暖房
暖房(だんぼう、煖房とも)は、室内を暖めて温度を上げる行為の総称。また、その装置全般を指す。
歴史
古くは、古代ローマでハイポコーストが用いられていた。朝鮮半島にも三国時代に似た方式のオンドルがあり、いずれも火で暖めた空気を床下に通すことで暖房を行っていた。
1700年代中ごろには、イギリスで蒸気暖房が初めて使われた。1800年代後半になると、アメリカ合衆国で鋳鉄製ボイラーが製造され、暖房技術の発展が進んだ。
日本では火鉢や囲炉裏、こたつなどがあるが、主に採暖型のものだった。明治時代以降、様々な方式のストーブが製造されたが、暖房の必要性がよく理解されていなかったことから、北海道ですら気候の異なる京都風の家が作られていた[1]。部屋全体を暖める暖房器具が普及するのは、第二次世界大戦後のことである。
暖房機器
日本産業規格、JIS S 2091:2013「家庭用燃焼機器用語」[2]において、暖房機器(Space heater)とは燃焼で発生した熱で、採暖または室内を暖める燃焼機器の総称と定義されている[注釈 1][3]。このため該当しない機器は#その他の暖房器具を参照。
ガス暖房機器
ガス暖房機器(Gas heater)は燃料にガスを用いた暖房機器[注釈 2]。
- ガスストーブ – ガスを燃料とするストーブ。家庭用は表示ガス消費量が19キロワット (19,000 W)以下、開放式は7キロワット (7,000 W)以下のものを指す[注釈 3]。
- ガス温風暖房機 – 送風機による強制通気でガスを燃焼させ、燃焼ガスを含まず、温風を吹き出す方式[注釈 4]。FF式とも呼ばれる[注釈 5][7][5]。
- ガスファンヒーター – 送風機による強制通気でガスを燃焼させ、燃焼ガスを含んだ温風を強制対流させる方式の開放式ストーブ[注釈 6]。
- ガス暖炉 – ガスを燃料とした暖炉[注釈 7]。
石油暖房機器

石油暖房機器(Kerosene heater)は燃料に灯油、軽油または重油を用いた暖房機器[注釈 8][8]。
- 石油ストーブ – 灯油を燃料とするストーブ[注釈 9]。
- 石油風暖房機 – 温風を吹き出す方式[注釈 10]。
- 自然通気形開放式石油ストーブ – 開放式で自然通気のストーブ[注釈 11]。
- 強制通気形開放式石油ストーブ – 開放式で送風機による強制通気、強制対流形のストーブ。石油ファンヒーターとも呼ばれる[注釈 12]。
- 半密閉式石油ストーブ – 半密閉式のストーブ[注釈 13]。
- 密閉式石油ストーブ – 密閉式のストーブ[注釈 14]。FF式とも呼ばれる[注釈 5][5]。長期使用製品安全点検制度の特定保守製品の対象で定期的に点検を受ける必要があったが、2021年8月1日に消費生活用製品安全法施行令が改正、特定保守製品から外れた[9][10]。
- 油だき温風暖房機 – 据え置き型で温風を吹き出す方式の石油暖房機器[注釈 15]。セントラルヒーティングの一種[8]。
放射暖房
JIS Z 8117:2002「遠赤外線用語」[11]の中で、「暖房」もしくは「採暖」を目的とした機器のみを上げる。
- 放射暖房(Radiant heating) – 設置した放射体から発せられた、主に放射による加熱での暖房[注釈 16]。輻射暖房とも呼ばれる。オイルヒーター、セントラルヒーティング(パネルヒーター)など[12]。
- 遠赤外線暖房 – 主に遠赤外線放射を利用した暖房[注釈 17]。カーボンやグラファイトを用いた電気ストーブが相当する。
- 遠赤外線放射暖房器 – 主に遠赤外線放射を利用した暖房器[注釈 18]。
- 遠赤外線こたつ – 遠赤外線を用いたこたつ[注釈 19]。
- 遠赤外線ストーブ – 遠赤外線を用いたストーブ[注釈 20]。
その他の暖房器具
上記に該当しない、その他の暖房機器・器具を方式別に列記する。
燃焼方式
電熱方式
温水・蒸気方式
熱交換方式
脚注
注釈
- ^ 「暖房機器」と言う用語は「家庭用燃焼機器用語」、41001番[2]にて定義されている。
- ^ 42301番[2]にて定義。
- ^ 42302番[2]にて定義。
- ^ 42303番[2]にて定義。
- ^ a b 「強制給排気式」(ガス、番号:44309)または「強制給排形」(石油、番号:44310)のことを「FF式」とも称するが、FFの語源を用語上で明記していない[2]。[4]や[5]においてはForced Draught Balanced Flue Typeの略とあるが、一方[6]などではForced Flueの略とされている。いずれも正式な語源ではない点に留意されたい。
