している。 この地域は関越道本庄児玉IC-高崎JCT区間・東北道佐野藤岡IC-加須IC区間・北関東道高崎JCT-太田桐生IC区間・国道17号・国道125号・国道50号といった道路群によってほぼデルタ形になるように囲まれており、その商圏は、群馬県南東部(うち太田、伊勢崎、館林と前橋・桐生南部の一部、高崎東部の一部)を中心に、栃木県安足地区(うち佐野・足利南部の一部)、埼玉県北部(うち羽生・行田・加須の旧北埼玉郡域と概ね児玉郡・大里郡およびこの2郡に属していた地域の深谷・本庄・熊谷の一部)に及んでいる。 館林市は1987年1月から市内の路線バスが全て廃止になり全国でも唯一の「バスなし市」になったのを始め(現在では広域公共路線バス が運行)、各地で廃止代替バスへの転換が相次いだ。 現在も群馬県民の交通手段は過度に自家用車に依存しており、例えば僅か100m先の場所に行くのも車を利用するのが26%、車を持っていない高齢者は他の人の車に同乗するのが主流、また高校生の通学には親に送迎してもらうのが約60%、という自家用車至上主義の為、群馬県の公共交通依存度はかなり低く3.5%でしかない。これは、同県が愛知県や広島県と並んで自動車関連の製造が基幹産業となっていることも影響している。 東海地方 静岡県遠州で盛んであった織機業を原点に、日本最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車が本社および工場(愛知県三河)、スズキが本社および工場(静岡県遠州)、ヤマハ発動機が本社および工場(静岡県遠州)を構えるほか、本田技研(浜松市や三重県鈴鹿市)や三菱自工(愛知県岡崎市)が工場を立地するなど、下請けなどの関連企業が多数所在し、自動車産業が経済基盤となっている東海地方では、日本で最も早くから都市型モータリゼーションが発達し、最も早くから郊外型ライフスタイルが浸透していった地域である。このような都市型モータリゼーションは東海地方に限らず瀬戸内地方でも観られる。こちらも自動車関連が基幹産業(東洋工業が広島県内および山口県内に、三菱自工が岡山県倉敷市にもそれぞれ工場を立地している)になっている背景がある。 そのため、かつては多数の鉄道路線が存在したが、現在では多くの路線が廃線となり、名古屋圏など需要が見込める地域のみに路線が集中している状況である。しかし、前述の背景から、東海地方を代表する大手私鉄の名古屋鉄道ですらその輸送密度は、名古屋圏よりも人口の少ない福岡都市圏の西日本鉄道に対して劣っている。静岡・浜松大都市圏を基盤に展開する静岡鉄道、遠州鉄道においては準大手私鉄を抑え大手私鉄に次ぐ売上高を計上しながら主たる売上割合を占めるものは運輸業ではなく、静岡鉄道が自動車販売事業、遠州鉄道は商品販売事業によるものである。過疎地域だけではなく大都市内やその近郊でも鉄道の廃線や存続問題はたびたび話題になり、2005年には名鉄岐阜市内線が、2006年に桃花台新交通桃花台線が、それぞれ廃線になった。こうした現状に対し、名古屋市は基幹バスの導入などを行い、公共交通の利用促進を図っている。 四国地方 四国は高速道路の整備が遅れ、1980年代末になっても香川県・高知県のごく一部の区間しか開通していなかったが1990年代に入ると高速道路の整備が急速に進み2000年3月には井川池田IC - 川之江東JCTが開通したことで四国の高速道路ネットワークは完成の域に達した(四国8の字ネットワーク)。さらに1998年に明石海峡大橋が開通したことで岡山県を通らずに京阪神地区に直接道路で行けることになり、鉄道・航路のマイカー・高速バスシフトに拍車をかけた。高速道路網整備と反比例するようにJR四国の輸送人員は減少を続け2018年度は1988年度に比べて3割も減少した。 沖縄県 沖縄県は戦前には沖縄県営鉄道などの軌道系交通機関があったが、沖縄戦により破壊され戦後も復活することはなく、2003年8月の沖縄都市モノレール開業まで軌道系交通機関がなかった。その為沖縄の交通は道路に一元化され、1970年代まではバス交通が発達したが、1978年の右側通行→左側通行への通路帯変更(所謂730)からは自家用車が急激に増加し、それと反比例してバス利用客が減り沖縄の主要交通の大半を自家用車またはレンタカーに依存する形となった為、現在那覇市の渋滞は全国でもワースト1にまでなっている。また沖縄県には主要バス事業者が4社あったが、2000年代に沖縄バスを除いて倒産する事態にもなった。沖縄県では渋滞を解消する為、モノレールを軸とした公共交通機関の再編、パークアンドライドの推進等を進めている。
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