原子力空母の横須賀配備
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「在日米軍再編」の記事における「原子力空母の横須賀配備」の解説
中間報告とは別に日米政府は2005年10月27日、神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地で横須賀港を事実上の母港とする通常動力型空母キティホークの退役に伴い、後継としてニミッツ級原子力空母を2008年より配備することに合意した。シーファー駐日米大使が同日、外務大臣町村信孝との会談でこの決定を通告、外相はこのときに受け入れを承諾したとされた。同日の記者会見の質疑で外相は、それ以前に連絡はなかった、と言明していたからである。しかしその後、中日新聞(東京新聞)は11月12日、横須賀配備について一年以上前から日米で極秘裡に検討されていたと報じている。東京新聞の記事は、2004年夏から外務省と防衛施設庁それぞれ数人ずつの幹部に限定して受け容れ準備の検討をすすめていたとし、検討にあたって米国側から原子力空母寄港時には原子炉を停止すると説明を受けたこと、原子炉の安全確保のために浚渫(しゅんせつ - 海底をさらって土砂を取り除き水深を深くすること)が必要であると日本側が認識していたこと、原子炉停止時に必要となる給電設備の改修を米国側が要請していたこと、など具体的な検討内容を指摘している。 原子力空母配備の背景には、米国政府の世界的な米軍再編の一環として横須賀基地の重視の意図があったとされる。米国元国務副長官・アーミテージが過去の在日米軍再編協議の場で、横須賀基地(横須賀港)の恒久的な利用は米国にとっての重要課題であると強調してきた経緯があるためだ。 この合意に対し、訪米中の神奈川県知事・松沢成文は同日、「憤りを感じる。地元の意向が無視され、極めて遺憾だ」、「政府は地元の意向を尊重すると言うが、結局は一方的に地元に通告するだけだ。何のための日米交渉なのか全く分からない」、「原子力空母配備を当然と考えていたなら、なぜわれわれが(通常艦配備を)要望に行った段階でそう言わないのか」と取材陣に訴え、憤りの表情を隠さなかった。 また、訪米日程を終えた知事は、10月31日に知事を訪れた横浜防衛施設局局長から在日米軍再編の中間報告について説明を受けた際も、知事は「地元負担の具体的な軽減が見られない。厳しく交渉し、軽減を求めたい。国も応じる義務がある」と強い反発をあらわにした。 地元の横須賀市議会においても11月2日、臨時議会を開き、配備の日米合意撤回を求める意見書を保守系含め全会一致で採択し、外相に手交、首相には郵送したとされる。 一方、10月27日(配備通告の日)にシーファー大使から電話で通告を受けていた横須賀市長・蒲谷亮一は11月10日、赤坂の米国大使館で同大使と初面談、配備は納得しがたいと述べた。しかし大使は、原子力空母の配備しか現実的にあり得ないと市長に回答している。その足で外務省を訪れた市長は、これも初面談の外務大臣・麻生太郎に合意撤回の働きかけを求めたが、外相はすでに日米政府間で合意ずみだと回答して市長の要請を拒否、「地元の理解を得るよう最大限努力していく」と述べるにとどまった。 朝日新聞のインタビューに応じた松沢知事は11月23日付同紙で、米側に譲歩する可能性を求めて徹底的な交渉を国に求めてきたにもかかわらず、外務省は交渉すらせず、米国の決定を安全性の担保もなく二つ返事で承諾したと指摘、「許せない」と述べ、今後も横須賀市長と連携しながら徹底して配備に反対していく、とその決意を述べている。 米海軍は2005年12月2日(現地時間)、バージニア州ノーフォーク基地を2005年現在の母港としているニミッツ級原子力空母ジョージ・ワシントンを、キティホークの後継艦として横須賀基地へ配備するむね正式発表した (USN Story Number: NNS051202-06)。 神奈川県知事・松沢成文は、正式発表と外務省北米局からの通告について12月5日の記者会見で「アメリカ側も米軍側も、地域のコミュニティとはできるだけ仲良くお付き合いしたいと言っているわけですが、その言ってる割には、まだアメリカの大使館からも一切の説明もないと。これでは仲良くしたいしたいと言われても、説明すら来ていないというのは、私は国務省、アメリカ大使館、非常に怠慢だと思いますし、ちょっと失礼ではないかというふうに感じております」と米国の対応に不快感を表明。また知事が示唆した通常艦の可能性が残っている根拠について答え、「私は直接アメリカに行っても訴えましたし、議会の中ではまだそういう(通常艦配備の)意見も残っているということで、最後まで頑張ろうと、今、横須賀市長と相談しながら対応している」と現在の状況を説明、米国議会が「通常艦の延命、まあジョン・F・ケネディだけじゃなくてキティホークも含めて、延命策というのもあるんだというようなシグナルも日本側に送っている」との認識を明らかにし、外務省の一方的な対応を「極めて地方無視、失礼ですよね」と述べて批判した。 2006年6月14日、蒲谷市長は横須賀市議会の全員協議会で「原子力空母の受け入れもやむを得ない」と表明した。「唯一残っている通常型空母ジョン・F・ケネディは、空母としての肝心な機能が失われるほど損傷が著しいため、もはや日本と東アジアを守ることはできない」と麻生太郎外務大臣が断言したという理由で、それならば市民の安全を守り、市民に不安を与えないために、必要な体制整備等を日米両政府に強く求めていく、というものである。 これを受け松沢知事も、8月17日、原子力空母受け入れはやむを得ないと発表。理由として、通常型空母の配備の可能性が皆無なこと、原子力空母の安全性について日米両政府から最大限の見解が示されたことなどを挙げた。
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