揚げ餃子とは? わかりやすく解説

餃子

(揚げ餃子 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/08/13 05:16 UTC 版)

餃子(ギョウザ、ギョーザ、: 饺子: 餃子拼音: jiǎozi)は、小麦粉を原料とした皮で、エビ野菜などで作ったを包み、茹でる焼く蒸す揚げるなどの方法で調理した食べ物である。成形後の加熱調理方法の違いによって、水(茹で)餃子焼き餃子蒸し餃子揚げ餃子などと呼ばれる。

なお、餃子とワンタンの関係については複雑に交錯してきた歴史があり必ずしも区別できないという指摘がある[1](後述)。一方、餃子と肉まんの関係については、小麦粉をこねる過程で発酵を経たかどうかによるとされる[1]

歴史

中国の水餃子
中国のスープ餃子(日本では水餃子と呼ばれることも多い)

歴史は古く、中国大陸の春秋時代紀元前6世紀頃に現在の山東省で誕生したとされている[2]

1978年山東省滕州にある薛国の古城遺跡で発見された古墳からは、祭礼に用いられたと考えられる青銅器が発掘されたが、そこには白くて三角形の具を包んだ食品が整然と並んだ状態で見つかった[1]。この食品が餃子またはワンタンの祖型と考えられている[1]

餃子とワンタンはいずれも中国北方地方の小麦粉で作る食品に由来するが、複雑に交錯してきた歴史があり、両者をはっきりと区別できる情況にないとされる[1]。水餃子とワンタンの区別に関して、汁に浮かして食べるか否かとする考え方もあるが、これに対しては中国の陝西省にある「酸湯水餃」など水餃子を汁に浮かして食べる地域も多く区別する判断基準にならないと指摘されている[3]。比較的に餃子のポイントは具に置かれるのに対し、ワンタンのポイントはスープに置かれると説明されることもある[1]

餃子が徐々にワンタンと区別され、固有名詞として独立するようになったのはからの時代とされる[1]1972年トルファンアスタナの唐代の古墳から出土した副葬品の木製の椀からは半月型の餃子が発見されている[1]。歴史的に、餃子の呼称は時代や地域、製法、材料の違いなどによって区別され、交子、角子、角児、粉角、扁食、饂飩、餃餌、煮餑餑、水餃児などと表現された[1]。ただし、「餑餑」は北京では餃子を指すが、山東省では饅頭を指す場合にも用いられるなど呼称の用法には違いがある[1]

餃子の種類

焼き餃子
焼き餃子にあたるものは中国では「鍋貼」または「煎餃」と呼ばれている[3]。「鍋貼」と「煎餃」をはっきりと区別しない地域もあるが、南京市などでは「鍋貼」は生の餃子を油で揚げたもの、「煎餃」は茹でた餃子を油で焦げ目がつく程度に揚げたものとして区別している[3]
水餃子
中国では「水餃」と呼ばれている[3]
スープ餃子
日本では湯で煮込んで酢醤油や辛子醤油などで食べるものを水餃子、スープで煮込むものをスープ餃子と分けることがある[4]
蒸し餃子
中国では「蒸餃」と呼ばれている[3]
揚げ餃子

中華圏の餃子

餃子
繁体字 餃子
簡体字 饺子
発音記号
標準中国語
漢語拼音 jiǎozi
粤語
粤拼 gaau2 zi2
鍋貼
繁体字 鍋貼
簡体字 锅贴
発音記号
標準中国語
漢語拼音 guōtiē
粤語
粤拼 wo1 tip3
饺子(簡体字表記)
饺子
水晶蝦餃 (蒸饺)、中国の エビ入り蒸し餃子。
台湾などにある"焼き餃子"

中国においては、標準中国語の発音で「ジャオズ、チャオズ(ピン音jiǎozi)」といい、特に中国東北部(満洲)において水餃子(茹で餃子、満洲語ᡥᠣᡥᠣ
ᡝᡶᡝᠨ
, hoho efen)がよく食べられる。満洲族による清朝成立後に広く華北一帯に普及し、中華料理の代表的な料理の一つになった[2]

中国での主な形態は、茹で餃子(水餃)、蒸し餃子(蒸餃)、焼き餃子(鍋貼)の三種に大別されるという[3]

中国北部地域では水餃子(水餃)は日常食であるとともに年中行事や冠婚葬祭における特別な食べ物と認識されている[3]。一方で中国南部地域では儀礼食というより主食兼副食の食品として認識されている[3]

一方、焼き餃子に関して、中国北方では水餃子の残り物を翌朝に油で炒めて「煎餃」(焼餃子)としてとともに食べる文化があった[5]。そのためあまり客に出されるイメージではなかったが、後述の「日式餃子」の形で逆輸入されている[5]

