リットル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/12 09:55 UTC 版)
倍量・分量単位
リットルは非SI単位であるが、国際単位系の規定でも計量法の規定でもSI接頭語を付加することができる。
分量単位
ミリリットル
日本の日常生活では1000分の1リットルであるミリリットル (mL) がよく使われ、これは、立方センチメートル (cm3) に等しい。この二者は混用されることもあるが、製品の種別や場合によっては片方のみがもっぱら使われる。液状の医薬品や化粧品,調理のレシピではミリリットルが用いられ、内燃機関の容積を細かく記述する際は立方センチメートルが用いられる(大まかに記述する際はリットルを用いる)。なお、立方センチメートル (cm3) のことを cc(立方センチメートル:フランス語: centimètre cubeの略)とも表記することがあるが、SIでは使用を認めておらず、いくつかの理由から、使わないほうがよい(「立方センチメートル#cc」を参照)。
デシリットル
日本では、10分の1リットルであるデシリットル (dL) は、実生活ではあまり使われていない[注釈 4]。しかし小学校2年生の算数の教科書で教えられている[42]。これは水筒(0.8 L程度)やペットボトル(0.5 L程度)の体積を示して体積(「かさ」としている。)の単位を教えるのであるが、小学校2年生の段階では、小数点を習っていないため[注釈 5][43]、0.8 L、0.5 L とは教えず、8 dL、5 dL として教えるためである。
この単位は、主として豆や穀類を小売りする際に用いられている(2005年9月現在)。計量法の施行により、従来使われてきた尺貫法ベースの計量単位が商取引に使えなくなったため、1合(約 1.8039 デシリットル)に比較的近い2デシリットルを販売の基準としている(写真参照)。また、血糖値の単位として mg/dL(ミリグラム毎デシリットル)が用いられる。
センチリットル
ヨーロッパでは100分の1リットル (10 cm3) であるセンチリットル (cL) が、飲料の容量などによく使われる。「EUにおける食品ラベルに関する表示規則(理事会指令76/211/EEC)」において、液体の容量表示は、「cL」と規定されている(ただしワイン類については附則でmL表示が認められている)[44]。
その他の分量単位
生化学、塗装・印刷など微量の液体を扱う分野では、マイクロリットル (µL)、ナノリットル (nL)、ピコリットル (pL)、フェムトリットル (fL)、アトリットル (aL) も使われる。立方ミリメートル (mm3)、立方マイクロメートル (µm3) 等は、単位の間が9桁も開いていて使いづらいからである。これより小さなSI接頭語を付けた単位であるゼプトリットル (zL) やヨクトリットル (yL) といった単位も一応は考えられるが、実際に用いられた例はない。
倍量単位
倍量単位としてはリットルの1000倍であるキロリットル (kL) がよく使われ、1立方メートル (m3) に等しい。これより大きなSI接頭語をつけることも許されているが、実用上メガリットル (ML) 以上はほとんど使われない。また10倍および100倍を表すSI接頭語であるデカおよびヘクトを付けた、デカリットル (daL) およびヘクトリットル (hL) といった単位も一応は考えられ、後述のようにこれらを表す和製漢字も作られたが、これらも現実的には用いられていない。
倍量 | 名称 | 記号 | SI単位 | 分量 | 名称 | 記号 | SI単位 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
100 L | リットル | L | 103 cm3(1 dm3) | |||||
101 L | デカリットル | daL | 104 cm3(101 dm3) | 10−1 L | デシリットル | dL | 102 cm3 | |
102 L | ヘクトリットル | hL | 105 cm3(102 dm3) | 10−2 L | センチリットル | cL | 101 cm3 | |
103 L | キロリットル | kL | 1 m3 | 10−3 L | ミリリットル | mL | 1 cm3 | |
106 L | メガリットル | ML | 103 m3(1 dam3) | 10−6 L | マイクロリットル | µL | 1 mm3 | |
109 L | ギガリットル | GL | 106 m3(1 hm3) | 10−9 L | ナノリットル | nL | 106 µm3 | |
1012 L | テラリットル | TL | 1 km3 | 10−12 L | ピコリットル | pL | 103 µm3 | |
1015 L | ペタリットル | PL | 103 km3 | 10−15 L | フェムトリットル | fL | 1 µm3 | |
1018 L | エクサリットル | EL | 106 km3 | 10−18 L | アトリットル | aL | 106 nm3 | |
1021 L | ゼタリットル | ZL | 1 Mm3 | 10−21 L | ゼプトリットル | zL | 103 nm3 | |
1024 L | ヨタリットル | YL | 103 Mm3 | 10−24 L | ヨクトリットル | yL | 1 nm3 |
漢字
漢字圏では「立脱耳」や「立突」という漢字が当てられ、日本では「立」と略すようになった。それを使って下記のような国字が作られた。現在ではこれらの表記は計量法上は全く認められていない。
- 竏 - キロリットル (kL)
- 竡 - ヘクトリットル (hL)
- 竍 - デカリットル (daL)
- 竕 - デシリットル (dL)
- 竰 - センチリットル (cL)
- 竓 - ミリリットル (mL)
- 竗[注釈 6] - マイクロリットル (µL)
