リットル 記号のゆれ

リットル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/21 04:03 UTC 版)

記号のゆれ

リットルの単位記号国際単位系 (SI) の規定では、大文字・立体の L または小文字・立体の l が正しい。日本の計量法上も同じである[17]

l から L へ

当初、リットルを表す単位記号は小文字・立体の l だけであった。SIにおいては、人名に由来する単位については記号の一文字目を大文字にし、それ以外の単位は全て小文字で書くことになっていたからである。しかし、多くのラテン文字を由来とする文字を使用する国では、筆記体アラビア数字の 1 を単に垂直の線のみで示すのが一般的であり、これとラテン文字の小文字の l とは酷似している[注釈 3]ため、誤認されることがあった。

1979年、第16回CGPMは、小文字・立体の l 以外に大文字・立体の L もリットルの新たな単位記号として用いることを採択した。また、将来この2つのうちのどちらか1つのみを正式なものとして選択されるべきであると表明されたが[18]、1990年の会議ではまだその時期ではないとされた[19]

したがって、現在でも l と L のどちらを用いても正しいが、日本では産業技術総合研究所が、大文字・立体の L を使用することを推奨している[20]。法令においても例えば農林水産省の「飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令」は、「L」を用いることを規定している[21]

一方、アメリカ標準技術局 (NIST) は、SP811において、アメリカ合衆国では大文字 L を使用すると規定している[22]。このためSI文書のNISTバージョンであるSP330においてもリットルの記号として L のみを掲げている[23]。なお、合衆国政府印刷局のStyle Manualにおいても、大文字 L を使用すると規定している[24]

このような事情から、現在では日本においても、記号 L の使用が優勢となっている。

記号の由来についての冗談

リットルに大文字「L」を用いるのは、その由来がクロード・リットル (Claude Émile Jean-Baptiste Litre) という人名によるものである、という冗談をケネス・ウールナー (Kenneth Woolner) が1978年のエイプリル・フールのジョークとして教師向けの化学のニュースレターに載せ[25]、それが1980年に国際純正・応用化学連合 (IUPAC) の雑誌 Chemistry International[26] に事実として記載され、同雑誌の次号において撤回されるという事件があった[27]。詳細はクロード・リットルを参照のこと。

から L へ

リットルの単位記号として、小文字の l の活字体ではなく小文字・筆記体・立体の (U+2113) が日本をはじめとするいくつかの国で用いられることがある。日本の初等および中等教育でも を用いるように教えていた。しかし、前記の通り、国際度量衡局 (BIPM)、国際標準化機構 (ISO) やその他の国際標準機関においても、日本の計量法体系においても、この記号は認められていない。

また、筆記体のエルのほか、中学高校の教科書では斜体字のエル を用いているものもあったが、単位立体で書き、斜体字は物理量の変数を表すことになっているため、単位の取扱いとしては誤りである。このため2006年度の教科書検定では、高校物理IIおよび高校化学IIの教科書では立体の L に表記を変更する措置がとられた。この結果、2012年現在、ほとんどの高校の教科書で立体の L や l が用いられており、 の表記はほぼ使われていない。

小学校の教科書においても、2011年度からは、L が使用されている。2009年6月の小学校学習指導要領解説 算数編では、リットルの単位記号として小文字の「l」が用いられていたが[28]、2011年の教科書検定から、単位記号は、大文字の「L」を使用するように検定意見が付き、各教科書とも、L を使用し始めた[29][30][31][32]。これは、教科用図書検定基準が改定され、計量単位の記号については、「SIと併用される単位」についても、SI文書の表記によることとされたためである[33][34]

現在では、日本の一般的な小売の商品の印刷面やスーパーマーケットなどでの表記でも、大文字立体の L が多く用いられるようになってきている。ただし、2019年時点でも店頭における商品のパッケージ上の記述は統一されていないため、小学校の教科書では、Lとは異なる記号が使われていることに注意を促しているものがある[35]

縦書き表記では、立体の l を使用することはほとんどなく、L が使用されることもまれで、もっぱら が使用されるか、SI接頭語の記号 + (m 等)を縦中横にしたり、 の形の組文字を使用することが多い。

