三流劇画ムーブメントとは? わかりやすく解説

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三流劇画ムーブメント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 13:47 UTC 版)

エロ劇画誌」の記事における「三流劇画ムーブメント」の解説

ニューウェーブ (漫画)」も参照 三流劇画ムーブメントとは、漫画批評集団迷宮'77発行批評同人誌漫画新批評大系7号第2期1号)に「三流劇画ミニマップ」を寄稿した三流劇画共斗会ギ(川本耕次米沢嘉博青葉伊賀丸)によって打ち上げられエロマンガ界のニューウェーブである。これは言わば学生運動のような革命思想三流劇画世界持ち込んだのだった米沢嘉博ブーム意図経緯について次のように回想している。 三流劇画ブームと言われ時代から、既に15年過ぎた今だから言えるのだが、あれは、半ば作られブームだった。僕や川本耕次あたりが中心となって批評同人誌漫画新批評体系』〔ママ〕をに、いろんなメディア波及させ、業界一部の人達がそれにノリ、『プレイガイドジャーナル』『別冊新評』が参画することで何とか形になっていったというのが、実際の流れだったような気がする意図はと問われれば、面白がりたかったからと言うしかない。つまり、マンガエロ描きうるのだし、マンガファンにも一般に相手にされていなかった世界にも、才能変革意志を持つ作家編集者がいることを知らせたかったからだ。 — 米沢嘉博三流劇画15年目の総括青林堂月刊漫画ガロ1993年9月号「特集三流エロ雑誌黄金時代個人的なことにもなるが、迷宮として漫画批評誌『漫画新批評大系』を出していた七七年の時点において少女漫画エロ劇画は、新たな可能性を持つ漫画ジャンルとして取り組み始めることにもなっていった七七十二月出た漫画新批評大系』(第2期/VOL.1/迷宮77)において、ぼくは「戦後少女マンガ流れ」の連載を開始し、同時に川本耕次と共に三流劇画ミニマップ」を“三流劇画共闘会議”名で掲載した。(中略)たぶん、ここから三流劇画ブームスタートしていったはずなのである。(中略迷宮の中で三流劇画エロ劇画積極的に関わっていたのは川本耕次青葉伊賀丸、そしてぼくだ。川本この年六月頃には『別冊官能劇画』の編集者となり、業界つながり出来迷宮と深い関わりのあった村上知彦編集携わるプレイガイドジャーナル』に企画立ち上げるなどの動き重なっていく。 — 米沢嘉博戦後エロマンガ史青林工藝舎 2010年 221-223頁 その後、この流れ当時三大エロ劇画誌と言われた『漫画大快楽』『劇画アリス』『漫画エロジェニカ』の編集者亀和田武小谷哲菅野邦明高取英)を巻き込み劇画全共闘」として形作られていく。 彼らによると、当時漫画雑誌界にははっきりとした階層があり、一流から三流までが区別される一流は『ビッグコミック』を筆頭とする有名誌であり、それに続く一般漫画誌が二流で、三流エロ劇画誌である。ところがここでの一流内容においてあまりにも保守的一切変革求めない。そして二流三流デビューし実力をつけた作家つまみ食いにしている、と言いこのような状況打破するためには三流をもって一流にしなければならない、といった主張なされた。また『エロジェニカ』では『ガロ』の作家である川崎ゆきお起用岸田理生SF紹介平井玄ロック論、流山児祥プロレス論高取英少女漫画論などの評論コラム掲載するなど、上記三誌ではエロ劇画誌固定観念からは離れた自由な誌面作られていた。1978年には『11PM』『プレイガイドジャーナル』が三流劇画特集組み1979年には『別冊新評』で「三流劇画世界」が出版された。 彼らのエロ劇画誌本分逸脱した編集方針により、吾妻ひでおいしかわじゅん諸星大二郎など彼らに共鳴するメジャー作家や、芸術性が高いばかりに一般誌には受け入れられないニューウェーブ呼ばれた若手作家たち(ひさうちみちお蛭子能収宮西計三安部慎一鈴木翁二平口広美田口智朗奥平イラまついなつき高野文子近藤ようこ柴門ふみ坂口尚いがらしみきお吉田光彦さべあのま山田双葉=山田詠美峰岸ひろみなど)に実験的な作品発表の場が提供され、これらによる名作生まれた1979年頃までは「エロ劇画ルネッサンス」とも呼ばれるこうした潮流橋本治梶井純米沢嘉博村上知彦小野耕世飯田耕一郎理論派の論客や『奇想天外』や『宝島』などのサブカルチャー雑誌巻き込んで展開されたが、彼らの目指したところは全共闘パロディとしての編集者たちのふるまい上のセールスポイント持たないこともあって、いわゆる一般読者支持得られず、1978年に『エロジェニカ』11月号が警視庁摘発を受け発禁1979年『アリス』の亀和田退社1980年には『大快楽』の小谷菅野体制崩壊迷宮'80編集『アリス』休刊、『エロジェニカ』の出版社倒産に至る。 エロ劇画誌における評論冒険的な編集姿勢は『漫画バンバン』『漫画バクダン』『漫画ピラニア』『漫画カルメン』『漫画ハンター』『漫画スカット』『官能劇画』『Peke』『月刊コミックアゲイン』『漫金超』『本の雑誌』『漫画ラブ&ラブ』『映画エロス』『漫画エロス』『漫画ダイナミック』『マンガ宝島』『漫画ブリッコ』などの諸誌にも広がったが、高取の『エロジェニカ』からの撤退期にほどなく収束していった。 『別冊新評三流劇画世界』が出た79年頃より、業界はいっきに失速していくことになる。『エロジェニカ』が会社倒産と共に休刊、『劇画アリス』もまもなく廃刊となり、『大快楽』も編集者がやめることになっていく。『カルメン』『ダイナミック』『ピラニア』など、後を荷負方向性を持つ雑誌もあったし、『漫画ハンター』『漫画スカット』『ラブ&ラブ』など、面白くなっていた雑誌もあった。だが、幻の三流劇画全共闘内ゲバ(?)、当局締め付け自販機衰退など様々な要因もあって、80年代に入ると、まるで祭りの後のような寂し状況になっていった。三流劇画の後を受けたマニア誌を中心にしたニューウエーブ・ブームも含めて70年代末のマイナーなマンガ群は、80年前後相次いで創刊されていったヤングジャンプ』『ヤングマガジン』などの新青年誌に、いいところだけ吸収されていくことになる。より安く、より有名作家による、明るSEX物が出回れば、三流劇画誌たちうちできなかった。また時代は、内山亜紀人気でも解るように、劇画的な描き込み青年マンガ暗さより、明るロリコン物を求め始めてもいた。エロ劇画誌そのものが、ロリコン誌という過渡期経て美少女コミック誌へと転回していくのが80年代だ。 — 米沢嘉博三流劇画15年目の総括青林堂月刊漫画ガロ1993年9月号「特集三流エロ雑誌黄金時代

