デカップリング
デカップリング(decoupling)とは、英語で「分離」「切り離し」を意味する表現。とりわけ政治・経済の分野において、いわゆる「切っても切れない」ような親密・緊密・密接な関係を、解消して非連動的なものにすること。
2020年半ば現在、「デカップリング」は、もっぱら「米国経済と中国経済の緊密な関係の解消・希薄化」を指す語として用いられている。
米国によるデカップリングの動向は、通信の分野を筆頭に、たとえばスマホ大手ファーウェイ(華為技術)を米国のスマホおよび5Gの市場から排除したり、動画アプリ「TikTok」の使用を禁じたりといった形で実施されつつある。
デカップリングは de-coupl(e)-ing という構成の単語である。語根(語幹)である「couple」は、動詞としては「連結する」「2つを1つの対にしてつなぐ」といった意味合いがある。「de-」は「分離」「除去」「否定」といった打ち消しの意味を付与する接頭辞。「-ing」は動詞を動名詞にする接尾辞である。大雑把に言ってしまうと decoupling は「カップリングの解消」である。
「デカップリング」という言葉が具体的に《何と何との分離》を指すのかは、時代や文脈に応じて違ってくるが、政治経済の分野では「米国経済と世界経済の分離」を指す場合が多い。環境の分野では「経済成長とエネルギー消費量の増大の比例的関係の解消」を指してデカップリングという場合が多い。
デカップリング
最近、経済界とくに証券市場で「デカップリング」という言葉が聞かれるようになりました。この言葉は米国の景気が減速すると、それにつれて日欧および新興国を含む世界各国の景気が低迷する、つまり「一蓮托生」という意味の「カップリング」(直訳すると連結、結合)の反対語ということになります。欧州連合(EU)が共同体として力をつけてきたほか、中国やインドといった新興国の急成長によって、世界経済に対する米国の影響力は低下しているため、米国景気が減速しても、EUや新興国などが世界の景気を下支えし、米国と同じにはならない、というのがデカップリングの考え方です。
「米国がくしゃみをすると、日本が風邪をひく」は日米関係を端的に表す言葉で、カップリングの代表です。近年、わが国の対米依存度が小さくなりつつあるといっても、まだまだ米国の影響力には根強いものがあります。サブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅融資)問題が引き金となって住宅投資や個人消費が減退し、景気が減速傾向にある米国をみて、わが国景気の先行きを懸念する声が多いのはカップリングを懸念してのことに他なりません。
北京オリンピックを控えて2ケタ成長を続ける中国やIT産業を軸に経済成長が著しいインドをみると、米国経済が不調でも世界経済は安泰だというデカップリングの方に分があるかもしれません。そうでないと、米国景気の減退によって今年はわが国の景気回復に終止符が打たれることになりかねません。したがってデカップリングが現実のものとなることを祈るばかりです。
しかし、中国もインドも対米輸出が景気の最大のけん引役であり、米国経済が減速すると、輸出に支障を来して、景気の足を引っ張る可能性があります。そうなると、やはりデカップリングは絵に描いたモチにすぎず、結局のところ世界経済はカップリングの理論から抜け出すことは出来ない、つまり米国経済から逃れられないということになるわけです。
写真は東京証券取引所(左)とニューヨーク証券取引所(右)、本文と写真は関係ありません。
(掲載日:2008/01/16)
デカップリング
デカップリング。本来は、農業政策特に価格政策のもつ所得を維持する効果と生産を刺激する効果の二つの効果を切り離すことを意味する言葉ですが、日本では一般的には農家に対する「直接的所得補償政策」として使われている言葉です。では、直接的所得補償政策とは、いったいどのような政策なのでしょうか。 皆さんに最もわかりやすい例が、お米農家の減反に対する奨励金政策です。田んぼでお米を作らない代わりに、その農家に所得を補償するというもの。ちなみに、こうした政策が実施される背景のひとつには、農産物の自由化による価格の国際化や世界的な生産過剰の抑制という問題があります。 このデカップリング、直接的所得補償政策が、農産物の生産だけでなく、棚田の保全という環境の面にも採用されることになりました。大切な自然環境として、子どもたちの情操教育の場として、貴重な役割を担う農村への認識が高まってきたのでしょう。日本の田園風景を代表する棚田。その景観を保護することの意識が認められたというわけです。 そしてじつは、この棚田の保全を多くの酪農家が担っているという事実があります。減反で農家が放棄した土地を酪農家が借り受けて、草地として利用する。それが結果として、日本の風景を保全することになっているのです。しかし、あくまでもデカップリングの対象として所得が保証されるのは、土地の所有者である農家の方々です。残念ながら酪農家はその対象となっていないのが現状です。 |
<ミルククラブ情報誌'98 SPRING vol.27より> |
デカップリング
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デカップリング(2003年)
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「共通農業政策」の記事における「デカップリング(2003年)」の解説
2003年6月26日、EU加盟国の農相は補助金の支給制度について、一部の例外を除いて生産量と切り離す(デカップリング)という共通農業政策の抜本的改革を実施することを決定した。新たな「単一支払方式」では、環境、食品安全、動物保護についてのさまざまな規定を遵守する「クロス・コンプライアンス」が条件となった。このような規定の多くは農業を行ううえで、適正な実施を求める勧告や個別の法的要件といった形で導入されている。このような措置の目的は、環境、品質、動物保護といった施策のための財源をより多く確保するというものである。 ところがイギリスでは、このような施策について2005年5月の施行初日においても細部の調整が行われていた。これはEUで示された概要にしたがっていれば、措置の細部は各加盟国ごとにの裁量で決めることができるためである。イングランドでは単一支払方式について、耕作可能な状態で管理されている農地1ヘクタールに対しておよそ230ポンドといった定額制での支給が行われることになる。スコットランドでは過去の生産実績に基づいて支給がなされ、支給額は大きな幅を持つことになる。さらに新たな補助金制度では、より広い休耕地に対しても環境保護支援のための補助金が支給される。 EU全体および各国の補助金関連の予算には上限が設けられている。これは限られた財源の中でEUが共通農業政策に充てる予算の額が増加することが求められるという事態を避けるためである。 これらの改革派2004年から2005年にかけて実行に移されている。加盟国は2007年まで移行期間を設けることで実施の猶予が認められており、2012年までに実行することになっている。
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デカップリング
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/09 16:33 UTC 版)
選択的ラジオ波照射によって、NMRスペクトルは完全あるいは部分的にデカップリングされ、カップリング効果が消滅あるいは選択的に減弱する。炭素13NMRはしばしばデカップリング条件で測定される。
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「デカップリング」の例文・使い方・用例・文例
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