取り立てと更新料問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 23:39 UTC 版)
「フォーシーズ (家賃債務保証会社)」の記事における「取り立てと更新料問題」の解説
家賃滞納者への請求行為を2007年8月31日午後9時から翌午前3時まで長時間に渡り行った行為に対して、2009年12月に福岡地裁から慰謝料の支払いを命じられた。しんぶん赤旗は、フォーシーズについて「滞納家賃の取り立てが強引すぎるとの批判がある」と報じている。 保証会社では、家賃延滞を繰り返す悪質な入居者には、契約解除を行うのが当然の行為なのだが、フォーシーズでは、この契約解除時点において、入居継続の意思がある家賃滞納者には、再契約の為の更新保証委託料1万円を支払う事により、入居継続を認めていた時期が数ヶ月間ある。しかし、家賃延滞回数が多い入居者と、繰り返しこのやり取りを行った結果、費用を払い過ぎる入居者が低額賃料物件を中心に多く見受けられるようになった為にこの仕組みは短期間の運用で廃止となり、返金もした。現在の保証委託料は初回契約時も更新時にも基本額が賃料の1か月分となり、どちらにおいても割引制度を導入してサービス向上を図るようになる。前述の更新料問題解決の為に、更新の際は、1年間に家賃の延滞回数が0回または1回の場合は1万円に割引き、2回の場合は3万円に割引き、3回以上の場合は割引き無し、という形態を取っている。 この延滞回数のカウントは、一年毎にリセットされるもので、割引が無かった年の翌年には1万円に割引となる事も可能となっている。1年間の延滞回数が1回までであれば賃料金額に関係なく1万円で更新出来る為、家賃が高額であればあるほど安価に更新手続きが出来るという特徴があり、高級賃貸や事務所等の高額な賃貸物件の契約を行っている入居者にはとても好評となっているが、賃料が低い物件においてはこの限りではない。 2016年10月、適格消費者団体の特定非営利活動法人消費者支援機構関西(KC’s)から、家賃を滞納している借り主に対して、事前通告なく賃貸契約を解除したり、法的手続きを経ずに、部屋の荷物を処分したりできる条項を契約内容に盛り込んでいることが、不当な取り立てや「追い出し」につながる消費者契約法違反として、契約条項の一部について、使用停止を求める差止請求訴訟を提起された。フォーシーズに関する被害相談は、全国で100件を超えている、と関西テレビは報じている。これに対し、フォーシーズ側では特定非営利活動法人消費者支援機構関西(KC’s)の記者会見及び各種報道は以下の点で看過しがたい誤りがあるとホームページ上に抗議書を公開した。 KC’sからの申し入れに対して常に誠実な対応をしており、KC’sからの回答を無視したという事実がない。 保証契約条項には、賃借人が任意に退去していない(退去する意思がない)場合にもかかわらず、賃貸人やフォーシーズにおいて賃借人所有物の搬出、保管、処分ができるとする条項はない。 KC’sの記者会見を受けた報道において、フォーシーズに関する国民生活センターに対して寄せられる被害件数が、全国で100件を超えていると発表しているが、国民生活センターによる集計システム上、特定の会社についての集計は不可能である為、この情報は恣意的であり、事実とは異なるものである。よって家賃債務保証会社のフォーシーズ株式会社とは無関係である。 フォーシーズは2015年5月に大阪地方裁判所で賃貸人と共に賃借人に対して明け渡し訴訟を起こしており、その中で、保証契約条項が消費者契約法違反であるという賃借人側の主張を排斥し、フォーシーズによる賃貸借契約の解除権は有効と認める判決が出ている。2016年1月には大阪高等裁判所にて賃借人からの控訴を退ける判決が出されており、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会で家賃債務保証事業者協議会の顧問を務める弁護士によると「同じ争点でも、裁判官によって判決が変わる可能性はあるが、よほどの理由がない限り判例を尊重するのが通例」と話す。 2019年6月21日 大阪地裁一審判決 ・KCSが問題とした家賃債務保証契約の条項のうち、18条2項2号を除く条項は妥当としてKCS敗訴。 ・18条2項2号に関わる滞納時の残置物処分に関してはKCSの主張を認める。 2019年7月2日KCS控訴。同月3日4CS控訴。 2021年3月5日 大阪高裁、控訴審判決。 ・18条2項2号を除いた条項について地裁の判断を維持し、KCSの控訴を棄却。 ・18条2項2号については、地裁の判決を覆し、消費者契約法に反しないとしてKCSの主張を退け、結論としてフォーシーズが全面勝訴。 弁護士法人ALG&Associates家永 勲 執行役員・弁護士は、全国賃貸住宅新聞 発行日:2021年5月17日連載「弁護士が解決!!身近な不動産トラブル」第77回『賃貸契約における、裁判などを経ない部屋の明け渡しの可否について』において、以下のように語る。 「判断がなされた理由はの概要は、1.本件規定が、賃借人が賃借物件について占有する意思を最終的かつ確定的に放棄した(ことにより賃借物件についての占有権が消滅した)ものと認められるための要件をその充足の有無を容易かつ的確に判断することが出来るような文言で可能な限り網羅的に規定しようとしたものであると考えられること、2.本件規定が、賃借人の占有意思が放棄されていない場合にまで、自力救済として、保証会社に対し、賃借人の占有を解く権限を付与する趣旨を含むものと解するのは困難であること、3.本件規定における①から④の要件が充足される場合には、賃借人としても賃貸借契約の終了を希望または予期してるものと考えられるところ、そのような場合にも賃貸借契約が終了しないとすると、賃借人が賃料の支払い義務および賃借物件に残置された動産類の処理義務をいつまでも負担しなければならず、そのことを考慮すると、本件規定は賃借人にとっても利益となると考えられること、4.賃借人としては、明示的に異論さえ述べられれば本件規定の適用を免れることができること、といったものです。理由1を考慮すると、本件規定が消費者契約法第10条に反しない判断されたのは、本件規定が定める①~④の規定が厳格なものであることが前提となっています。①~④の要件をより緩やかなものとした場合には、異なる判断がなされる可能性があることに注意が必要です。また、本件規定のような規定を定めても、当該規定に基づいて実施された明け渡しが必ずしも適法なものであると判断されるとは限らないことにも注意が必要です。規定自体が消費者契約法に反するものかどうかと、その運用方法が不法行為に該当するかどうかは全く別の問題であるからです。従って、保証契約において本件規定のような規定を定めたとしても、具体的事案においては、部屋の中にある物を搬出・保管する際には、不法行為に該当するような態様となっていないかを個別に判断しなければなりません。判断に迷う場合には、専門家である弁護士に相談したほうが安全でしょう。」
※この「取り立てと更新料問題」の解説は、「フォーシーズ (家賃債務保証会社)」の解説の一部です。
「取り立てと更新料問題」を含む「フォーシーズ (家賃債務保証会社)」の記事については、「フォーシーズ (家賃債務保証会社)」の概要を参照ください。
- 取り立てと更新料問題のページへのリンク