エナガ 分類

エナガ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/05 11:38 UTC 版)

分類

A. c. europaeus
A. c. irbii
亜種エナガ
A. c. trivirgatus

エナガ Aegithalos caudatus は体の大きさ・体の各部の羽色の相違から20前後の亜種に分類されている[20]。以下の亜種の分類・分布は、IOC World Bird List (v10.1)に従う[3]。基亜種を除く日本に分布する亜種の分布・和名は、日本産鳥類目録 改訂第7版に従う[4]

Aegithalos caudatus caudatus (Linnaeus, 1758)
ヨーロッパ北部および東部からシベリアにかけて、日本、朝鮮半島
亜種シマエナガ A. c. japonicusシノニムとする説[注 4]もある[22]。シマエナガ(漢字表記:島柄長)[注 5][26][27]は日本では北海道に生息する[注 6][2]。本州以南に生息する3亜種とは異なり[6]、黒い眉斑[2](過眼線)がなく[28]、頭部全体が白い[2][6]。ただし、幼鳥はエナガと同様に眉斑などが褐色味を帯びるため、幼鳥の亜種間の区別は難しい[6]
Aegithalos caudatus alpinus (Hablizl, 1783)
アゼルバイジャン南東部、イラン北部、トルクメニスタン南西部
Aegithalos caudatus aremoricus Whistler, 1929
フランス西部
Aegithalos caudatus europaeus (Hermann, 1804)
フランス北東部・ドイツからイタリア北部・トルコにかけて
Aegithalos caudatus irbii (Sharpe & Dresser, 1871)
スペイン南部、ポルトガル、コルシカ島
Aegithalos caudatus italiae Jourdain, 1910
イタリア中部および南部、スロベニア南西部
Aegithalos caudatus kiusiuensis Kuroda, 1923 キュウシュウエナガ
四国九州[4]
胸の黒斑が薄い[14]
Aegithalos caudatus macedonicus (Salvadori & Dresser, 1892)
アルバニアギリシャから、ブルガリア・トルコ北西部にかけて
Aegithalos caudatus magnus (Clark, 1907) チョウセンエナガ
朝鮮半島、対馬壱岐[4]
Aegithalos caudatus major (Radde, 1884)
トルコ北東部、コーカサス
Aegithalos caudatus passekii(Zarudny, 1904)
イラン南西部、トルコ南東部
Aegithalos caudatus rosaceus Mathews, 1938
ブリテン諸島
Aegithalos caudatus siculus (Whitaker, 1901)
シチリア島
Aegithalos caudatus taiti Ingram, 1913
フランス南部および南西部から、スペイン中部・ポルトガルにかけ
Aegithalos caudatus tauricus (Menzbier, 1903)
クリミア半島
Aegithalos caudatus tephronotus (Gunther, 1865)
ギリシャ東部から、イラク北部・シリア・トルコ中部にかけて
Aegithalos caudatus trivirgatus (Temminck & Schlegel, 1848) エナガ
本州佐渡島隠岐[4]

日本産の亜種

日本ではシマエナガ(北海道[18] / 基亜種のシノニムとする説あり[22])・エナガ(本州など)・キュウシュウエナガ(四国および九州)・チョウセンエナガ(対馬など)4亜種が生息するが、北方系亜種であるシマエナガを除き、いずれも南方系の亜種である[18]。南方系3亜種の場合[18]、(成鳥の)亜種間の羽色にはほとんど差異はない[28]。また、幼鳥には亜種間の差異はほとんどない[10]

なお千葉県北西部を中心に、眉斑の色が淡い亜種シマエナガのような個体が見られる場合があり[注 7]、そのような個体は「チバエナガ」という通称で呼ばれる[30]。江戸時代中期の書物『観文禽譜』には「どろえなが」の名で「或云 形えながに似て 頭灰白 今此鳥を以て偽て島えながとなす 上総の産なり」という記述があり、エナガの変異個体である可能性も示唆されているが[31]、正体は不明である[30]


