歌手の戸川智子の陳述とは? わかりやすく解説

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歌手の戸川智子の陳述

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 05:44 UTC 版)

神坂四郎の犯罪」の記事における「歌手の戸川智子の陳述」の解説

神坂とは満鉄神坂居た頃からの知り合いで、太平洋戦争危うくなりかけていた頃で、満洲開拓義勇軍で、開拓地工場など慰問する際の案内役神坂だった。それから今まで4年以上、5年近く関係があったが、終戦当時岡崎疎開しており、東京へ戻ったのは去年正月からで、その間疎遠だった。 神坂露骨に言えば女たらしで、悪党ではないが、秘密にすることができない明けっ放しな人である。梅原のことも、奥さんのことも、永井さち子のこともみんな神坂から聞かされ知っている最初の関係は、大連行く船の中でであり、前の夫と別れ一人になっていたところだった。神坂は実は四つ年下だった。疎開先から東京へ戻るのも神坂世話よるもので、郷里のんびりしていたら、芸がだめになると、レコード会社世話してくれたり大きな工場芸能指導の話をまとめたりした。東京での活動にも多大なる世話をして貰ったまた、十万近く神坂貸している、 神坂三景書房では信用があり、近いうちに副社長就任する予定だった。社長もう一つ製紙事業の方を専門にし、神坂三景書房引き受ける筈だった。永井さち子神坂裏切って社長味方につけ、社長の妾か第三夫人になったのがいけない。永井さち子恋人戦争死に神坂に熱心なアプローチをしていた。神坂は好きでも何でもなかったが、良い気にはなっていた。そのため、神坂から、永井さち子熱海へ行くから一万円貸してくれと頼まれ一文貸さないと強情を張ったら、自分舞台衣裳持ち出そうとして喧嘩になった別れ話切り出したら、神坂自分に手をついて謝罪し永井のことなど見向きもしない誓った結果自分と神坂伊豆山へ二泊した永井さち子執念深く痩せてひょろひょろしているのに自分のように肥って、丈夫そうな者よりもしつこかった。後には神坂永井のことを邪慳にしたが、効果がなく、越度捕らえて馘にしようとしたが、永井さち子社長に泣きついて、勘弁して貰った三四ヶ月前、神坂ダンスホール酒場遊び遅くなった際に日本間のある編集室に泊まったことがあり、などを片づけ寝床敷いたが、神坂明日の朝、永井さち子が来る、日曜でも校正たまっているので、出社すると言い明くる朝、ようやく起きたばかりのところへ永井さち子現れ寝巻き姿の自分たちの姿を見て逃げていった。神坂はこの姿を永井見せつけるために自分利用したのだという。男は残酷だ思いつつ少しだけ良い気持ちだった。今にして思うと、こんなひどいことをした報い業務上横領罪を着せられたのではないか永井は同じ事務所大森味方につけたり社長に取り入ったりして、神坂を陥れたのではないかお金要るときは自分の方から取り上げており、梅原養っていた資金もほとんど自分出してたようなのだった永井さち子妖婦だ。 神坂奥さん愛してはいなかった。それが女遊び始めた一番の動機であろう奥さんは怕い人で、冗談言えない堅い人だった。だから、一週間のうち五日までは自分ところに泊まり込み、そこから出勤していた。そういうことをしても、奥さん文句言わず嫉妬ヒステリー起こしたりせず、石地蔵のように無表情であり、家庭は木を噛むような味気なさだと語っていた。女房義務だけ知っている自動人形で、子供良人へのつとめを果たしている精巧な機械だ。刑務所入れられても、死刑にされても泰然としている、貞女の鏡だ、と言っていた。それを聞いて神坂が可哀相でたまらなかった。神坂は月に一度割合で、自分と結婚したいと言ったが、なるべく家に帰るようにと自分行った。すると、神坂は家に帰ってもすることがなく、味気なさ夜中に本を読んだり、編集仕事しながら夜明けを待っていると言った。いくら立派な女性であっても良人のために良い妻であり、愛されない価値があるではないか今回事件にも奥さん責任大きい。