2.「東アジアの伝統文化国際会議」
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「岡田武彦」の記事における「2.「東アジアの伝統文化国際会議」」の解説
平成6年(1994年)4月8日から10日の3日間、国内外60数名の学者を集めて開かれた。主催は「同実行委員会」、共催は「福岡市・西日本新聞社」であった。 ☆初日の8日は福岡市中央市民センターで開かれ、開会挨拶で岡田武彦実行委員長は、「まもなく20世紀が終わろうとしている今日、世界は政治的、経済的、文化的に激しく揺れ動いている。我々は、伝統文化・思想をもう一度学び直すことによって、人類の未来を切り拓いていく何ものかをそこから探すことができるかどうか。伝統思想を今日に新しく生かす方法を見いだすことができるかどうか。今回の国際会議は、このような重大かつ切実な課題を担っている。」と述べた。当日のテーマは「貝原益軒を考える」で、先ず岡田会長開会挨拶のあと。W・T・ド・バリー(コロンビア大学名誉教授)が「世界的に評価を受ける貝原益軒」と題して通訳付きで基調講演。つづいて「シンポジウム」に移り、司会は源了圓(元東北大学名誉教授)、パネリストに井上忠(元福岡大学教授)・原敬二郎(恵光会 原病院院長)・木下勤(温和堂木下クリニック院長)・板坂耀子(福岡教育大学教授)の日本側4名と、アメリカ M・E・タッカー(バックネル大学教授)という豪華メンバーで、シーボルトから東洋のアリストテレスと称えられ、地元福岡が生んだ養生の神様ともいうべき「貝原益軒」について、それぞれのパネラーから発表があり、益軒の偉大な業績を語り、今に生きる意義を学び今後の指針とした。 ☆2日目も同会場で、岡田委員長が「日本文化と簡素の精神」と題し講演。日本には古来から「簡素の精神」があり、簡素になればなるほど内的精神は豊かになり、深くなる」ということを、例をあげて簡潔に話した。(詳しくは自著『簡素の精神』=致知出版社発行を参照)このあと三つの分科会に分かれて、それぞれに研究発表と討論が行われた。以下に各テーマと発表者の氏名を記しておく。 第一分科会 中庸の解釈をめぐって 金谷 治(東北大学名誉教授) 「心遠考」─宋代新儒家の意識構造に関する一考察 佐藤 仁(久留米大学) 宋明の道学詩について 福田 殖(九州大学) 岡本監輔の思想について 町田三郎(九州大学) 明中葉以後の反伝統思想 李 焯然(シンガポール大学) 黄梨洲の陽明学に対する批判と理論的訂正 呉 光 (浙江省社会科学院) 乾嘉学派と清代の実学 葛 栄晋(中国人民大学) 熊十力の清代考証学に対する批判 林 慶彰(台湾中央研究院) 明代庶民儒者顔鈞とその大中思想 黃 宣民(北京社会科学院) 曾點楽から狂禅の風へ 古 清美(台湾大学) 第二分科会 中国の公と日本の公 溝口雄三(大東文化大学) 清末民国初の思想的展開─伝統と近代─ 河田悌一(関西大学) 中国商人倫理思想の現代的意義 川勝 守(九州大学) 近代儒学と中華文化 徐 遠和(中国社会科学院) 無と自然─中国道家思想の考察─ 戴 璉璋(台湾中央研究院) 論語版本源流考 昌 彼得(台湾故宮博物院) 四庫全書と中国伝統文化 呉 哲夫(台湾故宮博物院) 明宣宗歴代臣鑑の文化史上における意義 趙 令揚(香港大学) 王陽明と道家 泰 家懿(トロント大学) 荀子の孟子批判の要因 ─子思・孟子の五行説に関する新解釈─ 黃 俊傑(台湾大学) 南宋における太上感応説と民衆道徳について 朱 栄貴(台湾中央研究院) 第三分科会 明代儒学の回顧と展望 余 英時(プリンストン大学) 毛沢東における伝統文化の継承に関する分析 劉 述先(香港中央大学) 陳白沙から王陽明へ 羌 允明(マケリー大学) 孔子仁学の歴史的発展と現代的意義 歩 近智(北京社会科学院) 仁義道徳と二十一世紀 高 令印(厦門大学) 四海一家─儒教エコロジーについて─ R・L・テーラー(コロラド大学) 儒家の現代的意義 柳 存仁(オーストラリア大学) 儒家人文精神の現実化 王 邦雄(台湾中央大学) 中国伝統文化の自然に対する重視と擁護 鄭 良樹(香港中央大学) ☆3日目はNHK福岡放送センタービルに移り、2日目と同様三つの分科会に分かれて、それぞれの研究発表・討論であった。 第一分科会 中国伝統宗教の転機 福井文雄(早稲田大学) 木陳道忞の著作について 野口善敏(長性寺) 儒教的資本主義の精神 金 日坤(釜山大学) 批判的継承と創造的発展 ─伝統的儒教者と現代化課題について─ 傳 偉勲(テンプル大学) 中国伝統倫理思想とその基本的特徴 王 鳳賢(浙江省社会科学院) 中国伝統の展開 龔 鵬程(台湾中正大学) 儒家思想とその現代的意義 陳 来 (北京大学) 荀子礼楽論の解明 楼 宇烈(北京大学) 大同思想の理論的価値と実践的意義 周 桂鈿(北京師範大学) 第二分科会 朝鮮の儒学者炳憲の儒教復興論 坂出祥伸(関西大学) 李退渓の書院観 朴 洋子(江陵大学) 趙重峰『東還封事』の改革主義と民本思想 安 炳周(成均館大学) 道教─言葉からの解放─ M・ミルシンスキー(リュブリアナ大学) 新儒家の歴史観─胡宏を例として─ C・シロカウエル(ニューーヨーク私立大学) 中国古代哲学思想と文芸思想の関連 張 少康(北京大学) 関漢卿の歴史劇について 曾 永義(台湾大学) 宋代の仏教文学 黃 啓江(ホーバードアンドウィリアムス大学) 貝原益軒の大疑録 黃 錦鋐(台湾師範大学) 貝原益軒と朱熹の「理」思想の比較 李 甦平(中国人民大学) 第三分科会 人文世界と当代新儒学の再建 成 中英(ハワイ大学) 「継往開来」から見た当代新儒家の学術的功績 蔡 仁厚(台湾東海大学) 中国伝統文化の精髄─和合学─ 張 立文(中国人民大学) 中国の伝統的方志学と東方の文化 陳 捷先(台湾大学) 中国戯曲の戯変から見た中国思想文化の展開 金 学主(ソウル大学) 儒家倫理における現代の道徳的危機 L・ヴァンデルメルシュ(パリ大学) 竹内好のアジア現代文化と現代主義の批判倫理 H・D・ハラチュニエン(シカゴ大学) 儒教倫理説の現代における再構成 尹 絲淳(高麗大学) この折りの論文は、台湾の正中書局から『東亜文化的探求─伝統文化的発展─』と『同─近代文化的動向』の二冊として刊行された。(『光風霽月』岡田武彦先生追悼文集─528頁・町田三郎文引用)
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