神仏援助
『太平記』巻5「大塔宮熊野落ちの事」 大塔宮(おほたふのみや。=護良親王)の一行が幕府軍に追われた時、老松(おいまつ)と名のる14~15歳の少年が、「大塔宮の難を救え」と触れ廻った。それに応じて大塔宮に味方する軍勢が現れたので、宮は窮地を脱することができた。後に、大塔宮が膚につけた守り袋を見ると、老松明神の御神体が全身に汗をかき、御足には土がついていた。
『太平記』巻16「高駿河守例を引く事」 10万余騎の黄旗兵が玄宗皇帝の官軍に加勢したため、安祿山の反乱軍は逃げ去る。後に勅使が宗廟に詣でると、立ち並ぶ石人の両足が泥にまみれ五体に矢が立っていたので、宗廟の神が黄旗兵と化したことがわかる。
『古本説話集』下-67 貧女が、20人に対して田植えの手伝いを請け負う。ところが、田植えの日がどの家も皆同じ日になってしまい、貧女は困りつつも、最初に請け負った人の田へ行って働く。その夜、20人の所から田植え手伝いの礼物を、貧女の所へ持って来る。翌日、貧女が日頃念ずる観音像を見ると、像は泥にまみれ、御足は真っ黒になっていた。
『日本霊異記』上-6 高麗留学中に難に会った老師行善は、日本へ帰ろうとするが、途中の河を渡ることができない。行善が観音を念ずると、老翁が現れて舟で対岸に渡してくれる。行善が舟を下りると、老翁も舟も消え失せる。これこそ観音の化現であろうと行善は思い、観音像を造り礼拝した〔*『今昔物語集』巻16-1に類話〕。
『日本霊異記』中-34 娘が、求婚してきた男に食事を出そうと思っても何もない。観音像に祈ると、隣家の乳母が食事を持って来てくれる。娘は着ていた黒い衣を乳母に与える。後、観音を拝み、乳母に与えた黒衣が像にかかっているのを見る。
『日本霊異記』中-42 千手観音像に福を祈る女のもとに妹が訪れ、銭百貫入りの皮櫃を置いていく。その脚には馬糞がついていた。千手観音に花香油をそなえに行くと、観音の足にも馬糞がついていた。
*→〔傷あと〕3。
*『観音経』が人を救う→〔経〕1aの『宇治拾遺物語』巻6-5・『太平記』巻3「赤坂の城軍の事」。
『堤中納言物語』「貝合」 継子としていじめられている姫君と、正妻の姫君とが貝合わせをする。蔵人の少将が継子の姫君の味方をし、多くの美しい貝を箱に入れて、姫君の部屋近くの高欄にひそかに置く。それを見た姫君と女童たちは、日頃信仰する観音の助けと考える。
『日本霊異記』中-14 貧しい皇族の女が、宴席を設けるための財貨を吉祥天女像に請う。乳母があらわれ、みごとな料理と食器をととのえてくれる。女は礼として乳母に衣裳を与えるが、後に天女像を拝むと、乳母に与えた衣裳が天女像にかかっていた。
『日本霊異記』中-13 山寺の優婆塞(うばそく=在家の男性信者)が、吉祥天女像に愛欲の心を起こし、「天女のごとき美女を与え給え」と願う。ある夜、優婆塞は吉祥天女と交わる夢を見る。翌日、彼が天女像を見ると、像の裙(すそ)の腰のあたりが精液で汚れていた〔*『今昔物語集』巻17-45に類話〕。
『古本説話集』下-62 鐘撞き法師が、吉祥天女像に愛欲の心を起こす。吉祥天女がそれに応えて、「汝の妻になろう」と夢告する。法師は、吉祥天女の化身である美女と裕福に暮らすが、やがて天女の戒めを破って愛人をつくる。吉祥天女は、大きな桶2つにいっぱいの精液を法師に返し、去って行く。
『奇談異聞辞典』(柴田宵曲)「弁才天奇談」 和州長谷の僧が弁才天女の木像を恋慕し、長年の修行の心も失せて病臥する。弁才天は、僧の迷いを晴らして再び仏道修行に励ませようと、僧と夫婦関係を結ぶ。弁才天は「このことを人に語るな」と禁ずるが、僧は嬉しさのあまり、弁才天との関係を仲間にほのめかす。弁才天は怒り、「汝が漏らした慾を返す」と言って去る。僧は、多くの水を顔にかけられたように感じ、やがて癩病になって死んだ(『譚海』巻5)。
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