自治体および消防当局の対応
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「千日デパート火災」の記事における「自治体および消防当局の対応」の解説
全国消防長会総会、再発防止について議論 5月18日、東京・五反田で第24回全国消防長会総会(総会)が開かれ、火災の再発防止に向けて至急取り組むべき課題が議論された。本件火災に基づいて国に要望すべき事項とされたのは以下のとおりである。 防火管理責任体制および規定の強化 高層ビルと地下街における業種別の用途制限ならびに可燃物量を階ごとに制限 内装の不燃化基準強化 防火区画、排煙設備等の基準強化 避難経路の安全確保のため屋外階段またはバルコニーやタラップ設置義務の強化 災害発生時に作動する非常扉の自動閉鎖装置取付 既存建物に対するスプリンクラー設備や自動火災報知設備、避難設備などの消防用設備等の遡及適用および設置基準の強化 消防設備士の業務範囲拡大 総会において、これらについて提案がなされ、関係法令の改正を自治省消防庁を通じて関係省庁に要望することが緊急決議された。1972年(昭和47年)8月31日、全国消防長会会長から自治省消防庁長官に対して、政令強化についての要望書が提出された。その後、総会の要望書は自治省消防庁で検討が重ねられ、関係各省庁間の折衝を経て12月1日に消防法施行令の一部改正が公布され実現するに至った。 大阪市、地下街の防災面を緊急総点検 大阪市建築局は、6月12日から1週間掛けて、大阪市内の地下街9か所すべてで総点検を行った。これは建設省や行政監察局が全国の雑居ビルや地下街などの不特定多数が利用する施設に対して、防災面や運用面などの調査を行う動きに合わせて実施されたものである。総点検の重点項目は「防火区画や防煙区画の実態とその改善策」「非常口や階段の状況」「店舗や地下道における可燃物使用の実態」で、点検の結果によって著しく危険だと判断された場合は改善勧告を出す、とした。 大阪市消防局は、6月21日朝8時から難波の地下街「虹のまち」で市消防局員40人と同地下街の自衛消防隊員ら100人も参加して防火設備の点検を行った。テナントの喫茶店の厨房で発煙筒を10本焚き、煙を発生させて設備の作動状況を確認した。発煙30秒後に煙感知器が作動し、防火シャッターが自動で降下、排煙装置も正常に作動した。更に15分後、防火シャッターを開けると内側に煙が滞留しており、煙の流出を防ぐことが確認できたが、煙の排出までに30分を要した。また停電状態にして非常照明の点灯試験も実施され、バッテリーが機能して地下街を明るく照らす様子が確認された。ミナミの「虹のまち」に関しては1969年の建築基準法改正以降に造られた地下街ということで消防用設備も含めて新しい基準が採用されており、点検の結果は「及第」だと評価された。 地下街は、雑居ビルよりも災害発生時の危険度が特段に高いとされ、「雑居ビルの横倒し版」だと形容されている。雑多なテナントが地下の狭い閉鎖空間に密集して営業し、地上への連絡口は階段のみに頼っていることからも、ひとたび地下で火災が起これば利用者は煙に巻かれて地下空間に閉じ込められ大混乱を起こし、雑居ビル火災の比ではないほど人的被害は甚大になると予測されている。その懸念は、千日デパートビル火災が起こる以前から建築や防災の専門家らによって示されていた。大阪市内には1972年の時点でキタとミナミを中心に大規模な地下街が造られており、特にキタの「旧ウメダ地下街」に該当する部分が防災上において問題を抱えていると指摘されていた。右地下街が戦中の1942年(昭和17年)に造られた地下通路を基に発展したことにより、迷路のように複雑な形状をしていることで空間の把握が難しく、地上と連絡している階段の数が不足していることやスプリンクラー未設置など、防災面の充実が図られていない問題があった。また管理体制が「35」の責任組織に分かれており、通報や避難誘導に関して一元的に行える設備が無いなど、災害時の安全面に対して日本科学者会議などで構成される「地下街問題研究会」の識者から問題が指摘された。大阪市の管理体制も杜撰だと指摘され、道路建設局や土木局などが防災面に関して運営側との間で管理体制の連携を築けておらず、指導監督面での不安も覗かせた。緊急の提言としては「大阪市による一元的な管理体制を取ること」「危険性のある地下街をこれ以上造らないこと」「旧ウメダ地下街については、追加で新しい階段を14か所設置し、7か所の階段を拡幅すること」「地下街の防災問題を調べるための調査研究機関の設置」などが出された。この提言を受けて「旧ウメダ地下街」は、早急に誘導灯45個を取り付けた。今後は更に誘導灯や誘導標識を増設し、階段の増設や排煙装置の設置を検討するとした。また大阪市では、総合計画、土木、建築、消防の各部局が集まって「地下街問題協議会」を設置して対策の検討を開始した。
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