古典的な分配関数による導出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/16 21:59 UTC 版)
「ザックール・テトローデ方程式」の記事における「古典的な分配関数による導出」の解説
古典系における分配関数を扱うため、十分に温度が高い状態を考える。まず3次元の体積 V の容器の中を運動する1個の粒子を考えると、この1粒子系のハミルトニアン H は H ( p , q ) = 1 2 m ( p 1 2 + p 2 2 + p 3 2 ) + U ( q 1 , q 2 , q 3 ) {\displaystyle H(p,q)={\frac {1}{2m}}(p_{1}^{2}+p_{2}^{2}+p_{3}^{2})+U(q_{1},q_{2},q_{3})} と表される。U(q) は粒子が容器内に囚われていることを示すポテンシャルエネルギーであり、容器の中では 0 になり、外では十分に大きな正の値をとる。このハミルトニアンを使うと、温度 T の平衡状態での分配関数は位相空間上での積分より Z 1 = ∫ ( ∏ i = 1 3 d p i d q i h ) e − H ( p , q ) / k T = 1 h 3 { ∏ i = 1 3 ∫ − ∞ ∞ d p i e − p i 2 / ( 2 m k T ) } ( ∫ V d 3 q e − U ( q ) / k T ) = ( 2 π m k T ) 3 / 2 h 3 ⋅ V = V Λ 3 {\displaystyle {\begin{aligned}Z_{1}&=\int \left(\prod _{i=1}^{3}{\frac {dp_{i}dq_{i}}{h}}\right){\text{e}}^{-H(p,q)/kT}\\&={\frac {1}{h^{3}}}\left\{\prod _{i=1}^{3}\int _{-\infty }^{\infty }dp_{i}\,{\text{e}}^{-p_{i}^{2}/(2mkT)}\right\}\left(\int _{V}d^{3}q\,{\text{e}}^{-U(q)/kT}\right)\\&={\frac {(2\pi mkT)^{3/2}}{h^{3}}}\cdot V\\&={\frac {V}{\Lambda ^{3}}}\end{aligned}}} となる。ここで Λ {\displaystyle \Lambda } は前述の熱的ド・ブロイ波長である。運動量による積分はガウス積分を用いて計算した。 次に粒子数を増やして N 個の粒子を考える。気体粒子同士は相互作用をしないものとする。さらに各粒子は区別できないものとすると、N 粒子系の分配関数は Z = 1 N ! Z 1 N = 1 N ! V N Λ 3 N {\displaystyle Z={\frac {1}{N!}}{Z_{1}}^{N}={\frac {1}{N!}}{\frac {V^{N}}{\Lambda ^{3N}}}} となる。ここからヘルムホルツエネルギーは F = − k T ln Z = − N k T ln V N Λ 3 − N k T {\displaystyle F=-kT\ln Z=-NkT\ln {\frac {V}{N\Lambda ^{3}}}-NkT} となる。ここで階乗の対数はスターリングの近似 ln N! ≈ NlnN − N を用いて評価している。従って、エントロピーは S = − ∂ F ∂ T = N k ln V N Λ 3 + 5 2 N k {\displaystyle S=-{\frac {\partial F}{\partial T}}=Nk\ln {\frac {V}{N\Lambda ^{3}}}+{\frac {5}{2}}Nk} となり、ザックール・テトローデ方程式が導かれる。 さらに圧力は p = − ∂ F ∂ V = N k T V {\displaystyle p=-{\frac {\partial F}{\partial V}}={\frac {NkT}{V}}} となり、この系が理想気体の状態方程式を満たすことが分かる。また、内部エネルギーは U = F + T S = 3 2 N k T {\displaystyle U=F+TS={\frac {3}{2}}NkT} となる。
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