座法
(坐法 から転送)
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座法(ざほう、坐法)とは、人が床、敷物、地面の上に直接座る際の形、方法、足の組み方である。
日本では正座、胡坐(あぐら)などの座り方が現代でも行われている。
座法の種類
- 正座(せいざ)
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正座 -
→詳細は「正座」を参照
- 江戸時代の日本、トルコ、イースター島のモアイ像などにみられる。なお日本では江戸幕府により小笠原流礼法が武家の礼法に採用され、茶道などで広まったという説のほか、座法自体はそれよりも前に庶民に浸透していたという説もある。正座はもともとは中国式であり、例として漢の時代の墓の副葬品の俑に見ることができる。
- 跪座(きざ)
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跪座 - つま先を立てた正座。神道、弓道や伝統空手、古流剣術における「控え」の姿勢にみられる。足が痺れない正座姿勢なので避ける・反撃などに即座に反応しやすい。古流の剣術や平安時代から室町時代までの目上の者に対する下級武士及び従者の座法として膝頭を開脚した跪座や片膝立(後述の片跪坐)が見られる。
- 片膝立(かたひざたて)
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片膝立 - 古来の日本、中国、韓国、インドなど。立て膝とも呼ばれる。古代エジプトの壁画に同様の座り方が数多く描かれていることから、エジプト座りとも呼ばれる。日本では、後述の胡座や合蹠座と共に中世以前における一般的な座法であった。現代の日本では、能の控えの姿勢や、古い居合術の座法として継承されている。立て膝における後ろ足は、大抵正座のように尻の下に折り敷くが、膝頭を開脚させて胡座のように横に倒すこともある。これは楽立て膝または歌膝(歌人が和歌を詠む際にとった姿勢から)、輪王坐(如意輪観音の座法として有名。両足の裏を合わせる)とも呼ばれ、韓国の古い慣習における女性の正式な座法として、また現代におけるくつろいだ自然な座り方としてもよく見られる。またこの状態から両足を組む座法は、交差立て膝またはヨーガにおけるアーサナの一つアルダ・マッツェーンドラーサナ(聖者マツィエンドラのポーズ)として知られる。なお、後ろ足のつま先を立てる場合もあるが、こちらは片踵坐とも呼ばれ、古来は目上の者に対して控える姿勢として、また現代では姿勢を低くしていつでも動けるような臨戦態勢を取る場合に、ごく自然に見られる座法である。
- 胡坐(あぐら、こざ)、安座(あんざ)
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胡座 -
→詳細は「胡坐」を参照
- 日本など。両膝を左右に開き、体の前で両足首を組んで座る。
- 半安座(はんあんざ)
- 胡座の足を組まない座り方。古い居合術の形に大座という名称でみられる。
- 結跏趺坐(けっかふざ)
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結跏趺坐 -
→詳細は「結跏趺坐」を参照
- 仏教、ヨーガなどにみられる座り方。
- 合蹠座
- 日本では貴人坐。両膝を左右に開き、体の前で脚の左右の足裏を互いに(向かい)合わせた座り方。正座、蹲踞と同じく身体全体の形は完全に左右対称となる。その特徴を除けば、結跏趺坐、胡座に似る。
- 蹲踞(そんきょ)
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蹲踞 -
→詳細は「蹲踞」を参照
- 相撲、剣道などの競技前に行う、つま先で体を支え足を開きかかとにお尻を乗せ背筋を伸ばす座り方。
- 体育座り、体操座り、三角座り
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体育座り -
