遡及適用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/27 06:29 UTC 版)
「欧州連合域内における著作権保護期間の調和に関する指令」の記事における「遡及適用」の解説
この新しい著作権の条項は、それが発効した時点で既に存在した作品に対しても遡及適用される。欧州司法裁判所によって扱われた「バタフライ事件」のように、その作品が発効以前はパブリックドメインになっていたとしてもである。厳密には、この条項は1995年7月1日の時点で少なくとも1つの加盟国で保護された作品に対して適用される。ただし、ほとんどの加盟国は、他国の保護にかかわらず、この保護期間の基準に適合するすべての作品にそれらを適用することに決めた。外国の法律を考慮する必要がないので、このアプローチは国内の法廷にとって適用するのがはるかに単純であるからである。 このアプローチの賢さは、この指令が発効する以前に発生した問題をカバーした「プッチーニ事件」において、欧州司法裁判所の判決によって示された。ドイツのヘッセン州で1993年〜1994年に、ジャコモ・プッチーニ作のオペラ『ラ・ボエーム』が著作権者の許可のないまま上演された。このオペラはイタリアで最初に公表されたもので、作者のプッチーニは1924年11月29日に死去している。その時点では、イタリアは著作者の没後56年という著作権の保護期間を採用していたので、したがってイタリアの保護は1980年末に終了していた。しかしながらドイツは、ドイツ人著者の作品には著作者の没後70年の期間を適用し、外国の作品には「より短期の規則」(ベルヌ条約第7条第8項)を適用した。裁判所は、加盟国の間でより短期の規則を適用することは、欧州共同体設立条約第12条に定められた差別禁止の原理への違反であると裁決した。従って、その作品がもはやイタリアでは保護されなかったとしても、ドイツでは保護されるべきであったとした。このような事件は、もはや指令が発効してからは発生することはない。 2018年6月20日には欧州議会法務委員会が11条と13条の改正により、インターネットによる報道リンクからの料金徴収(11条・通称:「リンク税」)により大企業に有利な条件で零細企業潰しになりかねない影響がある。また、ウェブ監視(13条)によるフェアユースを認めない決定をしている。これにより、アーティスト作品を引用しての二次創作潰しや政治家の悪用が懸念されている。
※この「遡及適用」の解説は、「欧州連合域内における著作権保護期間の調和に関する指令」の解説の一部です。
「遡及適用」を含む「欧州連合域内における著作権保護期間の調和に関する指令」の記事については、「欧州連合域内における著作権保護期間の調和に関する指令」の概要を参照ください。
- 遡及適用のページへのリンク