- ^ 42304番[2]にて定義。
- ^ 42305番[2]にて定義。
- ^ 43301番[2]にて定義。
- ^ 43302番[2]にて定義。
- ^ 43303番[2]にて定義。
- ^ 43304番[2]にて定義。
- ^ 43305番[2]にて定義。
- ^ 43306番[2]にて定義。
- ^ 43307番[2]にて定義。
- ^ 43308番[2]にて定義。
- ^ 5001番[11]にて定義。
- ^ 5004番[11]にて定義。
- ^ 5008番[11]にて定義。
- ^ 5012番[11]にて定義。
- ^ 5013番[11]にて定義。
出典
- ^ “SODANE - 昔の北海道の家はなぜ寒いのか? 司馬遼太郎がそのナゾに迫る! 編集根気 第2回”. SODANE. 2024年12月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p JIS S 2091:2013「家庭用燃焼機器用語」(日本産業標準調査会、経済産業省)
- ^ “Space heater Definition & Meaning” (英語). en:Dictionary.com. 2022年1月2日閲覧。
- ^ “FF式の定義” (PDF). 一般財団法人 日本燃焼機器検査協会. 2022年1月3日閲覧。
- ^ a b c “FFストーブとは? 温空感を応援し隊!”. サンポット. 2022年1月2日閲覧。
- ^ 『FF暖房』 - コトバンク
- ^ “ガスFF暖房機”. リンナイ. 2022年1月2日閲覧。
- ^ a b “石油暖房機の種類”. 一般社団法人 日本ガス石油機器工業会. 2022年1月2日閲覧。
- ^ “長期使用製品安全点検・表示制度”. 経済産業省. 2022年1月2日閲覧。
- ^ “長期使用製品安全点検・表示制度のパンフレット” (PDF). 経済産業省. 2022年1月2日閲覧。
- ^ a b c d e f JIS Z 8117:2002「遠赤外線用語」(日本産業標準調査会、経済産業省)
- ^ 『放射暖房』 - コトバンク
関連項目
暖房器具(しばしば調理兼用)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 02:47 UTC 版)
「ストーブ」の記事における「暖房器具(しばしば調理兼用)」の解説
「暖房器具」と言っても、その歴史をふまえると、実際は上に鍋などを置いて調理に使えるように設計されていたので(たとえば煮込み料理や目玉焼きなどができるようになっていたので)長い間実質的に「暖房用兼調理用」であった。石油ストーブでも上部に鍋を置いて調理ができるようになっているものは多い。だがガスストーブや電気ストーブになって「暖房専用」のものが増えた。
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「暖房器具」の例文・使い方・用例・文例
- 我々はこの冬を暖房器具1つでなんとか乗り切らねばならない
- 暖房器具を地下室にしまった
- それはただのテーブルではなく暖房器具です。座って中に脚を伸ばしてください。中のヒーターと布団が温めてくれます。
- こたつは暖房器具のひとつです。
- 暖冬の影響で暖房器具の売り上げは例年より落ち込んでいます。
- 今日は暖房器具を使っていません。
- 乾燥した空気のせいで痛んだノドや鼻の粘膜は、風邪のウイルスが入り込みやすくなってしまいます。暖房器具で寒さ対策、加湿器で乾燥対策をしっかり行なうことが肝要です。
- 据え炬燵という暖房器具
- ストーブという室内用暖房器具
- 辻番火鉢という暖房器具
- 電気炬燵という暖房器具
- 櫓炬燵という暖房器具
- 石油ストーブという暖房器具
- パネルヒーターという暖房器具
- ルンペンストーブという暖房器具
- 吸気と排気を外部で行う方式の暖房器具
- 検察側は,ケーブルカーの運転室に違法に設置された暖房器具が火災の原因の1つだったと述べた。
- 特に,空気清浄機や暖房器具と組み合わせた加湿器がよく売れている。
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