縁起物

餃子はその発音が交子(を授かる)と同じであることや、代の銀子の形に似ていることから、縁起物としても食される[6]。また「交」には「続く、末永し」という意味もあり、春節には長寿を願い食され、大晦日(過年、guònián)には年越し餃子(更歳餃子、gèngsuì jiǎozǐ)を食べる[2]。また、皇帝も王朝と社稷の永続を祈願し、春節のときだけ餃子を食したという。ただこれは元来は北部の習慣である[注 1]元旦にも豊作を神霊に祈りつつ餃子が食される地域があり、儀礼食としても定着している[2]。地域によっては婚礼法要時にも食され、婚礼時には半月型の餃子を茹でて食されることが多い[2]

餃子の皮

餃子の皮は一般的に小麦粉に水と食塩を混ぜてこねた生地を用いる[3]。このほかに浮き粉(小麦粉澱粉)を使用したエビ餃子が広東地方から広まっている[3]

  • 山東省の黄河流域の一部の農村地域には雑穀の粉を使った餃子がある[3]
  • 内モンゴル自治区赤峰市には、そば粉を小麦粉に配合して蒸し餃子にする文化がある[3]
  • 甘粛省の一部地域では、トウモロコシの粉を小麦粉に配合して用いる[3]
  • 長江中流から下流域では米粉を使った餃子(米餃、餃巴、粉餃、米脚など)がある[3]
  • 上海市や南京市の周辺地域には「蛋餃」と呼ばれる卵餃子がある[3]。卵餃子は中国語で「蛋餃子(ダンジャオズ、dànjiǎozi)」とも呼ぶもので、小麦粉の皮の代わりに、薄焼き卵を使ったもの[7]

餃子の餡

中国では豚肉白菜を使った一般的なものの他に、たとえば下記の様な具が用いられる[2]。具材は地域によって大きく異なる[2]

餃子の形

一般的には円形の皮に餡を置いて二つ折りにした半月形である[3]

  • 山東省済寧市には花びら状のひだを付けた花辺型がある[3]
  • 山東省淄博市には半月形からさらに二つ折りにした元宝型がある[3]

他地域の文化からの流入

日式餃子
中国では日本食レストランなどで焼餃子が逆輸入され「日式」の餃子として認知されるようになった[5]。しかし中国でも受け入れられつつある日式拉麺などとは違い、皮が薄い日本式餃子をチャーハン唐揚げなどと一緒に提供する食べ方は、「日本発祥」という認識も相まって全く受け入れられていない。日式餃子を前面に出して2005年に中国に進出した餃子の王将も2014年に撤退を発表[8]した。
経典意式餃子(Flavour Ravioli)
ラビオリは本来はイタリア料理であるが、中国では「餃子」と意訳されたり、「経典意式餃子」として餃子をもって代用する料理例がある[5]

日本の餃子

日本の餃子は、日本で独自に変化したもの(日本式中華料理)で、焼き餃子が主流である。中国でも「鍋貼」と呼ばれる日本式焼き餃子と同じ調理法のものが一応は存在し、第二次世界大戦前の日本で出版された料理本にも「鍋貼」が掲載されている。例えば中村俊子『家庭でできるおいしい支那料理』(P183、富文館、1927年)に「鍋烙餃子」(焼餃子)の作り方がある。中国東北部(かつての満洲)では蒸し餃子が主流で、古くなった餃子は油で炒める習慣があり、それは日本式の焼き餃子に似るが、あくまで「残り物」の処理方といった位置付けである(中国では茹でた水餃子が主流)。日本の餃子は具材や調理法も中国で主流のものと異なる[2]

餃子の伝播

餃子状食品

中国食文化調査を行った文化人類学者に石毛直道がおり[9]、石毛は「餃子状食品」について1.マントウ(饅頭)、2.ボーズ(包子)、3.モモの3系統に分類した[3]

  1. マントウ(饅頭)
    朝鮮半島のマンドゥ、中国新疆ウイグル自治区のマンタ、トルコマントゥ、ウズベキスタンのマントゥイなどがこれに含まれる[3]
    朝鮮料理では、餃子に極めて類似した「マンドゥ만두(饅頭))」が存在する。「クンマンドゥ(군만두(군饅頭)[注 2])」は、中国の「鍋貼」や日本の焼き餃子に近いもので、「ムルマンドゥ(물만두[注 3])」は水餃子と同様に茹でたものである。具材にはダイコン、豚肉、ニラ、キムチ豆腐春雨などが使われる[10]
  2. ボーズ(包子)
    モンゴルの水餃子バジンなどがこれに含まれ、中国の「扁食」に由来するという[3]包子も参照。
  3. モモ
    チベット高原ネパールにみられる餃子状の食品及び具のない饅頭状の食品がこれに含まれるという[3]モモも参照。

プラットフォーム料理

餃子は具材や調理法がアレンジしやすいため「プラットフォーム料理」と呼ばれている[3]。中国発祥の餃子は日本の焼き餃子の形でフランスに持ち込まれたが、焼き餃子のほうが水餃子に比べて機械で作りやすく、調理時間が短いため、欧米の飲食店で導入しやすかったためとされる[3]

