神に仕える女
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第6章 ロクリスのアイアスがトロイアのアテナを怒らせたために(*→〔暴行〕10)、ロクリス地方は疫病に襲われた。「千年間、2人の処女をトロイアへ送って、アテナを宥(なだ)めるべし」との神託があり、くじ引きによって、ペリボイアとクレオパトラがトロイアへ送られた。彼女らは神殿の外へ出ず、髪を切り、1枚の着物に履物なしでいた。彼女らが死ぬと、次の処女を送った。後には、赤児を乳母とともに送った。千年の後に、処女を送ることをやめた。
『伊勢物語』第69段 男が伊勢の国へ狩りの使いに行き、斎宮である女と、一夜の契りを交わした。男の「われて逢はむ」との言葉に応じ、女が男の部屋を訪れたのだった。夜が明けて、女から「君や来し我や行きけむおもほえず夢かうつつか寝てかさめてか」の歌が届き、男は「かきくらす心の闇にまどひにき夢うつつとはこよひ定めよ」と返歌した。しかし再びの逢瀬は叶わず、男は尾張の国へ旅立った。
*斎宮は、男(=在原業平)との一夜の契りで子をなした、との説がある→〔一夜孕み〕1bの『冷泉家流伊勢物語抄』。
『和漢三才図会』巻第77・大日本国「丹波」 当国熊野郡市場村では、もし女児が生まれれば、4~5歳になると斎宮となって神に奉仕する。深夜に独り坐しても、けっして怖畏(おそれ)ない。ようやく成長して月水を見るようになると、たちまち大蛇が出て逐(お)うので居られなくなる。それで自分の家に帰り、新しい女と交代する。
『後漢書』列伝第85「東夷伝」 桓帝・霊帝の頃(146~189)、倭国に卑弥呼(「ひみこ」あるいは「ひめこ」)という女子がいた。成長しても結婚せず、神がかりになって託宣し(「事鬼神道」)、巫女となって人々を惑わした(「以妖惑衆」)。倭国の人々は、卑弥呼を立てて王とした。卑弥呼の姿を見た者は少ない。1人の男子が食事の世話をし、卑弥呼の言葉を伝えている。
*『魏志倭人伝』(『三国志』巻30・『魏書』30「烏丸鮮卑東夷伝」)に同記事があり、そこでは「卑弥呼の弟が政治を補佐した」と記す〕。
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