モデル35 ボナンザ
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「ビーチクラフト ボナンザ」の記事における「モデル35 ボナンザ」の解説
ビーチ社では第二次世界大戦中から、来るべき戦後の民間航空市場向けの小型単発機の開発に着手していた。戦前、ビーチ社ではモデル17が好評で、複葉機ではあったが4人乗り単発機に大きな星形エンジンと引込脚を搭載した「小型ながらも豪華な高速機」であった。 モデル35の開発コンセプトは「大人4人と手荷物が積める、自動車のように手軽で快適な軽飛行機」というもので、構造的には全く一新し、単葉・全金属製・水平対向エンジンを採用、斬新なデザイン(V字尾翼配置、美しい窓周り、モダンな内装)、小型軽量化など、新しい時代に合わせた「小型ながらも豪華な高速機」であった。 インスツルメント・パネルは明るい色彩に曲線を多用し、従来の航空機の計器盤というより自動車のダッシュボードに近いものである。特徴的なスローオーバー式操縦桿も、通常は操縦することの少ない前席右席の同乗者の快適さに貢献(操縦桿を取り除くことで膝まわりのスペースを広く)することを目的としていた。 発売初年度に1500機を生産する程の爆発的な売れ行きを見せたボナンザは、当時のアメリカ製乗用車がそうであったように、毎年改良されニューモデル(イヤーモデル)として発表された。その後1982年まで生産が続き、モデル35だけで10000機以上生産され、その名の通り「最も成功した商業製品のひとつ」となった。 モデル35(1947年) 1486機生産。V尾翼の角度は120度、主翼桁は鋼管構造、前輪は操舵機能を持たない。当初、搭載エンジンはコンチネンタル社製 E-165(165hp)であったが、モデルイヤー半ばでE-185-1(185hp/2300rpm)に出力増加された。プロペラはビーチクラフト自製の木製2翅電動可変ピッチ、ソリッドステート電子制御による定速装置は遠心式ガバナーを備えない。最初期40機はエルロンとフラップが帆布張りである。 モデル35R(1947年) 14機生産。 モデルA35(1949年) 701機生産。主翼桁構造をアルミ板組み立て(ボックス形状)に変更、機体強度向上、ギア、フラップ下げ速度の引き上げ、前輪の操舵が可能になる。耐空U類。 モデルB35(1950年) 480機生産。出力向上、コンチネンタル社製 E185-8(196hp/2450rpm)搭載。最大フラップ下げ角が増加(20度→30度)、操縦桿はパイプ形状から、平面的な形状(Energy-absorbing Control Wheel)に変更。 モデルC35(1951年) 309機生産。出力向上、コンチネンタル社製 E185-11(205hp)搭載。プロペラが木製からアルミ製に材質変更。YAW方向の安定性増加の為、V尾翼角度を変更(120度→114度)するとともに、弦長が20%延長された。主翼根元にフィレット追加。収納式の乗降ステップ。 モデルD35(1953年) 298機生産。 モデルE35(1954年) 301機生産。搭載エンジンが E185-11(205hp) 又は E225-8(225hp/2450rpm)の二種類からの選択式になった。電動式プライマー。エルロントリム装備。 モデルF35(1955年) 392機生産。クオーターウインドウ(3rd Cabin Window)追加。V尾翼の構造強化。二種類のエンジンから選択式であったが、大抵の顧客はパワフルなE-225-8を好んだ。オプションで翼内追加燃料タンク(10Gal/each)。 モデルG35(1956年) 476機生産。搭載エンジンはE-225-8(225hp)一種類のみ。これは前年殆どのオーナーがパワフルなE225を選択したことに起因する。ウインドシールドを増厚(1/4")し、静粛性向上。ギア下げ速度が更に引き上げ。 モデルH35(1957年) 464機生産。出力増加、コンチネンタル社製 O-470-G(240hp)搭載。V尾翼の構造強化。 モデルJ35(1958年) 396機生産。燃料噴射装置装備、コンチネンタル社製 IO470-C(250hp)搭載。 モデルK35(1959年) 436機生産。翼端形状の変更。オプションで後部荷物室に第5席が装備可能。 モデルM35(1960年) 400機生産 モデルN35(1961年) 280機生産。コンチネンタル社製 IO-470-N(260hp)搭載。後部クオータウインドウを大型化、乗降用ステップを胴体固定式に変更。 モデルP35(1962年) 467機生産。計器盤デザイン変更、機長席正面の主要計器がフローティングマウントになり、右席前にアビオニクス用スタックを縦列配置し、装備面積を増加した。 モデルS35(1964年) 337機生産 胴体を延長し、最後部第三列にオプションで5-6席目を追加装備可能になったほか、後部クオータウインドウの形状変更。出力増強、コンチネンタル社製 IO-520-B(285hp)搭載、出力向上に応じてエンジン取付角を変更し、離陸時・上昇時の反トルクによる左偏向を減少させた。 モデルV35(1966年) 555機生産。前面風防の中桟を廃止し、一枚ものへ変更、前方視界の向上。 モデルV35A(1968年) 413機生産 前面風防が空気抵抗を低減する形状に変更 "Speed-Sweep" windshield モデルV35B(1970年 - 1982年) 1325機生産。1972年天井配置の換気装置を増設。1978年には電装品が24ボルト仕様になり、脚の引上機構の改良、引込に要する時間の短縮(約4秒)。1982年の21機をもって生産終了。 V型尾翼 ターボ過給モデル モデルV35TC(1966年) 79機生産 モデルV35A-TC(1968年) 46機生産 モデルV35B-TC(1970年) 7機生産 1970年に7機生産された時点で生産終了。
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