古典的な分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/20 10:17 UTC 版)
古くは、ほとんどの緑藻は単一の分類群 (緑藻綱) に分類されていた。ただし緑藻の中でシャジクモ類は特異な多細胞体をもつため、他の緑藻とは分けて独立の綱や門に分類されることも多かった。また接合藻も接合という特異な有性生殖様式をもつため、独立の綱とされることがあった。 伝統的に、緑藻の系統関係は鞭毛性、糸状性、葉状など体制 (大まかな体のつくり) に基づいて考えられていた。また葉緑体や光合成色素、貯蔵多糖などの共通性から、陸上植物は緑藻から生じたと考えられていた (つまり緑藻は単一の分類群にまとめられていたが、単系統群と考えられていたわけではない)。陸上植物の祖先的な緑藻として、陸上に生育し比較的複雑な分枝糸状体を形成する緑藻であるフリッチエラ属 (Fritschiella) などが想定されていた (現在ではフリッチエラ属は緑藻綱カエトフォラ目に分類されており、陸上植物に近縁であるとは考えられていない)。 また緑藻はその体制に基づいて分類されていた。緑藻の古典的な分類体系の一例を下表に示す。この体系は、緑藻の分類体系が大きく変更される直前のころのものである。 古典的な緑藻の分類体系の1例:各分類群について、上段に古典的な分類体系における分類群の扱いや特徴を、下段に2020年現在の分類体系におけるその分類群の扱いについて記した。緑藻綱 Chlorophyceae Wille in Warming, 1884オオヒゲマワリ目 (ボルボックス目) Volvocales Oltmanns, 1904単細胞または群体、栄養体 (通常時の体) は鞭毛をもち遊泳する。単細胞性の種をクラミドモナス目 (Chlamydomonadales) として分けることもあった。また細胞壁を欠く種をドゥナリエラ目 (Dunaliellales) として分けることもあった。さらにクラミドモナス属のように細胞壁をもつ鞭毛細胞 (遊走子など一時的な細胞も含む) を形成する緑藻は、クラミドモナス藻綱 (Chlamydomonadophyceae) として分けられることもあった。 2020年現在一般的な分類体系では、オオヒゲマワリ目 (同じ意味でクラミドモナス目の名が用いられることも多い) は緑藻綱 (狭義) の1目とされ、オオヒゲマワリ属 (ボルボックス属、Volvox)、クラミドモナス属 (Chlamydomonas)、ドゥナリエラ属 (Dunaliella) などを含む。また下記のようにヨツメモ目やクロロコックム目などに分類されていた種の一部もオオヒゲマワリ目に含めるようになった。古典的な意味でのオオヒゲマワリ目に分類されていた種のうち、不等鞭毛をもつ種や有機質鱗片で覆われている種は1970年頃からプラシノ藻綱に分類されるようになり、さらに2020年現在ではマミエラ藻綱やネフロセルミス藻綱、ペディノ藻綱、クロロデンドロン藻綱、メソスティグマ藻綱などに分割されている。またウミイカダモ属 (Oltmannsiellopsis) はアオサ藻綱に移された。 ヨツメモ目 Tetrasporales Lemmermann, 1915単細胞または群体、鞭毛細胞に類似した細胞構造 (収縮胞、眼点など) をもつが、運動性の鞭毛を欠き (運動能を欠く鞭毛 [偽鞭毛、偽繊毛] をもつことはある)、栄養体は不動性である。寒天質に包まれたパルメラ状群体を形成するものが多い。オオヒゲマワリ目の種が不動性になったものに類似しており、またクロロコックム目との区別も明瞭ではない。 タイプ属であるヨツメモ属 (Tetraspora) は緑藻綱 (狭義) のオオヒゲマワリ目に属することが明らかになっているため、学名としてのヨツメモ目はオオヒゲマワリ目のシノニム (同物異名) である。ヨツメモ属以外でもオオヒゲマワリ目に属するものが多いが (Asterococcus、Characiochloris、Nautococcus など)、他に緑藻綱ヨコワミドロ目に移された属 (Schizochlamys) や、カエトペルティス目に移された属 (例:Chaetopeltis、Hormotilopsis)、クロロデンドロン藻綱に移された属 (Prasinocladus) などもある。 クロロコックム目 Chlorococcales Marchand, 1895単細胞または群体、栄養体は鞭毛を欠き、上記のヨツメモ目とは異なり細胞構造は鞭毛細胞の特徴 (収縮胞、眼点など) を示さない。