物語としての性格
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この作品には、下記に挙げたような非常に多様な要素が含まれているにもかかわらず、高い完成度を有していることから物語、または古代小説の最初期作品として評価されている[誰によって?]。 かぐや姫が竹の中から生まれたという竹中生誕説話(異常出生説話) かぐやが3ヶ月で大きくなったという急成長説話 かぐや姫の神異によって竹取の翁が富み栄えたという致富長者説話 複数の求婚者へ難題を課していずれも失敗する求婚難題説話 帝の求婚を拒否する帝求婚説話 かぐや姫が月へ戻るという昇天説話(羽衣説話) 富士山の地名由来を説き明かす地名起源説話 大きく捉えれば、天人女房型説話が求婚難題譚を挟んだ形になっているが、これは単なる伝承の継ぎ接ぎではない。それら伝承を利用しつつ、「人間の姿そのものという新たな世界」を創り出そうとしたところに、物語文学の誕生があるからである。 竹中生誕説話において、竹は茎が空洞であることや成長の急激さにより神聖視され、説話の重要な構成要素の一つになっている。その特徴を顕著に示す話の一つが『竹取物語』であり同系列の昔話に『竹姫』、『竹の子童子』がある。竹中誕生譚は他の異常誕生譚に比べると事例が稀で、日本国内よりはむしろ中国や東南アジアに多い。『継子と笛』も継子の霊が竹になり、それで作った笛を父親が吹くと霊が自分の消息を伝える。日本の昔話では竹中の精霊は人間界に留まれないものが多い。竹は神の依代であると同時に呪力を持つと考えられていた。七夕の竹を畑に立てての虫除け、耳病に火吹竹をあてる等の風習が地方にはあり、また聖人の杖が根づいたり、呪言とともに逆さにした竹が成長したという神聖視する心意の伝説も多い。竹は普段の生活に密着しており、その点でも説話の生成伝播を促した。 多くの要素を含んでいるため、他作品との類似性ないし他作品からの影響が指摘されている。『竹取物語』は、異界から来た主人公が貧しい人を富ませた後に再び異界へ去っていくという構造から成り立っており、構造的には羽衣伝説と同一である。 南波浩は、この物語の成立系統を次のように推定している。 伝承竹取説話 (漢文竹取説話)? 仮名書竹取物語 今昔物語集竹取説話 部分的改変現存諸本 平安時代後期の『今昔物語集』にも竹取物語と同様の説話(巻31第33「竹取翁、見付けし女の児を養へる語」)が採集されているが、求婚者への難題は「空に鳴る雷」「優曇華」「打たぬに鳴る鼓」の3題のみで個人別ではなく、月へ帰る夜も十五夜でなく、富士山の地名由来譚も登場しないといった、『竹取物語』より簡略化された内容である。『今昔』所収の竹取説話は、(既に成立していた『竹取物語』を参照していた可能性はあるものの)口頭伝承されてきた「伝承竹取説話」の古態を伝えているのではないかとしている。 なお、後年の作家によって、本作は「世界最初のSF小説」と言及される事がある(藤川桂介著の「宇宙皇子」の後書きなど)。しかしながら実際には、古代ギリシアの作家ルキアノスの書いた『本当の話』と『イカロメニッパス』のほうが古い。
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