消防法の一部改正(法律第64号)
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「千日デパート火災」の記事における「消防法の一部改正(法律第64号)」の解説
1974年(昭和49年)6月1日、消防法の一部を改正する法律が公布された(法律第64号)。 千日デパート火災発生から約10か月、未曾有の大災害からの警戒心からだったのか、しばらくは治まっていた大規模なビル火災が再び起こり始めていた。1973年(昭和48年)3月8日に起きた福岡県北九州市八幡区(現・八幡東区)の済生会八幡病院火災(死者13人、負傷者3人)を皮切りに、同年5月28日には東京都新宿区歌舞伎町の第6ポールスタービル火災(死者1人)、6月18日には北海道釧路市オリエンタルホテル火災(死者2人、負傷者35人)、9月28日には大阪府高槻市の西武高槻ショッピングセンター火災(死者6人、負傷者13人)が相次いで発生した。そのような状況だったことから年末に向けて、火災への警戒がより一層の高まりをみせていた。「秋の火災予防運動」も終わろうとしていた11月29日、熊本県熊本市下通の大洋デパートで白昼に火災が発生し、死者104人、負傷者124人を出す大惨事が再び起こった。政府や消防関係当局は、千日デパート火災の惨事を教訓に消防および建築関係法令などを改正し、避難訓練の実施を図り、消防設備などの検査や査察を強化するなど、さまざまな対策や再発防止を図ってきた。しかし、その努力が不十分だったことが明らかになり、ついに消防法令において既存不適格の防火対象物に対し「消防用設備等設置の遡及適用」を行うことになった。 消防法改正のおもな内容 既存の防火対象物に対して消防用設備などの遡及適用を新設した。特に重要な内容は、特定防火対象物のうち、劇場、キャバレー、百貨店、ホテル、旅館、病院、公衆浴場(サウナ)、複合用途、地階がある建物、地下街については適用除外を除くとしたことである。つまり、それらの用途については、たとえ既存不適格状態であっても、要件を満たした場合には例外なく法令で定められた消防用設備を技術基準に従い設置する義務を負う。また用途変更の場合も遡及適用の対象とされた。さらに法施行時に既存不適格の特定防火対象物が大規模な工事(新築、増築、改築、移転、修繕、模様替え)を行っていた場合には、消防用設備などの技術基準を遡及適用するとした。用途によって消防用設備などの設置を完了しなければならない期限を具体的に定めた。百貨店、地下街、複合用途の特定防火対象物については、1977年(昭和52年)3月31日までに(施行日は翌日の4月1日から)、また旅館、病院その他の特定防火対象物は、1979年(昭和54年)3月31日(施行日は翌日の4月1日から)までに消防用設備等の設置を完了することとし、その維持を義務づけた。 遡及適用される消防用設備などは、以下の設備が対象とされた。なお、火災等を感知して警報を発する設備や器具、または避難誘導に必要な器具等は、防火対象物の区分や用途に関わらず遡及適用の対象とした。 消火設備については、消火器、屋内消火栓、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓、動力消火ポンプ 警報設備については、自動火災報知機、ガス漏れ火災警報設備、漏電火災警報器、消防機関通報設備、非常警報器具、非常警報設備 避難設備については、避難器具、誘導灯、誘導標識 消火活動に必要な施設については、連結送水管、排煙設備、連結散水設備、非常コンセント設備など。 そのほかには、防火管理に関する事項として、防火管理者の業務が法令や規定、消防計画に従って行われていないときは、防火対象物の管理権原者に対して必要な改善措置を命令することができるようにした。命令は、消防計画を定めていない場合、消防計画を届けていない場合、避難訓練が行われていない場合に発動することができ、違反には罰則が設けられた。また消防用設備などの検査を受けること、また消防用設備などの点検および報告を行うことが義務づけられ、違反には罰則が設けられた。
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