注釈

  1. ^ ただしヒマラヤ中央の高地を除く[8]
  2. ^ 山形則男 (2001) は「鳥の中で最も短い嘴をもつ」と述べている[16]
  3. ^ 尾の先は太めである[15]
  4. ^ シマエナガを基亜種 A. c. caudatus のシノニムとする学説[22]が提唱される以前には、基亜種をコウライシマエナガと呼称する場合もあった[23]
  5. ^ シマエナガの「シマ」は「縞」ではなく「島」(=限られた特定の地域、すなわち北海道)の意味[24]。また北海道産であることから「えぞえなが」、頭部が白いことから「わたぼうし」とも呼ばれる[25]
  6. ^ 「本州中部以北で記録されたこともある」とする文献もある[2]
  7. ^ 『日本鳥類目録』改訂第7版によれば、シマエナガは千葉県でも記録されているが「偶然飛来したもの」とされているため、日本野鳥の会千葉県支部はこのような個体はシマエナガとは別物という見解を示している[29]
  8. ^ 特に落葉広葉樹林や、針葉樹との混合林を好む[18]。特に林縁部や、クリナラマツの混交した二次林でよく見かける[18]
  9. ^ 数羽 - 約30羽前後の小群を作り、一定の区域内で行動する[6]
  10. ^ 夏の終わりごろには小型ツグミ類ムシクイ類サンコウチョウなどと混じって行動することもある[7]。ただし、長時間にわたり混群していることはない[6]
  11. ^ カイガラムシ[30]昆虫の卵[16]などやその幼虫も食べる[33]
  12. ^ クヌギなどの樹液を飲む[34]ほか、冬季はホバリングしながら、樹液が凍ってできた氷柱から樹液を舐めることもある[16]
  13. ^ クモの糸だけでなく、など虫の糸を用いる場合もある[18]
  14. ^ 巣について「低山の林内で地上から約2 - 5 mの高さの枝の上に巣を作る」[33]、「枝または幹に、蘚苔類をクモの糸で楕円形にまとめ、ウメノキゴケをはりつけた巣をとりつける」とする文献もある[9]。また、早春の寒い時期から繁殖を開始するため、保温性を高くする目的で[35]、巣の内部(産座)には各種の鳥の羽毛を多量に詰めており[33]、その枚数は1,000枚以上におよぶこともある[35]
  15. ^ 内径(産座)は約4×6nbsp;cm、深さは約3 cm[33]
  16. ^ 卵は長径約15 mm、短径約11 mmで、汚白色の地に淡紫色と淡赤褐色の微小斑がある[33]
  17. ^ 日中は雌のみが抱卵するが、夜は雄も抱卵を行う[11]。また、抱卵している個体は尾羽に曲がり癖がつく[36]