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三流劇画ムーブメント

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/06 15:01 UTC 版)

ニューウェーブ (漫画)」の記事における「三流劇画ムーブメント」の解説

詳細は「エロ劇画誌#三流劇画ムーブメント」を参照 当初からエロ劇画世界で自分世界築き上げる作者多かった。もちろん、エロなければ描けない世界というものもある。例えダーティ松本、北哲矢、村祖俊一あがた有為中島史雄土屋慎吾羽中ルイ宮西計三沢田竜二三条友美石井隆小多魔若史などが代表的な作家であった石井隆らがエロ劇画ありながら高い評価を得るなど、エロ劇画低俗である以外の評価与えられる例が出始め一種エロ劇画ブーム見られるようになったそのような状況の中から、1978年昭和53年)に三流劇画ムーブメントが起こった。 これは、当時三大エロ劇画誌と言われた『漫画大快楽』『劇画アリス』『漫画エロジェニカ』の編集者亀和田武高取英ら)によって打ち上げられたもので、言わば学生運動のような革命思想マンガ雑誌世界持ち込んだもので「劇画全共闘」とも呼ばれた。 彼らによると、当時漫画雑誌界にははっきりとした階層があり、一流から三流までが区別される一流は『ビッグコミック』を筆頭とする有名誌であり、それに続く一般漫画誌が二流で、三流エロ劇画誌である。ところがここでの一流内容においてあまりにも保守的一切変革求めない。そして二流三流デビューし実力をつけた作家つまみ食いにしている、と言いこのような状況打破するためには三流をもって一流にしなければならない、といった主張なされた。これらの主張や、『ガロ』の作家川崎ゆきお起用、またSFロックプロレスなどの評論コラム掲載するなど、エロ劇画誌固定観念からは離れた自由な誌面作られていた。1978年には深夜番組11PM』で三流劇画特集組み1979年には『別冊新評』で「三流劇画世界」が出版された。 彼らのエロ劇画誌本分逸脱した編集方針により、吾妻ひでおいしかわじゅん諸星大二郎など彼らに共鳴するメジャー作家や、芸術性が高いばかりに一般誌には受け入れられないニューウェーブ呼ばれた若手作家たち(ひさうちみちお蛭子能収宮西計三平口広美奥平イラまついなつき高野文子山田双葉山田詠美)、さべあのまなど)に実験的な作品発表の場が提供され、これらによる名作生まれた1979年頃までは「エロ劇画ルネッサンス」とも呼ばれるこうした潮流橋本治飯田耕一郎理論派の論客や『奇想天外』や『宝島』などのサブカルチャー雑誌巻き込んで展開されたが、彼らの目指したところはいわゆる一般読者支持得られず、亀和田『アリス』1979年休刊1980年には『大快楽』の編集者退社、『エロジェニカ』の出版社倒産に至る。エロ劇画誌における評論冒険的な編集姿勢は『劇画ハンター』『ラブラブ』『映画エロス』などの諸誌にも広がったが、高取の『エロジェニカ』からの撤退期にほどなく収束していった。

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