就学援助
「就学が困難な者」と認められる学齢期の児童生徒や特別支援学校の生徒の保護者に対して、学校教育法第19条に基づき、国や地方自治体などによって行われる公的扶助のこと。
憲法第26条に基づく国民の三大義務の一つとして、保護者には就学義務、すなわち子供に教育を受けさせる義務が課せられている。就学援助は、経済的な理由により、保護者がその義務を履行できない場合に必要な援助として設けられている。
具体的に就学援助の対象となるのは、生活保護における教育扶助(就学扶助)の対象とならない、修学旅行や社会化見学などの費用が主である。また、教育扶助を受給していない児童生徒に関しては、義務教育で無償化の対象とならない教材費や、給食費などの学校納入金、医療費などが就学援助の対象となることがある。2010年4月からは、従来教育扶助の対象であった「生徒会費」「PTA会費」に加え、新学習指導要領で教育活動の一環とされた「クラブ活動費」の3項目が、就学援助の対象項目として加えられた。
就学援助の受給にあたっては、生活保護法第6条第2項に基づく「要保護者」であること、あるいはそれに準じる「準要保護者」と市町村教育委員会に認められることが条件とされている。三位一体の改革で、準要保護者への就学援助が一般財源化されたことから、各地方自治体が独自に細かい基準を設けたり、上乗せ支給を行ったりしている例もある。しかし、地方自治体の財政状況によっては受給基準が厳しくなったり、支給額が減少したりすることもあるため、統一基準の策定を求める意見もある。
平成25年版の「子ども・若者白書」では、2012年度に就学援助を受給した人数が約155万人であり、1995年度の調査開始以降、少子化の影響で初めて減少したとする調査結果が示された。一方、公立小中学生に占める就学援助受給者の割合は15.64%となり、過去最高を記録した。
関連サイト:
第3節 子どもの貧困|平成25年版子ども・若者白書(全体版) - 内閣府
就学援助制度について - 文部科学省
就学援助
就学援助
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/24 10:07 UTC 版)
「就学援助」も参照 文部科学省の要保護及び準要保護児童生徒数の推移の資料によると、平成22年度には生活保護を受けていないがそれに準ずるものとして、市町村教育委員会がそれぞれの基準に基づき認定した準要保護児童生徒数は140万人に達している。要保護児童生徒数を含めると総数は約155万人となっている。就学援助率は15.3%と過去最高である。2005年度より、準要保護者に対して行う就学援助は一般財源化されており、自治体の財政力による受給の格差が懸念されている。 全国で約7人に1人の小中学生が、経済的理由により就学困難と認められている。2006年に文部科学省が教育委員会を対象として実施したアンケート調査によれば、過去10年間(1995-2004年度)における就学援助受給者数増加の要因・背景について、「企業の倒産やリストラなど経済状況の変化によるもの」が全体の76%、「離婚等による母子・父子家庭の増加、児童扶養手当受給者の増」が全体の60%に当たることが判明した。足立区の小中学校の学力と就学援助率の分析によると、小学校では就学援助認定率と学力の関係に変化が出始めているが、中学校では依然として就学援助認定率と学力との相関関係が続いているとしている。ただし、子どもの学力の決定要因は何かを考えた時に、家庭環境と遺伝の影響は大きいと言われており、遺伝が学歴に与える影響は27 - 35%と推定され、家庭環境も合わせるとかなり大きな割合を占めることがわかっている とされている。就学援助利用世帯と収入400万円以下の世帯が厳密に対応しているわけではないが、こうした低所得世帯は大きな不利を背負っていることがわかる。年収400万円をひとつの境界線として、生活と教育の諸断面(朝食摂取、個室、持ち家率、家族旅行の経験、学校の成績、欠席率、塾・習い事など)における明らかな断絶が見て取れる。低所得ということがこういった問題・困難をもたらすもっとも大きな原因であると結論づけるのは早計であろうが、紛れもなくひとつの原因となっていることが考えられるとの分析がある。 就学にかかる制服・かばんなどの学用品については、指定の型や販売店制度を利用しているため、金額が高止まりしている可能性がある。海老名市総合教育会議では、市教育委員会の調査で市内の中学校制服は約2万5千円の価格差があることが判明して是正に乗り出している。茨城県日立市では入学時に小学校では薄型ランドセルを、中学校ではリュックタイプのスクールカバンを全員に贈呈している。ところで中学校の学用指定鞄に至っては、時に教科書等で重量10kgともなり、小学校のランドセルと異なり、毎日の通学においての片肩掛けでは成長期の身体に歪みを生じさせる可能性があるが、これは学校保健安全法に基づき行う健康診断で従来の脊椎側弯検診に加え、平成28年度より「四肢の状態」検査を実施して四肢の形態及び発育並びに運動器の機能の状態を確認し子どもの健康保持に努める教育理念とも反する。指定鞄制度をとらず、生徒が市販のリュックを購入する学校もある。公正取引委員会は学校制服の取引実態を調べ、公立中学の制服の価格は上昇傾向にあることから、価格の上昇は学校と制服メーカー、販売店の関係や、取引方法が原因になっている可能性があると判断し、調査の結果から導いた改善案を公表すると報道されている。個人で地域学校別の制服等の費用を費用を調査した者によると詰め襟制服でも、学校によって1万円もの差がある実態が明らかになっている。 公正取引委員会は2020年7月に愛知県豊田市にある県立高校6校の制服販売において価格カルテルを結んでいたとして、同市の販売業者3社に対し、独占禁止法違反で再発防止を求める排除措置命令を行っている。部活動のユニフォームや共通用具などの購入も数万かかるケースこともあるうえ、また運動部の保護者が自主練や差し入れなどの担当を強いられる仕組みがある場合には、ひとり親などで休暇を取りづらい就労形態についている場合には対応の困難さが部活動の参加阻害要因ともなる可能性が指摘されている。部活不参加の場合には進学のための内申点に影響することもある。
※この「就学援助」の解説は、「子どもの貧困」の解説の一部です。
「就学援助」を含む「子どもの貧困」の記事については、「子どもの貧困」の概要を参照ください。
- 就学援助のページへのリンク