古典的な儀式魔術における召喚
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/01 14:12 UTC 版)
「召喚魔術」の記事における「古典的な儀式魔術における召喚」の解説
エドワード・ケリー、死者の霊を召喚するの図(18世紀の占星術師エベニーザー・シブリー(英語版)による) グリモワールに記された降霊術においては、黄金の夜明け団以降の儀式魔術とは異なり、召喚と喚起の区別はない。対象が悪霊であるか天使であるかを問わず、evocation ではなく invocation の語が用いられることが多い。 中世後期には、降霊術は一般にネクロマンシー (necromantia) またはニグロマンシー (nigromantia)と呼ばれた。ネクロマンシーの原義は「死者(ネクロイ)を介した予言(マンテイア)」であり、「口寄せ」と和訳されることもある。中世の著述家らは、死者が復活するなどあり得ず、ネクロマンシーに現れるのは亡者のふりをしたデーモンであろうと考えた。中世宗教史の研究者リチャード・キークヘファーによれば、その延長で、悪霊を呼び出すこと全般をネクロマンシーと呼ぶようになったという。ニグロマンシーはラテン語の niger(黒)に引きずられた呼称で、しばしば黒魔術と和訳されるが、中世ではネクロマンシーの同義語として区別なく用いられた。 降霊術において悪霊に命令することを英語で conjuration、adjuration といい、いずれも悪魔払いの意味でも用いられる言葉である。ラテン語の動詞 conjuro、adjuro、exorcizo は対象の霊に対して強請(強制・懇請)するという同様の意味をもっていた。exorcizo は元は七十人訳聖書や新約聖書に用例がある「厳命する、誓わせる」といった意味のギリシア語に由来するラテン語であり、聖職者が行う悪魔払い(エクソシズム)においては「(悪霊を)厳命によって追い払う」という意味で用いられる。リチャード・キークヘファーは、降霊術の悪霊強制の呪文と祓魔式の文句を比較検討し、中世の用法では、悪霊を呼び出すか追い払うかという意図の違いを問わず、ラテン語の conjuratio と exorcismus は互換性のある用語であった、と論じている。また、14世紀以降の祓魔式では、祓魔師が悪魔に害されぬよう、憑かれた人を輪の中に横たえることが行われたことから、降霊術の魔法円にも祓魔式の応用という面があると指摘されており、「祓魔式で悪魔を命令によって追い払うことができるのなら、呼び出して命令することもできる」という発想は民衆の間に広まっていた、とする論者もいる。かつて下位の聖職階級のひとつに祓魔師があり、これに叙階されたことのある者が実際に祓魔を行う機会があるとは限らなかったが、中には道を外れて悪魔を呼び出そうとする者もいたとみられる。中世後期には、定職にあぶれ、教会の統率を受けず、降霊術などに手を染めかねない周縁的聖職者層が存在し、キークヘファーの言う“聖職者の地下世界” (clerical underworld) が形成されていた。降霊術を行った廉で告発された者の中には時として俗人や女性もいたが、聖職者が多かった。
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