→詳細は「体育座り」を参照
- 小学校など日本の学校教育でみられる座り方。
- 横座り、女座り
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横座り - 正座が片側にずれた形の座り方。
- 割座(わりざ)、女の子座り、ぺたん座り、あひる座り、鳶座り
- 正座の状態で両方の脛を外側に開いて、お尻を地面にぺたんと着ける座り方。M字のような形、または両脛をさらに広げてT字のような形に座る場合もある。主に、女性に特徴的な座り方であるが、成人男性で出来る人もいる。体の柔らかい子どもがすることが多いが、成長過程で股関節に悪影響を与え、四角い骨盤となるおそれがある。そのため、女性の場合、子宮に影響を与え、健康上あまり好ましくない座り方だと言われている。
- ヤンキー座り、うんこ座り
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ヤンキー座り -
スラブ・スクワット[1]のゴプニク。 - かかとを地面に着けたまましゃがむ姿勢。ヤンキー(不良)が座る際によく行うスタイル、また和式便器で排便する姿勢と同じことに由来する俗称。
- 多くの日本人の大人は、この座法で快適に座り続けることができないが、かかとを付けてしゃがむ座法はアジア各国で一般的に見られる[2]。日本ではこの座法を特定する固有の呼称が無く、入沢達吉は仏教における蹲踞のひとつと説明している[3]。
- 一方、欧米ではスラブ人、特にロシア人の習慣だと認識されている[1]。
- 野球において捕手が守備に就き投手の投球を受ける際、この座り方をする事が多い。
- 投げ足、箕座
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投げ足 - 開脚もしくは閉脚した状態で足を前方に投げ出した坐り方。首がすわり、脊柱起立筋が発達した乳幼児は、生後6か月ぐらいから開脚した投げ足で座るようになる[4]。大人の場合は閉脚し足首を交叉させる場合や、片足だけを投げ出す場合もある。日本では壁や座椅子で背中を支えることで取られることが多いが、西アフリカなどでは日常的に見られる寛いだ坐法である[5]。
各国の座法
日本
身分によっても男性の座法と女性の座法は異なっている。仏教の伝来とともに修行法の座法が伝わった。正式な座法にも変遷があり、室町時代には片膝立や胡坐が一般的。高台院(北の政所)の高台寺の坐像も片膝立であるように女性もこの姿勢が普通であった。現在の正座は江戸時代に武家の作法に小笠原流が入った際に採用された男女共通の座法という説がある。いっぽうで、奈良時代の仏像や、室町時代の宣教師の筆記から、江戸時代より以前から一般庶民に正座と同じ座り方が浸透していたとする説もある。なお正座という名称は明治時代以降につけられたと推測される。
韓国
韓国などでは男性は胡坐と片膝立が正式な座法。片膝立は女性だけの座法。
ヨーガ・仏教
欧米
基本的に床に座る文化が無いためヤンキー座りや女の子座りができない人が多い。[6]
脚注
- ^ a b “A People's History of the ‘Slav Squat’” (英語). MEL Magazine (2018年11月13日). 2019年4月26日閲覧。
- ^ 井上耕一『アジアに見る あの坐り方と低い腰掛け』 丸善ブックス 2000年 ISBN 4621060880 pp.6-9.
- ^ 入沢達吉、他『如何にして日本人の体格を改善すべきか』日新書院、1939年、39-42頁。NDLJP:1046658/24。
- ^ “座る”. 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンク. 2017年11月24日閲覧。
- ^ 矢田部英正 『たたずまいの美学:日本人の身体技法』<中公叢書> 中央公論新社 2004 ISBN 4120035123 p.106.