出典

  1. ^ a b c d BirdLife International. 2016. Aegithalos caudatus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T103871923A87471081. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T103871923A87471081.en. Downloaded on 14 June 2020.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 大西敏一 & 五百澤日丸 2014, p. 540.
  3. ^ a b c Bushtits, leaf warblers, reed warblers, Gill F, D Donsker & P Rasmussen (Eds). 2020. IOC World Bird List (v10.1). https://doi.org/10.14344/IOC.ML.10.1. (Downloaded 14 June 2020)
  4. ^ a b c d e 日本鳥学会 「エナガ」『日本鳥類目録 改訂第7版』日本鳥学会(目録編集委員会)編、日本鳥学会、2012年、282-283頁。
  5. ^ 柄長. コトバンクより2020年11月23日閲覧
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m 叶内拓哉 & 安部直哉 2015, p. 498.
  7. ^ a b c 叶内拓哉 2017, p. 306.
  8. ^ a b 五百澤日丸・山形則男(解説)『新訂 日本の鳥550 山野の鳥』(初版第1刷発行)文一総合出版〈ネイチャーガイドシリーズ〉、2014年3月10日、190頁。ISBN 978-4829984000 
  9. ^ a b c d e f 『鳥類』(初版第1刷発行)世界文化社〈改訂新版 世界文化生物大図鑑〉、2004年6月15日、242頁。ISBN 978-4418049028 
  10. ^ a b 叶内拓哉 2017, p. 307.
  11. ^ a b c d e f g h i j k l m 中川 (2010)、204頁
  12. ^ a b 叶内 (2006/3)、158頁
  13. ^ a b c 大橋 (2007)、34-35頁
  14. ^ a b c d e 岡田要内田清之助内田亨(著者代表。エナガの種解説は内田清之助)『新日本動物圖鑑』 下(9版発行)、北隆館、1988年5月10日(原著1965年1月25日(初版印刷))、644頁。 
  15. ^ a b c d e 高木清和 2000, p. 110.
  16. ^ a b c 山形則男(写真)『カラーポシェット 野鳥図鑑』(第1刷発行)日本文芸社、2001年3月25日。ISBN 978-4537200423 
  17. ^ a b c 真木 (2012)、213頁
  18. ^ a b c d e f g h i エナガ. コトバンクより2020年11月23日閲覧
  19. ^ 高田 (2008)、73頁
  20. ^ a b 安部直哉(解説)、叶内拓哉(写真)『野鳥の名前 名前の由来と語源』山と渓谷社〈山渓名前図鑑〉、2008年10月25日、69頁。ISBN 978-4635070171 
  21. ^ a b 国松 (1995)、142頁
  22. ^ a b c 浅井芝樹ほか 2016, p. 115,128.
  23. ^ edited by a special committee of the Ornithological Society of Japan (1958) (英語). A Hand-List of the Japanese Birds. Tokyo: Ornithological Society of Japan. p. 50. OCLC 1434704 
  24. ^ a b 叶内拓哉 & 安部直哉 2015, p. 499.
  25. ^ 菅原浩 & 柿澤亮三 1993, p. 216.
  26. ^ 菅原浩 & 柿澤亮三 1993, p. 559.
  27. ^ "島柄長". デジタル大辞泉. コトバンクより2020年11月23日閲覧
  28. ^ a b 大西敏一 & 五百澤日丸 2014, pp. 540–541.
  29. ^ Wanted! 顔の白いエナガを見ましたか? 皆さんの観察記録をお寄せください ~~~『ほおじろ』2016.4.巻頭言から~~~”. 日本野鳥の会 千葉県支部. 日本野鳥の会 (2016年4月). 2020年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月4日閲覧。
  30. ^ a b c 柴田佳秀、戸塚学(写真) 著、樋口広芳(監修) 編『街・野山・水辺で見かける野鳥図鑑』(第1刷発行)日本文芸社、2019年6月1日、179頁。ISBN 978-4537216851 
  31. ^ 菅原浩 & 柿澤亮三 1993, p. 321.
  32. ^ 中村 (1972)、464頁
  33. ^ a b c d e f g h 小海途銀次郎 2011, p. 172.
  34. ^ a b c 植田睦之(監修); 平野敏明(協力) (2014-07-25). 日本の野鳥 さえずり・地鳴き図鑑 (第1版・第1刷発行 ed.). メイツ出版. p. 19. ISBN 978-4780414622 
  35. ^ a b 石田光史 2015, p. 283.
  36. ^ 石田光史 2015, p. 282.
  37. ^ 上野 (2001)、83頁
  38. ^ 生田 (1989)、282-283頁
  39. ^ 赤塚隆幸 (2005). “エナガの卵や巣内ビナの捕食者”. Strix (日本野鳥の会) 23: 51-58. NAID 40006706765. 
  40. ^ 赤塚 (2005)、63頁
  41. ^ エナガ”. 日本のレッドデータ検索システム. EnVision環境保全事務所. 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典元の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。
  42. ^ エナガ”. 東京都レッドデータブック. 東京都 (2013年). 2020年11月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月30日閲覧。






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