ちなみに、「立米」は「りゅうべい」と読み、立方メートルのことである。
中華人民共和国では、尺斤法の升が偶然にもほぼ1リットルだったため、尺斤法をメートル法で再定義する際、升を1リットルと定義し、リットルを表すにも升を使うようになった。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
ℓ | U+2113 |
1-3-63 |
ℓ ℓ |
リットル |
㎕ | U+3395 |
- |
㎕ ㎕ |
マイクロリットル |
㎖ | U+3396 |
- |
㎖ ㎖ |
ミリリットル[注釈 7] |
㎗ | U+3397 |
- |
㎗ ㎗ |
デシリットル |
㎘ | U+3398 |
- |
㎘ ㎘ |
キロリットル |
㍑ | U+3351 |
1-13-40 |
㍑ ㍑ |
全角リットル |
Unicodeには、リットルとその分量・倍量単位を表す上記の文字が収録されている。このうち、文字様記号である ℓ 以外はCJK互換用文字であり、既存の文字コードに対する後方互換性のために収録されているものであって、使用は推奨されない[45][46]。
JIS X 0213における図形文字「ℓ 」の追加は、リットルの記号として L や l の使用の制限を意図するものではない(#ℓ から L へ)。
注釈
- ^ 日本の基準書類においてliterと綴られることはない(リットル#英語表記)。
- ^ 最大密度となる温度は 3.98 °C である。
- ^ 手動式タイプライターの一部の機種では、数字「1」のキーを省略し、Lの小文字「l」のキーで代用したものがあったほどである(タイプライター#キーの省略)。
- ^ 第53回(令和3年度)宮崎県統計グラフコンクール審査結果 第1部(小学校1・2年生) 入選作品「かさしらべ」黒木志帆(宮崎市立東大宮小学校2年生)による調査結果[1]。「いえの中のL、dL、mLさがし」として、Lが4個、mLが11個に対して、dLは健康診断の結果(血糖値の単位と思われる。)のみに使われている。
- ^ 小数点をもつ数字は、小学校3年生の段階で学習する。
- ^ 「立+少」で組み合わされた字形。
- ^ XP以前WindowsにバンドルされているMS明朝およびMSゴシックでは、字形が誤って Mℓ (メガリットル)の形になっている。
出典
- ^ 国際単位系(SI)第9版(2019)日本語版 p.114 産業技術総合研究所、計量標準総合センター、「表8 SI単位と併用できる非SI単位」、2020年4月
- ^ 食品表示基準 第三条(横断的義務表示)、内容量又は固形量及び内容総量の欄、「内容重量、内容体積又は内容数量を表示することとし、内容重量はグラム又はキログラム、内容体積はミリリットル又はリットル、内容数量は個数等の単位で、単位を明記して表示する。」
- ^ The International System of Units (SI) (フランス語版+英語版) 8th edition 2006 の pp. 124, 130, 142, 146, 150, 151, 152, 159.
- ^ The International System of Units (SI) (英語版) 8th edition 2006 の pp. 124, 130, 142, 146, 150, 151, 152, 159.
- ^ RELEVANT IMPERIAL UNITS, CORRESPONDING METRIC UNITS AND METRIC EQUIVALENTS The Units of Measurement Regulations 1995, legislation.gov.uk における綴り。metre, litre, tonne となっている。
- ^ U.S. Government Publishing Office Style Manual U.S. Government Publishing Office, 2016 5. Spelling, p. 84, 最右欄
- ^ Interpretation of the International System of Units (the Metric System of Measurement) for the United States 28433ページの左欄 II. a.
- ^ The International System of Units (SI) pp. 32, 39, 51, 55, 60, 61, 69.
- ^ The International System of Units (SI), NIST Special Publication 330, 2008 Edition, p.iii, 第3段落。
- ^ Interpretation of the International System of Units (the Metric System of Measurement) for the United States 28433ページの左欄 II. b.
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 42、『5.1 単位記号』欄外など、p. 62。
- ^ 例えば、JIS Z8000-3 量及び単位-第3部:空間及び時間 p. 7、3-4.b リットル (litre) など。
- ^ Guide for the Use of the International System of Units (SI), NIST Special Publication 811, 2008 Edition, NIST, p. 51, 下欄注19 Between 1901 and 1964 the liter was slightly larger (1.000028 dm3); when one uses high-accuracy volume data of that time, this fact must be kept in mind.