文字コードでは、2000年に規格化された文字コード規格のJIS X 0213は、リットルを表す記号として面区点位置1-3-63に を追加採用した。ただし、この図形文字の追加は、リットルの記号として L や l の使用の制限を意図するものではないとしている[36]

Unicodeでは U+2113 に SCRIPT SMALL L として liter (traditional symbol) の説明つきでリットル用の記号としてコードが割り当てられており[37]、数学用に使用される筆記体の l である U+1D4C1, 𝓁, MATHEMATICAL SCRIPT SMALL L[38] とは区別して定めている。


注釈

  1. ^ 日本の基準書類においてliterと綴られることはない(リットル#英語表記)。
  2. ^ 最大密度となる温度は 3.98 °C である。
  3. ^ 手動式タイプライターの一部の機種では、数字「1」のキーを省略し、Lの小文字「l」のキーで代用したものがあったほどである(タイプライター#キーの省略)。
  4. ^ 小数点をもつ数字は、小学校3年生の段階で学習する。
  5. ^ 「立+少」で組み合わされた字形。
  6. ^ XP以前WindowsにバンドルされているMS明朝およびMSゴシックでは、字形が誤って M (メガリットル)の形になっている。

出典

  1. ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.114 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、「表8 SI単位と併用できる非SI単位」、2020年4月
  2. ^ 食品表示基準 第三条(横断的義務表示)、内容量又は固形量及び内容総量の欄、「内容重量、内容体積又は内容数量を表示することとし、内容重量はグラム又はキログラム、内容体積はミリリットル又はリットル、内容数量は個数等の単位で、単位を明記して表示する。」
  3. ^ The International System of Units (SI) (フランス語版+英語版) 8th edition 2006 の pp. 124, 130, 142, 146, 150, 151, 152, 159.
  4. ^ The International System of Units (SI) (英語版) 8th edition 2006 の pp. 124, 130, 142, 146, 150, 151, 152, 159.
  5. ^ RELEVANT IMPERIAL UNITS, CORRESPONDING METRIC UNITS AND METRIC EQUIVALENTS The Units of Measurement Regulations 1995, legislation.gov.uk における綴り。metre, litre, tonne となっている。
  6. ^ U.S. Government Publishing Office Style Manual U.S. Government Publishing Office, 2016 5. Spelling, p. 84, 最右欄
  7. ^ Interpretation of the International System of Units (the Metric System of Measurement) for the United States 28433ページの左欄 II. a.
  8. ^ The International System of Units (SI) pp. 32, 39, 51, 55, 60, 61, 69.
  9. ^ The International System of Units (SI), NIST Special Publication 330, 2008 Edition, p.iii, 第3段落。
  10. ^ Interpretation of the International System of Units (the Metric System of Measurement) for the United States 28433ページの左欄 II. b.
  11. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 42、『5.1 単位記号』欄外など、p. 62。
  12. ^ 例えば、JIS Z8000-3 量及び単位-第3部:空間及び時間 p. 7、3-4.b リットル (litre) など。
  13. ^ Guide for the Use of the International System of Units (SI), NIST Special Publication 811, 2008 Edition, NIST, p. 51, 下欄注19 Between 1901 and 1964 the liter was slightly larger (1.000028 dm3); when one uses high-accuracy volume data of that time, this fact must be kept in mind.
  14. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) pp. 54–55、第3回 CGPM、1901年、『リットルの定義についての声明(CR, 38-39)』
  15. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 63、第11回 CGPM、1960年、『立方デシメートルとリットル(CR, 88)』、決議13。
  16. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 64、第12回 CGPM、1964年、『■ リットル(CR, 93)』、決議6。
  17. ^ 計量単位規則 別表第2(第2条関係) 体積・リットルの欄、「l又はL」となっている。
  18. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) pp. 72-73.
    リットルという名称は,国際単位系に含まれるものではないとはいえ,同単位系との一般的併用が認められなければならないことを考慮し,例外的な措置として,単位リットルに対して使用できる記号として,二つの記号 l と L を採用することを決定し,更に,将来二つの記号のうち一つだけを採用するべきであることを考慮し,国際度量衡委員会に二つの記号の使用についての普及状況を追跡させること,それに基づいて,二つのうち一つを排除する可能性についての意見を第18 回国際度量衡総会に提出することを要請する