群体性の種では、パルメラ状群体や定数群体など群体様式は多様。遊走子を形成しないものはクロレラ目 (Chlorellales) として分けられることもあった。 タイプ属であるクロロコックム属 (Chlorococcum) は緑藻綱 (狭義) のオオヒゲマワリ目に属することが明らかになっているため、学名としてのクロロコックム目はオオヒゲマワリ目のシノニム (同物異名) である。別の分類群に移されたものも多く、緑藻綱ヨコワミドロ目に移された属 (例:Neochloris、アミミドロ属、クンショウモ類、イカダモ類、Ankistrodesmus)、アオサ藻綱に移された属 (例:Pseudocharaciopsis)、トレボウクシア藻綱に移された属 (例:クロレラ属、Oocystis、Trebouxia、Botryococcus) などがある。 クロロサルシナ目 (クロロサルキナ目) Chlorosarcinales Groover & Bold, 1969サルシナ状群体 (複数の細胞が3次元的に密着した細胞塊) を形成し、母細胞壁は娘細胞の細胞壁になる (栄養細胞分裂 desmoschisis, vegetative cell division)。クロロコックム目との区別は明瞭ではなく、これに含めることも多かった。一方で細胞分裂様式を重視してカエトフォラ目に含めることもあった。 タイプ属であるクロロサルシナ属 (Chlorosarcina) は緑藻綱 (狭義) のオオヒゲマワリ目に属することが示されているため、学名としてのクロロサルシナ目はオオヒゲマワリ目のシノニム (同物異名) である。他にもオオヒゲマワリ目に属するものが多いが (Neochlorosarcina, Chlorosarcinopsis, Tetracystis など)、緑藻綱カエトペルティス目 (例:Floydiella)、トレボウクシア藻綱 (例:Myrmecia、Apatococcus)、アオサ藻綱 (例:Planophila, Desmochloris)、クロロキブス藻綱 (Chlorokybus) などに移された属がある。 ヒビミドロ目 Ulotrichales Borzì, 1895単核細胞からなる無分枝糸状体。接合は行わない。付着器で基物に付着しているものや、付着せずに浮遊しているものがある。特異な細胞壁をもつミクロスポラ属 (Microspora) も独立の目、ミクロスポラ目 (Microsporales) に分類されることがあった。また卵生殖を行う特異な糸状体を形成するキリンドロカプサ属 (シリンドロカプサ属、Cylindrocapsa) も独立の目、キリンドロカプサ目 (Cylindrocapsales) に分類されることがあった。 2020年現在の分類体系では、ヒビミドロ目はアオサ藻綱の1目とされ、ヒビミドロ属 (Ulothrix) とともに、アオサ目に分類されていたヒトエグサ属 (Monostroma) やモツレグサ目に分類されていたシリオミドロ属 (Urospora) なども含む。一方でヒビミドロ目から他の藻群に移されたものが多く、緑藻綱ヨコワミドロ目 (例:Microspora)、緑藻綱カエトフォラ目 (例:Uronema)、トレボウクシア藻綱 (例:Stichococcus、Geminella など)、クレブソルミディウム藻綱 (例:Klebsormidium など) に移された例がある。 ヨコワミドロ目 Sphaeropleales Luerssen, 1877糸状体または単細胞体であり、各細胞は多核で極めて細長い。糸状性のヨコワミドロ属 (Sphaeroplea) と単細胞性のアトラクトモルファ属 (Antractomorpha) がある。それぞれヒビミドロ目、クロロコックム目に分類されることも多かった。 2020年現在の分類体系では、ヨコワミドロ目は緑藻綱 (狭義) の1目とされる。クロロコックム目に分類されていたイカダモ類やクンショウモ類など多くの種もヨコワミドロ目に移されている。 カエトフォラ目 (ケートフォラ目) Chaetophorales Wille, 1901単核細胞からなる分枝糸状体。ヒビミドロ目に含めることもあった。一方でコレオケーテ属はコレオケーテ目として分けられることもあった。 2020年現在の分類体系では、緑藻綱 (狭義) の1目とされ、カエトフォラ属 (タマモ属、Chaetophora)、ツルギミドロ属 (Draparnaldia)、フリッチエラ属 (Fritschiella) などを含む。