フランスでは日本人シェフがプロデュースした餃子専門店が「餃子バー」として出店している[11]

関連する料理

デザート餃子
最近ではフルーツやお菓子などが餃子のタネとして使われたりトッピングされたりするデザート餃子というものがある[12]
餃子鍋
具材のメインとして餃子を用いた鍋料理[13]2010年冬シーズンの鍋料理市場において注目されるメニューとなっている[14][15]。通常の餃子は長時間煮込むと煮崩れしやすいため[14][16][17]、皮の耐久性を高めた鍋専用餃子が開発され飲食店で使用している[14]。家庭で餃子鍋を作る際、市販されている焼き餃子を鍋に使用すると皮の状態によって、煮崩れしやすくなるため、その対策として餃子に片栗粉をまぶすことで皮の耐久性を高める方法が考案されている[16]

餃子が関係する作品

脚注

注釈

  1. ^ 地域によって南部などでは(年糕、niángāo、年糕、niángāo、)が食される。
  2. ^ 군は구운(焼き)の短縮形。
  3. ^ 물は水を意味する。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 周星「餃子: 儀礼化された民俗食品及びその象徴した意義」『文明21』第17号、愛知大学国際コミュニケーション学会、2006年12月、15-35頁。 
  2. ^ a b c d e f g h 于亜「中国山東省における餃子食の意味と地域的特質」『人文地理』第57巻第4号、人文地理学会、2005年、396-413頁、doi:10.4200/jjhg1948.57.396ISSN 0018-7216 
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x 甘靖超「中国の「餃子」食文化研究の成果と課題」『名古屋大学人文学研究論集』第5巻、名古屋大学人文学研究科、2022年3月31日、319-334頁。 
  4. ^ わたしのこだわり - 東都生活協同組合、2025年8月13日閲覧。
  5. ^ a b c d 岩間 一弘「上海の日本食文化─メニューの現地化に関するヒアリング調査報告─」『千葉商大紀要』第51巻第1号、千葉商科大学商経学部、2013年9月、1-54頁。 
  6. ^ 大沼聡子. “あの形には理由があった!中国では「餃子」が正月祝いの縁起物とされるワケ”. サライ. 2020年11月7日閲覧。
  7. ^ 中国のおばあちゃんが作る『卵餃子』の動画が美味しそうだしほっこりするしで思わず笑顔になるみなさん「丁寧な料理だなぁ」”. togetter (2019年10月12日). 2020年11月7日閲覧。
  8. ^ 餃子の「王将」中国から撤退へ「日本流受け入れられなかった」産経新聞(産経WEST)2014年10月31日、2019年12月1日閲覧。
  9. ^ 中国食文化調査 1982.6-1983.3 - 石毛直道食文化アーカイブス、2025年8月13日閲覧。
  10. ^ 李信徳 (2001). 韓国料理 伝統の味・四季の味. 柴田書店. p. 115. ISBN 4-388-05895-5 
  11. ^ 「フランス・パリに行列ができる餃子レストランが登場 / 本当に美味しいのか食べに行ってみた」 - ロケットニュース24エキサイトニュース(2012年6月18日)2019年12月2日閲覧
  12. ^ ““デザート餃子”は安うまB級グルメとスイーツの魅惑の出会い!”. ウォーカープラス. https://www.walkerplus.com/article/12611/ 2020年11月7日閲覧。  {{cite news}}: CS1メンテナンス: 先頭の0を省略したymd形式の日付 (カテゴリ)
  13. ^ 餃子鍋レシピ(クッキングノート)2019年12月2日閲覧
  14. ^ a b c 「今冬の注目は餃子鍋? 鍋専門店のメニューに続々登場」 J-CASTニュース(2010年10月15日)2019年12月2日閲覧
  15. ^ 2010年冬の“鍋”は、バリエ豊かな「餃子鍋」が大本命! 東京ウォーカー (2010年10月24日)
  16. ^ a b 2010年11月1日放送『DON!』(日本テレビ)特集「2010年 DON!オススメ!この冬絶対はやる鍋!!」 [リンク切れ]
  17. ^ 水餃子鍋 レシピッタ(サントリー)2019年12月2日閲覧

参考書籍

関連項目

関連食品

揚げ餃子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 07:18 UTC 版)

餃子」の記事における「揚げ餃子」の解説

揚げ焼売と同様日本ではなじみ深いが、中国見かける機会多くない。ただし、この調理法による料理中国にも存在しており、それが日本伝わったのか日本独自に発展したものかは定かではない

※この「揚げ餃子」の解説は、「餃子」の解説の一部です。
「揚げ餃子」を含む「餃子」の記事については、「餃子」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「揚げ餃子」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「揚げ餃子」の関連用語

揚げ餃子のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



揚げ餃子のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの餃子 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの餃子 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS