天人女房
『捜神記』巻1-28 董永は父の葬儀を行なうために1万貫を借り、3年の喪をすませた後に、奴隷となって借銭を返済しようとする。天帝が董永の孝行をめでて、天上の織女を降下させる。織女は董永の妻になり、百疋の絹を織り上げて借銭を返し、董永を自由の身にしてから天へ昇って行った。
『捜神記』巻1-31 天界の玉女が下界へ降嫁するよう天帝に命ぜられ、役人弦超の妻となる。7~8年の間、玉女は他人に姿を見せずに弦超と夫婦生活をするが、ある時、弦超が玉女のことを人に漏らしたため、玉女は去る。しかし数年後に2人はよりを戻し、玉女は月に2~3度、弦超のもとへ通って来た。
『太平広記』巻63所引『玄怪録』 崔は絶世の美女と結婚するが、母が「あの女は狐ではないか」と疑うので、美女は去る。実は彼女は西王母の娘玉巵娘子であり、1年間家に留めておけば、一家は不死の生命を授かるはずだった。
『太平広記』巻68所引『霊怪集』 夏の夜、庭先に寝る郭翰のもとへ天から織女が降下する。織女は夜な夜な郭翰の所へ通うが、1年ほど後、「天帝から許された期限が尽きた」と告げて去り、2人の仲は絶えた。
*→〔禁忌〕6の『シャタパタ・ブラーフマナ』。
*織女が本の栞となって、男の前に現れる→〔本〕8aの『聊斎志異』巻11-415「書癡」。
★1b.天女が地上の男を富ませ、良い妻をめとらせるべく、降下する。
『捜神後記』巻5-1(通巻49話) 謝端は若くして父母を喪(うしな)い、慎み深く独り暮らしをしていた。天帝が彼を哀れんで、天の川の白水素女を降下させる。白水素女は謝端の留守宅を守って炊事をし、10年のうちに彼を富ませ、妻をめとらせてから、天へ戻るはずであった。しかし謝端が白水素女の姿をのぞき見てしまったため(*→〔のぞき見〕8)、彼女は去って行った〔*その後、謝端は、大金持ちにはならなかったが、郷里の娘と結婚し、縣の長官になった〕。
『蒙求』91「詰汾興魏」 詰汾(きっぷん)が山へ狩りに行き、天女と出会って一夜の契りを交わす。翌日、天女は天へ帰り、1年後の同月同日に、男児を抱いて再び降下する。天女は男児を詰汾に渡し、「これは貴方の子です。帝王となるでしょう」と告げて、飛び去る。この子が北魏の始祖・神元皇帝である。
★3.妻の死が、天への帰還だったことが後にわかる。
『閲微草堂筆記』「ラン陽消夏録」巻3「天人女房」 田耕野公の妻は、早くに死んでしまった。ある夜、公は、妻が木の梢から舞い降りる夢を見た。妻は「私は天女です。宿命があって貴方の妻となりましたが、縁が尽きたので天に帰ります」と言う。妻は、現世での公の将来を予言し、「死後、貴方が努力して天に生まれれば、また逢えます。そうでなければ、もう逢えません」と告げた。
『カター・サリット・サーガラ』「ウダヤナ王行状記」9・挿話12 プルーラヴァス王と天女ウルヴァシーは互いを一目見て恋慕し合い、ヴィシュヌ神が特別にはからって2人の結婚を許す。ある時プルーラヴァス王は天国の宴に招かれて天女の群舞を見、「自分は天女と暮らしているので、もっと多くの踊りを知っている」と高言したために呪詛され、半神ガンダルヴァたちがウルヴァシーをさらって行く。プルーラヴァス王は苦行を行なってヴィシュヌ神をなだめ、神は彼を嘉(よみ)して、ウルヴァシーを返す。
羽衣伝説
(天人女房 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/14 21:31 UTC 版)
羽衣伝説(はごろもでんせつ)は世界各地に存在する伝説のひとつ[1]。多くは説話として語り継がれている。日本で最古の羽衣伝説とされるものは風土記逸文として残っており、滋賀県長浜市の余呉湖を舞台としたものが『近江国風土記』に、京都府京丹後市峰山町を舞台としたものが『丹後国風土記』に見られる。
- ^ a b 『大東亞神話』, p. 223.
- ^ 『大東亞神話』, p. 224.
- ^ 『大東亞神話』, p. 255.
- ^ フィリップ・ヴァルテール『ユーラシアの女性神話』中央大学出版部〈ユーラシア神話試論Ⅱ〉、2021年、170頁。ISBN 978-4-8057-5183-1
- ^ 中田 1926, pp. 101–103.
- ^ a b 谷川健一『列島縦断地名逍遥』冨山房インターナショナル、2010年。ISBN 9784902385915 。
- ^ a b 中田 1926, pp. 103–105.
- ^ a b c 中田 1926, p. 105.
- ^ a b c 『大東亞神話』, p. 231-233.
- ^ a b 『大東亞神話』, p. 234.
- ^ a b 『大東亞神話』, p. 235.
- ^ a b c 『大東亞神話』, p. 236-239.
- ^ フィリップ・ヴァルテール『ユーラシアの女性神話-ユーラシア神話試論Ⅱ』(渡邉浩司・渡邉裕美子訳)中央大学出版部 2021年、ISBN 978-4-8057-5183-1、167-185頁(第9章 羽衣とケルト人の「白い女神」)、『グラアランの短詩』の粗筋は170頁。
- ^ 『大東亞神話』, p. 243-245.
- ^ 『大東亞神話』, p. 253.
天人女房と同じ種類の言葉
- 天人女房のページへのリンク