額
★1a.特別な人物であることを示す印が、生まれつき額にある。
『熊野の御本地のさうし』(御伽草子) 摩訶陀(まかだ)国の善財王の后せんかう女御は、他の后たちの讒言によって、山中に追われ、斬首される。その折、女御は王子を産み落としたが、王子の額には「米」の字が3つ並んでいた。王子は、山の動物たちに育てられる。7歳の時、王子は都へ上り、父善財王と対面した〔*類話の『神道集』巻2-6「熊野権現の事」では、王子の額の文字についての記述がない〕。
『ガリヴァー旅行記』(スウィフト)第3篇第10章 「私(ガリヴァー)」は、飛ぶ島ラピュータからイギリスへ帰国する途中、ラグナグ国を訪れた。その国では、左眉のすぐ上の額に、赤くて円い斑紋のある子が、稀に生まれる。これこそ、その子が不死である印である→〔不死〕2a。
『オズの魔法使い』(ボーム) オズの魔法使いに会うため、ドロシーは旅に出る。道中危険にあわぬよう、良い魔女が額に口づけをしてくれる。額には、その跡が丸く輝いて残る。悪い魔女がドロシーを殺そうとするが、額のしるしを見て、手出しできないことを悟る〔*ドロシーがバケツの水をかけると、それが悪い魔女の弱点だったので、悪い魔女は溶けてしまう〕。
『神曲』(ダンテ)「煉獄篇」第9歌 煉獄の山を登ろうとする「私(ダンテ)」の額に、天使が剣の先で、罪をあらわすPの字を7つきざむ。山を登るにつれて、Pの字は1つずつ消えていく。
『天路歴程』(バニヤン)第1部 滅亡の市(ほろびのまち)に住む男・クリスチャンは、背中に重荷(=原罪)を負い、救いを求めて巡礼の旅に出る。十字架のある所まで来ると背中の重荷は落ち、天使が彼の額に印をつける〔*しかしクリスチャンの旅はまだその行程の半分にも達せず、目的地・天の都に着くまでに、彼は多くの困難に遭う〕。
『百年の孤独』(ガルシア=マルケス) アウレリャーノ・ブエンディーア大佐の17人の息子たちの額に、神父が灰で十字の印をつける。洗っても、その印は消えない。まもなく彼らはテロによって次々に殺され、その時生き残ったただ1人も、数十年後に射殺される。
『ヨハネの黙示録』第5~7章 キリストの化身である小羊が、世界の破滅をもたらす巻物の封印を次々に解いてゆく。最後の第7の封印を解く前に、天使が、イスラエルの12部族から1万2千人ずつ、計14万4千人の額に神の刻印を押す〔*彼らは生き残り、新しいエルサレム(神の国)に入ることが許される〕。
『ヨハネの黙示録』第13章・第17章 世界の終末の時、悪魔である龍が、2匹の獣を人間たちのもとへ送る。獣を拝み従う者たちには、その右手か額に刻印が押される。刻印は獣の名、あるいはその名の数字である。数字は人間を指し、「666」である。また、荒れ野に赤獣にまたがる1人の女がおり、額には秘められた意味の名が記されている。それは「大バビロン、みだらな女たちや、地上の忌まわしい者たちの母」という名である。
*→〔さすらい〕2の『創世記』第4章・〔目印〕1の『エゼキエル書』第9章。
★2b.悪魔の子ダミアンの「666」は、頭部にしるされている。
『オーメン』(ドナー) ダミアンを育てる外交官ロバートに、悪魔払い師が「ダミアンは悪魔の子だから、身体のどこかに『666』のしるしがあるはずだ」と教える。身体のどこにも、しるしは見当たらないので、ロバートは、眠るダミアンの髪を刈る。すると頭部に「666」のしるしがあった。
★3.処罰として、額に傷をつける。
『山椒大夫』(森鴎外) 安寿と厨子王は、ある夜、同じ時に同じ夢を見た。それは、「山椒大夫の息子三郎が、焼け火筋(ひばし)を安寿と厨子王の額に十文字に当てたが、2人が守り袋の地蔵尊を拝んだら、創(きず)はあとかたもなく消えた」というものだった。目覚めた2人が地蔵尊の額を見ると、白毫(びゃくごう=眉間にある毛)の右左に、鏨(たがね)で彫ったような十文字の疵ができていた。
*『さんせう太夫』(説経)では、夢でなく現実に焼き金を当てられる→〔火傷(やけど)〕3。
*額に十文字の黥(いれほくろ=入れ墨)→〔いれずみ〕2の『南総里見八犬伝』第9輯巻之5第100回~巻之9第109回。
『旗本退屈男』(佐々木味津三) 早乙女主水之介(さおとめもんどのすけ)は、直参旗本で禄高1200石。31歳の時、「長藩七人組」と称する剣客団と闘い、全員を斬り伏せた。それを記念するかのごとく、彼はその折、眉間に三日月形の3寸余りの刀傷を負った。主水之介は、たちまち江戸府内に驍名を馳せたが、時は天下泰平の元禄時代で、剣の腕をふるう機会はめったになく、彼はいつも退屈を持て余していた。
『愛と誠』(梶原一騎/ながやす巧) 昭和39年(1964)冬。財閥の1人娘で小学校入学間近の早乙女愛は、スキーをしていて谷底へ滑落しそうになる。山小屋の管理人の子・小学2年生の太賀(たいが)誠が愛を助けるが、その時、愛のスキーの先端が誠の額をえぐり、三日月形の大きな傷跡が残った。昭和47年(1972)夏、名門青葉台学園中等部3年の愛は、不良高校生となった誠と再会する→〔恩返し〕2。
*『愛と誠』は、太賀誠が早乙女愛の命を救い、額に傷を負うところから物語が始まるが、同じ梶原一騎原作の『タイガーマスク』では、伊達直人が少年の命を救い、トラックにはねられるところで物語が終わる→〔面〕8。
『春琴抄』(谷崎潤一郎) 雑穀商美濃屋の倅(せがれ)利太郎は、春琴の美貌目当てで琴三味線を習いに来ていた。彼は稽古に身を入れず、春琴がいくら熱心に教えても、気のない弾き方をする。ついに春琴は利太郎を叱責して撥(ばち)で打ち、彼の眉間の皮を破ってしまった。利太郎は額から滴る血を押し拭い、「覚えてなはれ」と捨て台詞を残して去った〔*それから1ヵ月半の後、何者かが春琴の顔に熱湯をかける。利太郎以外にも春琴を憎み、あるいは妬む者は多く、犯人は誰ともわからなかった〕。
『宇治拾遺物語』巻1-5 額に2寸ほどの傷のある山伏が、「ここに『随求陀羅尼(ずいぐだらに)』を籠めてある」と言うので、皆が尊んだ。ある人が、「この山伏は人妻と関係したために、その夫に追われ、鍬で額を打ち破(わ)られたのだ」と暴露すると、山伏は「その時に籠めたのだ」と強弁した。
『方丈記』 養和年間(1181~82)、飢饉で多くの人が死んだ。仁和寺の隆暁法印が、死者の頭を見るたびにその額に「阿」字を書き、仏縁を結ばせた。京の一条以南・九条以北・京極以西・朱雀以東の、路傍にあった死者の頭の数は、4万2千3百余りだった。
★6.額から神や人が誕生する。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第1巻第3章 プロメテウス(一説によればヘパイストス)が、ゼウスの額を斧で撃った。そこから、女神アテナが武装した姿で生まれ出た。
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