就学問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 02:53 UTC 版)
日本の公立学校は、日本で就労する日系ブラジル人の子弟を含む外国人学齢期子弟の受入れを行なっている。多くの子弟は苦労をしつつも日本の学校に馴染んでいる。しかし、一部には日本語の習得が困難な者がおり、両親も教諭との日本語での十分なコミュニケーションがとれない場合もある。学校側にもブラジルの習慣を熟知しポルトガル語を使って学校生活をフォローできる人材はほとんど存在しない。また、ブラジルの学校と日本の学校のカリキュラムの違いなどの理由から、日本の学校に馴染めず不就学となる場合がある。 ブラジルの学校は、学力が低ければ原級留置になるのが当然という過程主義の学校制度であり学年内の同年齢度が低いので、日本のような年齢主義の強い学校制度とは馴染みにくく、これが原因で日本の学校に順応できなかったり、年齢が高いことを理由に入学を拒否されたりする場合がある。 日本国内にはブラジル政府が認可するブラジル学校も存在するが、それらの学校は「アメリカンスクール」や「独逸学園」、「朝鮮学校」をはじめとする多くの外国人学校と同じくブラジル人向けのインターナショナル・スクール扱いである。 このため、文部科学省からの各種支援がない他、日本の小学校や中学校、高等学校の卒業資格は得ることができない。さらにこれらの学校は学費が1月当たり数万円かかることも多く、両親は子供を学校に通わせたくてもできないケースが数多くあるという。また、日本の学校の教育カリキュラムがブラジルの学校とあまりに違うため、両親が子供を日本の学校に通わせたくないと考えることもある。なお、ブラジル政府からブラジル学校への支援は図書の寄贈だけである。 2000年頃から、こうした若者の一部が疎外感を求心力に集結し、非行に走るケースが見られるようになってきた。これらを受け、自治体においてはブラジル人教員の採用、不就学児童・生徒の実態調査、NPOを活用した教育機会の提供等、教育対策が徐々に進められてはいるが、条件の良い職場を求めて日本国内を転々とする親側の事情もあり、満足の行く対応は難しい。 また2008年秋頃、世界金融危機の影響で日系ブラジル人たちがいわゆる「派遣切り」にあい、子供の就学費用を払えず、やむなくブラジル学校を退学させた。彼らはブラジルに帰国したり、日本の学校に転入したりした。これらの事例は岐阜県美濃加茂市など、日系ブラジル人が数多く暮らしている地域で社会問題化している。
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