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) pp. 54–55、第3回 CGPM、1901年、『リットルの定義についての声明(CR, 38-39)』
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 63、第11回 CGPM、1960年、『立方デシメートルとリットル(CR, 88)』、決議13。
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 64、第12回 CGPM、1964年、『■ リットル(CR, 93)』、決議6。
- ^ 計量単位規則 別表第2(第2条関係) 体積・リットルの欄、「l又はL」となっている。
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) pp. 72-73. リットルという名称は,国際単位系に含まれるものではないとはいえ,同単位系との一般的併用が認められなければならないことを考慮し,例外的な措置として,単位リットルに対して使用できる記号として,二つの記号 l と L を採用することを決定し,更に,将来二つの記号のうち一つだけを採用するべきであることを考慮し,国際度量衡委員会に二つの記号の使用についての普及状況を追跡させること,それに基づいて,二つのうち一つを排除する可能性についての意見を第18 回国際度量衡総会に提出することを要請する.
- ^ 国際文書第8版国際単位系 日本語版 (2006) p. 73 欄外の注記。
- ^ 『国際単位系(SI)は世界共通のルールです』 (PDF) 、2010年2月、国際単位系 FAQ、「体積を表すリットルの単位記号として ℓ は使えますか。」に対する答えの最後の記述「数字の 1 との混乱を避けることを考えると、大文字の L を推奨します。」
- ^ 飼料及び飼料添加物の成分規格等に関する省令 別表第2(第2条関係) 1飼料添加物一般の通則、(3)主な計量の単位については、次の記号を用いる。 リットルには「L」を、ミリリットルには「mL」を用いるなどと規定している。
- ^ Guide for the Use of the International System of Units (SI) (PDF) , NIST Special Publication 811, 2008 Edition, NIST, p. 8 Table 6. Non-SI units accepted for use with the SI by the CIPM and this Guide, ('b') "Thus, although both l and L are internationally accepted symbols for the liter, to avoid this risk the symbol to be used in the United States is L."
- ^ The International System of Units (SI) (PDF) , NIST Special Publication 330, 2008 Edition, p. 32, 注 (f) Editors' note: Since the preferred unit symbol for the liter in the United States is L, only L is given in the table;
- ^ U.S. Government Publishing Office Style Manual U.S. Government Publishing Office, 2016, Abbreviations and Letter Symbols 9.56, pp. 236–237, 250. kL (kiloliter), mL (milliliter) などについても同様である。
- ^ Claude Émile Jean-Baptiste Litre (1716–1778) (PDF) reprinted from Chem 13 News, pages 1–3, April 1978
- ^ Chemistry International
- ^ New Scientist 4 Oct 1984
- ^ 小学校学習指導要領解説 算数編 (PDF) p. 41など
- ^ 教科書における単位記号の表記について 大日本図書 2011/06/01
- ^ 「リットル」の表記を「L」にするなど,単位記号の表記を変更した理由を教えてください。 東京書籍
- ^ 教科のQ&A 学校図書 Q2 リットルの単位の表記が大文字の「L」に変わったのはなぜですか?
- ^ 山梨県総合教育センター (PDF) (2014年6月2日時点のアーカイブ) p. 10、3 平成23年度使用教科書における計量単位の扱いについて。
- ^ 義務教育諸学校教科用図書検定基準 (2009年3月4日文部科学省告示第33号)別表 計量単位の項「(1) 計量単位及びその記号は、「計量法」(平成4年法律第51号)によること。ただし、当該計量単位の中に国際単位系(SI)の単位又はSIと併用される単位がある場合には、原則としてこれによること。 」
- ^ 義務教育諸学校教科用図書検定基準全部改正 新旧対照表 別表、計量単位の項
- ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数2上、p.76、2019年3月5日検定済、2021年3月10日発行、東京書籍、ISBN 978-4-487-10543-4、「mL の かわりに mlや mℓが つかわれて いたり, L の かわりに ℓが つかわれて いたりする ものも あるよ。」
- ^ 日本規格協会、7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化拡張漢字集合 JIS X 0213:2000、付属書7(参考)面区点位置詳説、1.3.7 単位記号a) p.307 「なお、この図形文字の追加は、単位の“リットル”を L (1-3-44, LATIN CAPITAL LETTER L, ラテン大文字L)又は l(ラテン小文字L)の立体又は斜体などで記載することを制限することを意図するものではない。」
- ^ Letterlike Symbols (PDF)
- ^ Mathmatical Alphanumeric Symbol (PDF)
- ^ 酒類の表示に関する説明事項(各品目共通) 酒類の表示方法チェックシート、国税庁
- ^ 酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律 e-Gov法令検索
- ^ 酒類の表示方法の届出について p.2、東京税関業務部収納課許可係、2022-04-01
- ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数2上、p.70、2019年3月5日検定済、2021年7月10日発行、東京書籍、ISBN 978-4-487-10543-4
- ^ 藤井斉亮・真島秀行ほか84名、新しい算数3下、p.4、2019年3月5日検定済、2021年7月10日発行、東京書籍、ISBN 978-4-487-11543-3
- ^ 計量実務事典、p.191、ISBN 978-4-474-05721-0、第一法規、2017-10-05初版
- ^ “CJK Compatibility” (PDF) (2015年). 2016年2月21日閲覧。
- ^ “The Unicode Standard, Version 8.0.0”. Mountain View, CA: The Unicode Consortium (2015年). 2016年2月21日閲覧。
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