アオサ藻綱 (ヒビミドロ目、アオサ目、スミレモ目など) やコレオケーテ藻綱など他の分類群に移されたものも多い。 スミレモ目 Trentepohliales Chadefaud ex Thompson & Wujek, 1997カエトフォラ目と同様に分枝糸状体であるが、特殊化した遊走子嚢、配偶子嚢を形成する。陸生であり、カロテノイドを多量に蓄積して赤くなるものが多い。カエトフォラ目に分類されることも多かった。 2020年現在では、スミレモ目はアオサ藻綱の1目とされる。その範囲は古典的な分類と大きくは変わっていない。 サヤミドロ目 Oedogoniales Heering, 1914無分枝または分枝糸状体であり、各細胞末端に特徴的な鞘状構造が存在する。卵生殖を行い、鞭毛細胞は多数の鞭毛をもつ冠鞭毛性。全て淡水生。ヒビミドロ目に分類されることも多かった。 2020年現在では、サヤミドロ目は緑藻綱 (狭義) の1目とされる。3属 (サヤミドロ属、ブルボカエテ属、オエドクラディア属) を含み、目の範囲は古典的な範囲と変わっていない。 アオサ目 Ulvales Blackman & Tansley, 1902細胞層からなる膜状または多列糸状の体をもつ。細胞は単核性。カワノリ類はカワノリ目として分けられることもあった。 2020年現在では、アオサ目はアオサ藻綱の1目とされる。ヒトエグサ属やカプサアオノリ属、トリコサルキナ属はヒビミドロ目 (アオサ藻綱)、カワノリ属などはトレボウクシア藻綱カワノリ目、スキゾメリス属は緑藻綱カエトフォラ目にそれぞれ移されている。 モツレグサ目 Acrosiphonales Kornmann ex P.C. Silva, 1982無分枝または分枝糸状体であり、単核または多核細胞からなる。葉緑体は膜状で多数の孔をもつ。多核細胞の核分裂は細胞質分裂と同調して起こる。大型の藻体は配偶体であり、単細胞嚢状の胞子体との間で世代交代を行う。 2020年現在では、モツレグサ目に分類されていた種はアオサ藻綱ヒビミドロ目に分類されている。 シオグサ目 Cladophorales Haeckel, 1894多核細胞からなる無分枝または分枝糸状体であり、葉緑体は多数で網状に配置する。核分裂は細胞質分裂と同調していない。 2020年現在では、シオグサ目はアオサ藻綱の1目とされる。ミドリゲ目とされていた種を全て含む (下記)。 ミドリゲ目 Siphonocladales (Blackman & Tansley) Oltmanns, 1904大型の多核細胞からなる多細胞であり、多核嚢状の細胞が分割細胞分裂 (1度に多数の原形質に分割する) することによって藻体が形成される。葉緑体は多数で網状に配置する。 2020年現在では、アオサ藻綱シオグサ目に含められている。 カサノリ目 Dasycladales Pascher, 1931主軸と輪生する側枝からなり、基本的に隔壁を欠く。発生初期は複相単核であるが、やがて減数分裂を行い単相多核となり、配偶子嚢シストを形成、配偶子を放出して同形配偶を行う。 2020年現在では、カサノリ目はアオサ藻綱の1目とされる。その範囲は古典的な分類と変わっていない。 イワヅタ目 Caulerpales Feldmann, 1946多核嚢状の体をもつ。ほとんどは海に生育する。クダモ目 (管状藻目;Siphonales) とよばれることも多かった (ただしこの場合ミドリゲ目やカサノリ目も含むことがあった)。またハネモ目 (Bryopsidales) やミル目 (Codiales)、ツユノイト目 (Derbesiales)、チョウチンミドロ目 (Dichotomosiphonales) に細分することもあった。 2020年現在ではハネモ目の名が充てられ、アオサ藻綱の1目とされる。目の範囲は上記のイワヅタ目とほとんど変わっていない。 ホシミドロ目 Zygnematales C.E.Bessey, 1907 (接合藻 conjugating green algae)単細胞性または無分枝糸状体であり、アオミドロやミカヅキモなどよく知られた緑藻を含む。生活環を通じて鞭毛をもたない。栄養細胞が直接接して原形質が融合する特異な配偶子合体様式である接合を行う。緑藻綱に含めることが一般的であったが、独立綱 (ホシミドロ綱) として扱うこともあった。 