ナショナルFF式石油暖房機の欠陥による死亡事故
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 07:22 UTC 版)
「パナソニックホールディングス」の記事における「ナショナルFF式石油暖房機の欠陥による死亡事故」の解説
1985年から1992年まで製造されたFF式石油暖房機を使用したユーザーに、一酸化炭素中毒事故による死亡者が2005年1月15日に発生。その後も事故が続発した。 FF式(密閉式・強制給排気形)暖房機は1980年代中頃に開発されたもので、壁に穴を開けて給排気筒を通し、屋外の空気を機械に送り込んで燃焼させ、燃焼ガスは屋外に排出するタイプの暖房器具である。 事故原因はバーナーに外気を送るゴムホースの亀裂により不完全燃焼を起こしたこととされた。 製造は奈良県大和郡山市にあった松下住設機器(松下電器産業に吸収合併の後、現在は社内カンパニーのアプライアンス社)で、152,132台が販売された。 事故発生直後の2月10日、松下電器は石油暖房機だけでなく石油給湯機なども含む石油機器からの完全撤退を決めた(合理化のための撤退という説もある)。以降、ナショナルショップ(松下製品取次店)に供給される石油暖房機器はコロナ製品に変更された。 4月21日にゴムホースを銅製ホースに交換するリコール(製品の無償修理)が発表されたが、11月21日には修理漏れの対象製品を使っていたユーザー宅で死亡事故が発生し、対象機種の生産から13年から20年が経過していることも影響して修理対応が進んでいないと見られたため、11月29日の夕方に経済産業省は同日付けで消費生活用製品安全法第82条に基づく緊急命令(現:同法第39条に基づく危害防止命令)を発出した。 しかし、緊急命令発出後の12月5日に交換した銅製ホースが機械から脱落、ユーザー宅で家人が意識不明の重体となる中毒事故が発生。経済産業省は同月、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)に原因究明を依頼した。 このため松下電器は対応を変更し、対象製品の1台5万円での引き取りを決め、松下電器(National/Panasonic)だけでなく松下グループ全社の一般テレビ・ラジオCMを全て「ナショナルFF式石油暖房機を探しています」と題する対象製品のリコール告知CM(お詫びCM)へ差し替える(内容は後述)、ガソリンスタンドや店舗、新聞折り込みなどでチラシを配布するローラー作戦を決行するなど対策を強化した。松下提供のラジオ番組『歌のない歌謡曲』でも12月8日から松下のCM放送を急遽中止、一時は公共広告機構(現:ACジャパン)のCMに差し替えられ、その後、12月12日からはお詫びCMを流した。TBS系列で放送の『ナショナル劇場』のCMも、発生当時(12月12日放送分:『水戸黄門』第35部の第10話)は公共広告機構と並行してお詫びCMの長編(30秒が1回、それ以外は60秒)を放送した。 交換した銅製ホースが機械から脱落する事故は全国で13件にも及んだため、急遽12月10日 - 12月19日までの10日間は放送でのコマーシャルを全てお詫びCMに差し替えた。通常の松下CMが再開された12月20日以降も、対象製品が多数出回っている北海道・東北などの一部地域と民放BS・一部のCS放送局ではスポットCM中心にお詫びCMを集中させた。ラジオ番組『歌のない歌謡曲』でも継続してお詫びCMを放送した(TBSラジオの場合、番組内1回と終了直後1回)。 2006年1月12日には約6万台の所在が確認できていないとして、宛先を特定せず指定地域の全戸に郵便物を送付できる日本郵政公社(現:日本郵便)のサービス「配達地域指定郵便物(タウンメール)」を利用し、「松下電器より心からのお願いです」と題する、対象製品の修理・回収を呼びかけるはがきを送ることを発表。2月中旬から全国の全世帯4900万(前年度国勢調査速報値による)と宿泊施設1100万箇所、計約6000万箇所に送付した。はがきには回収対象の石油暖房機(石油温風機と石油フラットラジアントヒーター)の写真と、24時間体制で受け付けるフリーダイヤルの電話番号(0120-872-773)が印刷されている。 2006年11月、リコール開始当初から対象製品としてリスト入りしていた寒冷地仕様の煙突付き機種の写真を追加した。この頃、ファクシミリのフリーダイヤル回線(0120-870-779)も開設された。 2007年5月末時点で、テレビのお詫びCMを4万2,000本放映、チラシ6億9,000万枚を配布し、費用249億円をかけて回収を呼びかけたが、回収率は70%余りに留まり回収が難航する中、いつでも使用できる「危険な状態」のケースや使用しないままで放置されているケースの修理・回収を進めており、既に廃棄処分(買い替えに伴うものも含む)された情報も集めている。 その後も対象製品の全台数が回収に至っていないため、現社名に変更後も引き続き、規模を大幅に縮小しつつもお詫びCMの放送(2009年頃からは、暖房機器の使用が始まる冬場や、暖房機器の使用が終わる春先を中心に流される)およびチラシの配布を行っている。連絡先についてはフリーダイヤルの電話番号はそのままであるが、高齢者などのユーザーに現社名が周知されていない懸念があるため、社名は必ず「パナソニック株式会社(旧社名:松下電器産業株式会社)」と併記されている。ただしフリーダイヤルの受付時間は24時間体制から平日のみに縮小され、時間外や休日は留守番電話での受付へと移行した(ファクシミリは24時間のまま)。社名変更以降、パナソニックが「今でも見つかっています」としてチラシやウェブサイトで挙げている発見事例は以下の通り。 各種住宅空き部屋(使われなくなった子供部屋、設置されている部屋を物置代わりにしていた、等) 実家(帰省時に発覚した、等) 高齢者世帯(上述の実家、ホームヘルパーの訪問時に発覚した、等) 介護世帯(同上) 親戚世帯 空き家(中古住宅も含む) 別荘 各種施設事務所 集会所 店舗 宿舎 研修所 各種収納スペース(リフォーム等で収納していた、等)倉庫(農作業用も含む) 物置(上述の空き部屋転用も含む) 押し入れ 納屋 ガレージ パナソニックではお詫びCMの「全台数の把握に向けて、引き続き、探しております」とのテロップや、チラシの「いまだ全数把握には至っておりません」等の記載、ウェブサイトの「依然として全台数を確認するには至っておらず、」の記載等で、最後の1台が発見されるまでFF式石油暖房機市場対策活動を継続する意向を明らかにしており、長期化は決定的なものとなった。 2021年11月現在お詫びCMは放送されていないが、企業公式サイトのトップページには通年で「ナショナルFF式石油暖房機を探しています」とこのお詫びを掲載し続けている。また、暖房シーズン前後にはチラシ(その他のリコール事案を集約したチラシも含む)配布や公式SNSアカウントへの投稿も継続している。全ての対象製品が製造を終了してから29年、最初の死亡事故が発生してから16年が経過した同月現在もパナソニックは松下電器産業時代のFF式石油暖房機を「探し続けて」いる。 対象製品は2022年2月末時点で、152,132台のうち118,412台分の利用者が判明(廃棄・買い替え、回収・修理)しているが、差し引いた残り33,720台が発見に至っていない。
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