バイデン政権における国務長官
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:48 UTC 版)
「アントニー・ブリンケン」の記事における「バイデン政権における国務長官」の解説
2017年1月にオバマ政権からトランプ政権に移行して下野した後のブリンケンは、同年9月にミシェル・フロノイ(英語版)と共に「ウェストエグゼク・アドバイザーズ(英語版)」という外交安保コンサルティング会社を共同で設立・経営していたが、2020年11月24日に同年の大統領選挙に当選したバイデンから、2021年1月20日に発足予定のバイデン政権の国務長官に指名された。ブリンケンは共和党からも信任のある人物のため、上院での承認手続きも問題が無いと見られていた。 2021年1月19日に上院の指名承認のための上院公聴会に出席した。覇権主義を強める中華人民共和国について「最重要課題だ。強い立場で向き合う」と述べ、同盟国との連携を強化して中国に対抗していく考えを表明した。トランプの対中強硬路線についても「方法には同意しかねるが、正しい取り組みだった」と述べ、引き継ぐ考えを示した。台湾の自衛能力の確保に向けて「永続的に関与する」ことを強調し、台湾が国際機関でより大きな役割を果たすことにも期待を表明した。また、中国の権威主義体制よりも自らの国の民主主義体制の方が優れていることを強調し、「我々は中国との競争に勝つことができる」と決意を述べた。 同年1月21日に北朝鮮問題については日本・韓国とも相談して全面的に見直すとの考えを表明した。2月に期限が切れるアメリカとロシアの新戦略兵器削減条約(新START)については、延長を目指す考えを示した。またイラン核問題については、イランが核合意を順守するなら核合意に復帰するとの新政権の方針を示した上で、より強力で長期的な合意を目指す考えを明らかにした。2017年12月にエルサレムをイスラエルの首都と承認し、大使館を移転したトランプ政権の方針については、継続する方針を明らかにした。 マイク・ポンペオ国務長官が中国政府がウイグル族ら少数民族を迫害していることについて、「ジェノサイド(集団虐殺)」かつ人道に対する罪であると認定したが、ブリンケンも同意して新彊ウイグル自治区での強制労働によって作られた物品は輸入すべきでないとの認識を示した。 2021年1月26日に上院にてブリンケンを国務長官とする人事案が賛成78・反対22票で承認され、同日中に就任宣誓を行った。 1月27日に就任後初の記者会見で、トランプ前政権が中国政府による新疆ウイグル自治区でのイスラム教徒少数民族の弾圧を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定したことに関し、バイデン政権としても「ジェノサイドであるとの認識は変わらない。」と表明した。また米中関係は「私たちの多くの将来を規定する、世界で最も重要な関係だ」とし、その関係はさまざまな分野で「敵対的」または「競争的」になっていると述べた。同時に「競争的な関係ではあるが、協力的な関係でもある」として気候変動対策などの分野では中国との協力が可能だとの方針も示した。そのうえで「それを実現できることを望んでいるが、われわれの外交政策や中国との間で抱える多くの懸念事項という背景を踏まえるべきだ」と述べた。トランプ政権が離脱したイラン核合意については、イランが合意義務を順守するなら復帰する意向を改めて示したが、現状ではイランが「多くの面で規則に従っておらず、長い道のりだ」との認識を示し、早期復帰に慎重な姿勢を見せた。またロシア当局による反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイの拘束について改めて「深い懸念」を表明し、ナワリヌイ毒殺未遂事件・ロシアの関与の疑いがあるアメリカ政府などを狙ったサイバー攻撃などについて「調査している」と述べた。 1月31日にミャンマーで与党の国民民主連盟を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問らが軍部のクーデターで拘束された事件について「アメリカは民主主義や自由、平和、発展を求めるミャンマー国民と共にある。軍部は即時に行動を撤回すべきだ。」と述べ、ミャンマー国軍に対してアウン・サン・スー・チーらの解放を求めた。また同日にロシアで反政府活動家のアレクセイ・ナワリヌイの拘束に抗議する集会やデモが各地で発生し、5000人以上が逮捕された事件についてデモに対する厳しい締めつけや取り締まりを止めるようロシアに要求した。 2月6日には中国外交を統括する楊潔篪党政治局員と新政権発足以来初めての米中外交トップ電話会談を行い、台湾を含むインド太平洋地域の安定を脅かす行為には、同盟国と連携して中国に責任を負わせることを通告し、またアメリカは新疆ウイグル自治区・チベット自治区・香港における人権や民主的価値を守り続けることを伝えた。またミャンマー国軍によるクーデターを中国も非難するよう要求した。 2月8日に国際連合人権理事会にオブザーバーとして復帰すると発表した。人権理事会はパレスチナ問題でイスラエルを非難してきたため、トランプ政権は2018年6月に「人権理事会がイスラエルに対する恒常的な偏見を持っている」として、脱退を発表していた。ただしブリンケンもイスラエルへの非難も含めて人権理事会は「改革を必要としている」ことを指摘し、米国の外交的リーダーシップの総力を挙げて「理事会の欠陥に対処する」と述べている。 2月23日の天皇誕生日に際して今上天皇に祝意を表明すると共に「我々の大切な友好関係を引き続き深化・拡大させるために、大統領と私は再び日本を訪れることを切望している」と述べて日米同盟の強化に意欲を示した。 3月3日には中国のことを「最大の地政学上の課題」と表現した。 4月16日に香港の裁判所が『蘋果日報』の創業者の黎智英らに実刑判決を言い渡したことに対してブリンケンは声明を出し、「政治的動機によって起訴された民主派指導者への判決」とし、「中国政府と香港当局があらゆる形の異議を排除するため、香港基本法などで保障された権利や基本的自由を弱体化させた事例だ。」と非難した。「香港の自由や自治への中国の攻撃に対抗する香港の人々を支持し、釈放を求め続ける」と述べた。 7月6日はチベット仏教の精神的指導者であるダライ・ラマ14世の86歳の誕生日に当たり、「6日ダライ・ラマ聖下が86回目の誕生日に迎えるに際し、ご多幸を祈り、謹んで喜びを申し上げる」「ダライ・ラマの謙虚・慈悲・理解に対するメッセージは世界の人々へのインスピレーションになる」という声明を発表した。 8月6日にARF=ASEAN地域フォーラムにオンラインで出席し、中国が急速に核戦力を増強していることに深い懸念を表明すると共に、中国に南シナ海での挑発的な行動を止めて国際法を遵守する事を要求した。またウイグル・香港・チベットでの人権侵害に懸念を表明した。また軍による市民への弾圧が続くミャンマー情勢をめぐってARF参加国に対し、ミャンマー軍に圧力をかけることを呼びかけた。中国の王毅外交部長はミャンマー問題について「民主主義と人権を装って内政に干渉し、自らの地理的な利益を求めたりしてはいけない」とアメリカを念頭にした発言を行い、また南シナ海問題で中国を敗訴させた国際仲裁裁判の判決について「事実認定と法律の適用において明らかな問題がある。」として受け入れを拒否する立場を改めて示した。
※この「バイデン政権における国務長官」の解説は、「アントニー・ブリンケン」の解説の一部です。
「バイデン政権における国務長官」を含む「アントニー・ブリンケン」の記事については、「アントニー・ブリンケン」の概要を参照ください。
- バイデン政権における国務長官のページへのリンク