  19. ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 73 欄外の注記。
  20. ^ 『国際単位系(SI)は世界共通のルールです』 (PDF) 、2010年2月、国際単位系 FAQ、「体積を表すリットルの単位記号として ℓ は使えますか。」に対する答えの最後の記述「数字の 1 との混乱を避けることを考えると、大文字の L を推奨します。」
  21. ^ 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令 別表第2(第2条関係) 1飼料添加物一般の通則、(3)主な計量の単位については、次の記号を用いる。  リットルには「L」を、ミリリットルには「mL」を用いるなどと規定している。
  22. ^ Guide for the Use of the International System of Units (SI) (PDF) , NIST Special Publication 811, 2008 Edition, NIST, p. 8 Table 6. Non-SI units accepted for use with the SI by the CIPM and this Guide, ('b') "Thus, although both l and L are internationally accepted symbols for the liter, to avoid this risk the symbol to be used in the United States is L."
  23. ^ The International System of Units (SI) (PDF) , NIST Special Publication 330, 2008 Edition, p. 32, 注 (f) Editors' note: Since the preferred unit symbol for the liter in the United States is L, only L is given in the table;
  24. ^ U.S. Government Publishing Office Style Manual U.S. Government Publishing Office, 2016, Abbreviations and Letter Symbols 9.56, pp. 236–237, 250. kL (kiloliter), mL (milliliter) などについても同様である。
  25. ^ Claude Émile Jean-Baptiste Litre (1716–1778) (PDF) reprinted from Chem 13 News, pages 1–3, April 1978
  26. ^ Chemistry International
  27. ^ New Scientist 4 Oct 1984
  28. ^ 小学校学習指導要領解説 算数編 (PDF) p. 41など
  29. ^ 教科書における単位記号の表記について 大日本図書 2011/06/01
  30. ^ 「リットル」の表記を「L」にするなど,単位記号の表記を変更した理由を教えてください。 東京書籍
  31. ^ 教科のQ&A 学校図書 Q2 リットルの単位の表記が大文字の「L」に変わったのはなぜですか?
  32. ^ 山梨県総合教育センター (PDF) (2014年6月2日時点のアーカイブ) p. 10、3 平成23年度使用教科書における計量単位の扱いについて。
  33. ^ 義務教育諸学校教科用図書検定基準 (2009年3月4日文部科学省告示第33号)別表 計量単位の項「(1) 計量単位及びその記号は、「計量法」(平成4年法律第51号)によること。ただし、当該計量単位の中に国際単位系(SI)の単位又はSIと併用される単位がある場合には、原則としてこれによること。 」
  34. ^ 義務教育諸学校教科用図書検定基準全部改正 新旧対照表 別表、計量単位の項
  35. ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数2上、p.76、2019年3月5日検定済、2021年3月10日発行、東京書籍ISBN 978-4-487-10543-4、「mL の かわりに mlや mが つかわれて いたり, L の かわりに が つかわれて いたりする ものも あるよ。」
  36. ^ 日本規格協会、7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合 JIS X 0213:2000、付属書7(参考)面区点位置詳説、1.3.7 単位記号a) p.307 「なお、この図形文字の追加は、単位の“リットル”を L (1-3-44, LATIN CAPITAL LETTER L, ラテン大文字L)又は l(ラテン小文字L)の立体又は斜体などで記載することを制限することを意図するものではない。」
  37. ^ Letterlike Symbols (PDF)
  38. ^ Mathmatical Alphanumeric Symbol (PDF)
  39. ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数2上、p.70、2019年3月5日検定済、2021年7月10日発行、東京書籍ISBN 978-4-487-10543-4
  40. ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数3下、p.4、2019年3月5日検定済、2021年7月10日発行、東京書籍ISBN 978-4-487-11543-3
  41. ^ CJK Compatibility (PDF)” (2015年). 2016年2月21日閲覧。
  42. ^ The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。


「リットル」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

リットルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



リットルのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのリットル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS