消防法施行令の一部改正とは? わかりやすく解説

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消防法施行令の一部改正(政令第411号)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 22:45 UTC 版)

千日デパート火災」の記事における「消防法施行令の一部改正(政令411号)」の解説

1972年昭和47年12月1日消防法施行令一部改正する政令公布された(政令411号・第17改正)。施行1973年昭和48年6月1日で、一部公布日に施行された。本件火災では、火災発生報知情報がプレイタウン滞在者に伝わらなかったことで多数逃げ遅れにつながったこと、管理権原者および防火管理者責務役割不明確部分があったため、避難誘導防火管理不手際につながったこと、また安全な避難口(B階段)の場所がプレイタウン滞在者には分からなかったことなどにより、多大な人的被害出したことへの教訓活かすため、これらを重点的に見直内容となった。この政令は、消防用設備のうち「自動火災報知設備」については既存不適格防火対象物においても「遡及適用対象となったことから画期的な政令とされ、消防関係者の間では「千日政令」と呼ばれた改正おもな内容を以下にまとめた。 防火管理に関する事項 1.防火管理者定めるべき防火対象物規定強化した劇場キャバレー飲食店百貨店ホテル病院サウナなどの特定防火対象物用途使われる部分存在する複合用途防火対象物で「収容人員30人以上」の防火対象物は、防火管理者定めなければならないとされた。従来は「収容人員50人以上」となっており、不特定多数の人を収容する施設身体的弱者多く収容する施設について、より規定厳しくした。 2.防火管理者資格明確化した。防火管理者業務遂行するには、防火に関する知識有している必要があり、管理権原者との間で連携取れてなくてはならない防火管理者資格有しているものは、管理する防火対象物において、適切に業務行え管理的または監督地位にあることと定められた。従来防火管理者資格定義されていなかった。 3.管理権原者および防火管理者責務強化した防火管理者は、防火管理上の業務を行うときは、管理権原者指示判断求めなければならないとされた。また管理権原者は、防火管理者に対して必要な指導監督行い防火管理者業務実施させる責務を負うとされた。従来防火管理者責務として「誠実にその職務遂行しなければならない」としか条文書かれていなかった。また管理権原者防火管理者対す指導監督役割明確化した。また防火管理者は、省令定めにより消防計画作成し、それに基づき消火通報避難訓練定期的に実施しなければならないとした。従来は「省令定めに」という部分抜けていた。この条項政令公布日(1972年12月1日)に施行された。 4.共同防火管理要する防火対象物範囲拡大した劇場キャバレー飲食店百貨店ホテル病院サウナなどの特定防火対象物使われる部分がある複合用途防火対象物は、地下除いて階数が3以上のものが共同防火管理が必要とされた。従来は「地下除いて階数が5以上」とされていて、以前よりも範囲拡大し基準厳しくした。不特定多数の人を収容する施設身体的弱者多く収容する施設対象とした。 防炎防火対象物に関する事項省略) 「防火対象物#防炎防火対象物」も参照 消防用設備に関する事項 1.スプリンクラー設備(ア)特定防火対象物のうち平屋建て以外の防火対象物床面積が6,000平方メートル上のものには、スプリンクラー設置しなければならないとされた(自治省令で定め部分を除く)。従来は、百貨店などの建物で、売場面積合計が9,000平方メートル以上かつ4階以下、または6,000平方メートル上の場合5階上の建物対象とされていたが、階数規定をなくし、より設置基準厳しくした。また平屋建てについては避難が容易であることから設置対象から外した。(イ)特定防火対象物使用する部分がある複合用途防火対象物で、特定防火対象物用途使われる部分床面積合計が3,000平方メートル上の階のうち、当該部分がある階全体スプリンクラー設置義務づけられた。従来は、雑居ビルなどの場合用途ごとに防火対象物基準適用してスプリンクラー設置有無決めていたが、複合用途防火対象物は、使用時間が用途によって異なること、防火管理別々に行われること、また不特定多数不案内な人たちが多く利用することを考慮し設置基準をより厳しくした。該当部分だけにスプリンクラー設置したのでは消火効果十分に発揮できないこともあり、該当する全体設置するよう改められた。(ウ)防火対象物11階上の階にはスプリンクラー設置義務づけられた。従来は、11階上のに関して特定防火対象物防火区画された部分以外の面積100平方メートル超える場合設置義務があったが、高層階消防活動困難なことから、防火区画建築基準如何にかかわらず設置義務づけた。またスプリンクラーヘッドの技術基準強化された。 2.自動火災報知設備(ア)百貨店飲食店など特定防火対象物延べ面積300平方メートル以上に自動火災報知設備設置義務づけられた。従来は、500平方メートル設置義務があったが、不特定多数利用者出入りする建物については、火災早期発見および早期通報が重要であるとして基準強化された。千日デパート火災においては火災報知通報情報伝達早期になされなかったことで多数死傷者を出すに至っている。(イ)複合用途防火対象物延べ床面積500平方メートル以上かつ当該部分床面積300平方メートル上のものは、自動火災報知設備設置義務づけられた。(ウ)防火対象物11階上の階に設置義務づけた。自動火災報知設備基準に関しては、劇場キャバレー飲食店百貨店病院社会福祉施設サウナおよび特定防火対象物用途使われる部分がある複合用途防火対象物については、既存建物においても「遡及適用」の対象とされた。この基準1975年昭和50年12月1日から施行するとされ、設置完了までの猶予期間設けられた。 3.漏電火災警報器特定防火対象物用途使われる部分がある複合用途防火対象物について、延床面積500平方メートル以上かつ当該部分床面積合計300平方メートル以上、契約電流50アンペア超える複合用途防火対象物漏電火災報知器設置義務づけた。従来は、複合用途防火対象物については、「それぞれの用途に対して適用されいたもの用途問わず50アンペア超える場合には設置義務づけていた。 4.非常警報設備不特定多数収容する施設においては火災発生時に避難円滑に行われなければならない観点から、音声による誘導が必要であるとし、放送設備設置義務づけられた。対象となったのは複合用途防火対象物収容人員500人以上のもの。劇場キャバレー百貨店飲食店サウナ公衆浴場収容人員300人以上のもの。寄宿舎共同住宅学校図書館美術館収容人員800人以上のもの。 5.避難器具(ア)防火対象物3階上の階のうち、避難階または地上直通する階段が2以上設けられていない階で、収容人員10人のものには避難器具設置義務づけた。これは、いわゆるペンシルビル」の避難対策新設された。(イ)避難器具設置および維持に関する技術基準強化された(詳細省略)。 6.誘導灯および誘導標識(ア)特定防火対象物使われる部分がある複合用途防火対象物避難口誘導灯通路誘導灯客席誘導灯および誘導標識設け場合は、建物全体誘導灯設置するように義務づけられた。従来は、用途ごとに設置基準定められていたが、避難一体的に行う必要があることから改められた。(イ)「避難口」を明示した表示認められることになった従来誘導標識は「避難する方向明示するもの」と定められていた。本件火災被害拡大一因として、唯一の安全な避難階段であるB階段避難口の場所が分からず、ほとんどのプレイタウン滞在者が脱出できなかったことへの教訓である。 7.適用除外されない消防用設備消防法第十七条の二第1項定め消防用設備等のうち、自動火災報知設備に関しては、当該規定適用する防火対象物特定防火対象物新たに加えた従来旅館ホテル宿泊所、病院療養所文化財だけが適用対象とされていた。 消防法施行令・別表第一に関する事項 従来複合用途防火対象物16項」を「16項(イ)」と「16項(ロ)」に区分した千日デパートのような特定防火対象物用途使われる部分がある複合用途建物いわゆる雑居ビル)は、建物不慣れな不特定多数人々利用するため、火災発生した場合避難困難になるおそれがあり、危険度がきわめて高いことから「16項(イ)」を新たに作り分類し直した従来の「住居店舗」または「住居倉庫」を想定した複合用途防火対象物は「16項(ロ)」とした。 従来の「16項」の条文は、「前各項(1項から15項)に掲げ防火対象物以外の防火対象物で、その一部が前各項に掲げ防火対象物用途いずれかに該当する用途供されているもの」とだけ書かれており、「16項(イ)」は、新たに「前各項に掲げ防火対象物以外の防火対象物のうち、その一部が前各項に掲げ防火対象物用途いずれかに該当する用途供されているもので、1項から4項まで、5項(イ)、6項または9項(イ)に掲げ防火対象物用途供される部分存するもの」と定義され、「雑居ビル」および「商業ビルなどの大規模な複合用途」という概念明確化された。「防火対象物#令別表第一」も参照

※この「消防法施行令の一部改正(政令第411号)」の解説は、「千日デパート火災」の解説の一部です。
「消防法施行令の一部改正(政令第411号)」を含む「千日デパート火災」の記事については、「千日デパート火災」の概要を参照ください。

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