事件があったとき、神坂自分ところへ来て、女の怨みやられたと言ったが、それも奥さん旦那様愛していなかったからではないか神坂要は他人に使われる人間ではない、独立して再出発する必要があり、身辺整理をすると語り自分一緒に暮らしていける女は自分だけだ、子供引き取ってくれないか、と頼んだ子供奥さん手放さないだろうと答えると、今度こそ最後だから、女房の手切れ金はないか、という話になり、スター・ルビー指輪貸してくれないか、と頼んできた。その指輪最初満洲旅行の際に新京貰ったもので、甘粕正彦氏の慰問団の一行招待した際に甘粕氏がくれたものだった自分嫌だと言ったら、喧嘩になったが、到頭指輪だけは渡さなかった。そうしたら貴様みたな奴は芸能界から追い出すと言ったその三日後、二カラットダイヤの指輪持ってきて、25万円買えと言ってきた。そんな金はない、どこからそんなもの持ってきたのかと尋ねたら、梅原千代結婚することになり、彼女が渡してくれたものだ、と答えた口惜しかったので、梅原神坂欠点をすべて教えよう思ったが、住所知らないのでできなかった。そうしたらその五六日あとに自殺幇助事件起こった神坂梅原とのこと性的なことも含めて洗いざらい語ってくれた。まるで自分嫉妬心煽りたてるような感じで、不思議なことに競争心がわいてきた。梅原方に自分のことしゃべっており、自分吹き込んだ民謡歌謡曲レコード持って行ったりしていた。岸本というのが梅原本名で、北海道の小地主の娘で文学少女二十四五歳で、政治評論家今村徹雄奥さん遠縁で、北海道女学校卒業してから、家事見習いとして今村家へ来たところ、今村見初められたらしい今村奥さん内緒箱根湯河原連れ出して発覚し家庭争議になった今村奥さん住友親戚か何かから来た人で、大変威張っていた。そこで、今村神坂岸本八重子処遇頼み今村岸本と手を完全に切ることと、三万円神坂もらい受けることになった。そして、岸本梅原偽名させて、愛人にした。梅原方にも手に職があるわけでなし、女給になるしか道はなかった。今村その後も、岸本居所知らせろ、もう一度引き取らせろと神坂を困らせていた。梅原二人玩具にされていた。 今村は酒が飲みたくなると、神坂連れ出し三日にあけずに街へ出て三景書房の社の費用酒場飮み歩いていた。神坂は金の工面のために苦労し自分のところからも二万円持って行っている。東西文化広告料二割神坂収入になっていたので、それを殆ど使用していた。そこから業務上横領の話が出たのか。眼上の人にはとても気の弱い人間だった。今回横領事件今村自身半分自分責任分かっているので、事件発覚当時酒場神坂怒鳴り付けていたが、八百長芝居だ。その後鳩の街遊びに行くから同じ穴の狢だ。三景書房の社長神坂を馘にし、告訴したのは今村提案だそうだが、それも二人八百長芝居で、頃合見て今村社長に告訴取り下げさせようとしている。男はみなだ。告訴取り下げた後で今村知り合い代議士神坂出版事業をさせる方針決まっている。 梅原自殺事件自分良く分からない奥さん介抱行っているから自分行けないので詳しい話を聞けない梅原肺病悲観したのは、今村奥さん永い肺病で、三四今村宅にいたのだから伝染したのだろう。奥さん病気なので、今村梅原気持ち向いたのだろう。しかし、神坂泊まっていたのだから、大した症状はなかったのだろう。心中の際に酒と一緒に飲んだ催眠剤は多分自分がよく使うものだろう。事件三日前に神坂来て眠れないからをくれと言って来た。次の晩に自分飲もう思ったら、七八回分はあったのが箱ごとなくなっていた。しかし、神坂梅原殺し自殺するだろうか。きっと道連れにされたのだろう。 神坂本当我が儘お坊ちゃん育ち駄々っ子で、世間知らずで、少し非常識かも知れない自分では一生懸命やっていいても、他人から憎まれたりそねまれたり、今村梅原利用されたり、永井裏切られたりで、それでお人好しで何とか済んでたようなものだ。彼の女好き許せるような気がする

※この「歌手の戸川智子の陳述」の解説は、「神坂四郎の犯罪」の解説の一部です。
「歌手の戸川智子の陳述」を含む「神坂四郎の犯罪」の記事については、「神坂四郎の犯罪」の概要を参照ください。

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