- ^ “【衝撃】「ヤンキー座り」はアジア人の特技?! 実はアメリカ人の86.5%ができない...!【漫画】(Amy (えいみー))”. エキスパート. Yahoo!ニュース (2024年12月11日). 2024年12月11日閲覧。
関連項目
- 椅子
- 座る権利
- 座位障害 - 尾骨痛・腰痛などにより座っていられない障害
- しゃがみ姿勢
外部リンク
- 入澤達吉『日本人の坐り方に就いて』 克誠堂書店 1921年 国会図書館 近代デジタルライブラリ(初出は『史学雑誌』第31編第8号 1920年)
- 正座の源流 Origin of Seiza:Sitting-Up Straight in Japan 川本利恵、中村 充一(東京家政大学紀要第39号 1999年)
坐法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/22 23:22 UTC 版)
現代の諸宗門の説明する禅の方法は、曹洞宗では面壁し、臨済宗では壁を背にして座るなど、宗門・坐禅儀によって差違がある。概ね調身・調息・調心という3つの段階から成る。 入堂 僧堂に入るには、手を叉手にし、入り口の左側から左足で入る。坐禅堂の入口正面には守護仏である文殊菩薩の祭壇があり、これを聖僧さまという。その前で一旦立ち止まり、合掌低頭をする。そして叉手に戻して右足から所定の位置まで進む。また、必ず聖僧さまの後ろを通るようにする。 調身 結跏趺坐(けっかふざ)もしくは半跏趺坐(はんかふざ)で行う。結跏趺坐のやり方は左ももの上に右足を乗せ、右かかとを腹に近づける。次に右ももの上に左足を乗せる。一方、左足のみを右ももに乗せるのが半跏趺坐である。いずれも両足と尻との3点でつり合いよくすわる。 手は法界定印(ほっかいじょういん)を組む。右掌を上に向け、その上に、左掌を上にして重ねる。両手の親指先端をかすかに合わせる。 左右に上体を揺すって重心を安定させる。肩の力を抜き、背筋を伸ばす。腰は引き気味で腹を少し前に突き出す。鼻とヘソが相対するように。あごを引き、舌は前歯の付け根に軽く触れるようにして口を軽く結ぶ。目は半眼にして視線は1m程度先で落とす。 調息 ゆっくりと息を吐き出し、その後の呼吸は自然にまかせる。これを2 - 3回行う。 口を閉じて、静かに細く、長く息を吸い、下腹の辺りからゆっくり吐く。 調心 心の中で呼吸を数え、1から10、10から1と繰り返す(数息観)。 吐く息、吸う息の2つに集中し、数は数えずに呼吸そのものになりきる(随息観)。 坐る際には坐蒲を尻の下に敷く。 坐蒲に腰を下ろし、膝を床につける程度に浅く、足を組む。 一回の坐禅は「一炷」(線香一本が燃焼する時間。臨済宗では「シュ」、曹洞宗では「チュウ」。約40分 - 1時間)を一単位として行う。集中が乱れてくると姿勢が前屈みになるという。寺院においては坐禅を行う者の背後に直堂と呼ばれる監督者が巡回し、姿勢の崩れた者の肩を警策で打ち警告を与える。 睡気が出た場合は「身を揺らし、或いは目を張るべし。未だ醒めざる時は、手を引いて目を拭い、或いは身を摩すべし」(坐禅用心記)。また一炷ごとに畳から降り、作法に則り僧堂周囲の廊下をしばらく歩行して体の凝りを取り、眠気を払う。これを経行(きんひん)と呼ぶ。医学上、坐禅中は呼吸がゆっくりになることが観察されている。この呼吸数の低下はエネルギー代謝の低下を示すものであり、脳波の変化とともに脳の活動水準の低下が原因と考えられている。経行や坐禅前後の深呼吸は、坐禅中に生じた酸素不足を効果的に解消する。 禅宗寺院での坐禅は僧堂内で行われるが、流儀により庭など屋外でも行われ、そのための坐禅石を庭園に配した寺院もある。また夜坐と称し、夜間に坐禅を行う道場もある。さらに座るだけとは限らず類になる概念として、立禅や動禅・歩行禅・経行(きんひん)などがある。さらに日常生活すべてを修行とする曹洞宗では、清掃はじめ業務一切が「動の坐禅」であるという。 現存する坐禅の心構えや意義、方法を記した最も古いものが雲門宗の長蘆宗賾の著した『禅苑清規』に収められる「坐禅儀」であり、蘭渓道隆や道元も坐禅儀を書く上で手本にしたとされる。さらなる研究のための基本となる古典的資料としては以下のものがある。 道元 『普勧坐禅儀』『正法眼蔵』 瑩山紹瑾 『坐禅用心記』 場所や衣服など、坐法の儀則を具体的に述べた書。
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