微細構造学的研究から陸上植物に近縁な緑藻であることが示され、一時期はシャジクモ類やコレオケーテ属などとともにシャジクモ綱 (広義) に分類されていたが、2020年現在では、接合藻はホシミドロ綱として独立の綱として扱われることが多い。また2020年現在、接合藻内は、ホシミドロ目、チリモ目、スピログロエア目の3目に分けることが提唱されている (ただしこのうちホシミドロ目は側系統群である)。また接合藻 (旧ホシミドロ目) の範囲は現在でもほとんど変わっていないが、スピロタエニア属 (ネジモ属、ネジレオビ属; Spirotaenia) は他の接合藻とは縁遠く、クロロキブス属 (クロロキブス藻綱) に近縁であることが示唆されている。 シャジクモ目 Charales Dumortier, 1829節と節間の繰り返しからなる特異な多細胞体を形成し、緑藻としては例外的に複雑な生殖器官をもつ。特異な特徴を多くもつため、独立の綱とされることも多かった。また独立の門に分類されることもあった。 微細構造学的研究から陸上植物に近縁な緑藻であることが示され、シャジクモ綱 (車軸藻綱、シャジクモ藻綱) として独立の分類群として扱われている。特異な特徴をもつ藻群であり、古くからその範囲は変わっていない。同様に陸上植物に近縁であることが明らかとなった緑藻 (接合藻など) がシャジクモ綱に分類されたことがあるが (広義のシャジクモ綱)、このまとまりは側系統群である。
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古典的な分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 05:58 UTC 版)
落語の落ちとしては最も一般的な分類法だが、分類の視点が統一されていないなどの欠点があるため、新しい分類が複数考案されている。 地口落ち 駄洒落の落ち、「にわか落ち」とも。「転失気」「錦の袈裟」が代表例。 拍子落ち 調子よく話が進んで終わるもの。「山号寺号」が代表例。 逆さ落ち 立場が入れ替わるもの。「一眼国」「初天神」が代表例。 考え落ち パッと聞いたところではよく分からないがその後よく考えると笑えてくるもの。「野ざらし」「疝気の虫」が代表例。 まわり落ち 結末が、噺の最初に戻るもの。「のっぺらぼう」が代表例。 見立て落ち 意表をつく結末になるもの。「もう半分」が代表例。 間抜け落ち 間抜けなことを言って終わるもの。「時そば」が代表例。 とたん落ち 決めの台詞で終わるもの。「厩火事」「弥次郎」が代表例。 ぶっつけ落ち 全く関係のないことで終わりにする。「やかん」が代表例。 しぐさ落ち 身振りで表して終わるもの 話芸による落語のなかでも特異であると言える。演者が実際に高座で倒れる「死神」が代表例。 冗談落ち 本来の下げまで語ると持ち時間内で収まらないとき、切りの良い所で「冗談言っちゃいけねえ」と終わらせる。
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古典的な分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2016/03/13 01:25 UTC 版)
ウォーターフォール・モデルなどの古典的開発手法では、以下のようにプログラム仕様を分け、トップダウン的に作成していく。 基本仕様(Basic specification)は、要求仕様に基づいて、機能概要、機能構成、ハードウェア構成、運用の前提条件、性能や品質の要件などを記述する。最近では、要求分析でかなり詳細な要求仕様が作成されるため、基本仕様という形態では文書を作成しないこともある。 機能仕様(Functional specification)は、ソフトウェア開発においてプログラムや大規模なソフトウェアシステムの動作を記述した一連の文書を指す。これら文書は、主にソフトウェアが受け付けるべき入力を列挙し、それら入力に対してそのシステムがどのように動作するかを記述する。 詳細仕様(Detail specification)は、具体的なコードの実装を説明する文書である。技術仕様とも呼ばれる。採用する開発手法によってはソースコードドキュメンテーションとしてソースファイル内に詳細仕様を記述することもある。例えばエクストリーム・プログラミングでは、このような仕様を独立した文書として書くことはない。 以下では機能仕様について解説する。
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