『アリス』
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 05:46 UTC 版)
「ロリータ・ファッション」の記事における「『アリス』」の解説
嶽本野ばらは価値観の異なるロリータの間でもなぜか流儀は違えど全てのロリータがこよなく愛するものが奇跡的に存在しており、それがルイス・キャロル著の「不思議の国のアリス」であると語っている。しかし、嶽本野ばらによればアリスはロリータのバイブルではなく、本の内容よりも、ロリータの関心を引いているのはマクミラン社から出されたオリジナル版の「不思議の国のアリス」に付けられたジョン・テニエルによる挿絵の方であり、テニエルの描いたアリスは一人歩きし、様々なグッズとなって世の中に出回っており、アリスの熱烈なコレクターになるロリータは多いそうである。ロリータに支持されるテニエル、ディズニー、金子國義が描いたテイストの異なるそれぞれのアリスを、嶽本野ばらは三大アリスと名付け、自身も収集している。『アリス』がロリータに好まれる理由について嶽本野ばらは中原淳一、金子國義、ルイス・キャロル(テニエルではなく?)などが描く少女像は明らかに女性の人権を無視しており、そんな幻想を世の乙女たちは馬鹿にしているが、あまりにも完璧すぎる男性からの要求は、ディスコミュニケーションが顕著であればあるほど、乙女たちはそこにスレイブとしての自分のアイデンティティを確保することが可能となり、逆に何の躊躇いもなく作品に共感できるのだという。 また、ALI PROJECTの宝野アリカも幼少期より「不思議の国のアリス」を耽読し詩作の霊感源にしていたという。宝野アリカはアリスが自分と一字違いであったということの他にも、「ナンセンス世界の奇妙な登場人物たちに魅かれ、拙い想像力でもってファンタジーという言葉さえ知らぬまま不思議の国に彷徨い、そして何よりも他の物語の子供たち(例えば小公子のセドリックや小公女のセーラなど)のような良い子とは違う、どこか自分本位でちょっぴり我が儘で、おかしなことばかり言うアリス」にこれまでにない魅力を感じたとのことである。また、宝野アリカは70年代にはアリスの絵本や本を買い漁り、水色のエプロンドレスを自ら縫い、縞の靴下を履いて黒のワン・ストラップの靴で、髪を出来うる限り伸ばしリボンを巻き、どうやら無自覚的にひとりコスプレを楽しんでいたようである。また宝野アリカによれば「少女の「始まり」はアリス」であり、「現在ゴシック&ロリータと呼ばれる少女達の文化も、ここはら端を成すのではないかと思えば、その深層に銀の匙を掬い入れるころは容易いのではないだろうか。混同されがちなコスチュームプレイとの相違も顕著にされるだろう。」と書いた。宝野アリカも、嶽本野ばらも、「不思議の国のアリス」などの童話を児童書、子供向けと見下しておらず、そこに隠された隠喩や、政治的な意図、真意などを大人目線で考察している様子がうかがえる。また嶽本野ばらは「それいぬ」において、「メルヘンとファンタジーの違い」について書いており、そこで彼は大島弓子の少女漫画「綿の国星」を子供向けの安易なメルヘンではなく、チビ猫の視点で世界を再構築した重厚なファンタジーであると書いている。
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