赤十字社 保護標章

赤十字社

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/17 09:41 UTC 版)

保護標章

赤十字及び赤新月の標章(類似のものを含む)は、「戦地にある軍隊の傷者及び病者の状態の改善に関する1949年8月12日のジュネーブ条約」(ジュネーブ諸条約の第一条約。傷病者保護条約)第44条により赤十字社・赤新月社と「軍隊およびこれに準ずる組織の医療・衛生部隊の人員・施設資機材」、さらにはジュネーヴ諸条約第一追加議定書(1977年)第8条により、(軍民を問わない)「医療組織、医療用輸送手段、医療要員、医療機器、医療用品、宗教要員、宗教上の器具及び宗教上の用品の保護」のために用いられる。これは、赤十字・赤新月の関係者・施設資機材は、人道上、戦地・紛争地でのあらゆる攻撃から無条件で保護されねばならない存在だからである。単に医療施設を表すのではないことが厳格に規定されている。ただし、各国赤十字社・赤新月社から許可を受けた上での、救急車や救護所での平時の使用は例外的に認められている(第1条約第44条第4項)。

日本国内においては、「赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律」によって、第1条に規定された赤十字、赤新月、赤のライオン及び太陽[注 4]の標章及び名称の使用は、日本赤十字社(第2条)及びその許可を受けた者(第3条)のみに制限されており、みだりに使用した場合は懲役または罰金刑に処される(第4条)。(公記号偽造罪・公記号不正使用罪が適用されることもある)しかし、一般の病院薬局テレビ番組広告などでの誤った使用が後を絶たないことから、日本赤十字社では誤用しないように呼び掛けている[12][13]。ただし、平成14年図式地図記号では、病院を示す記号にホームベース型をした五角形の中に十字が入る記号が制定されており、保健所を示す記号に円形の中に十字が入る記号が制定されている[14]。由来は病院が旧陸軍の衛生隊のマーク[15]、病院の記号を元に変更されたものが保健所とされている[16]。 医療や福祉関連以外では、キックボクサー羅紗陀が、2005年のデビューから2009年までのリングネームに「赤十字竜」(あかじゅうじりょう)を名乗っていたため、日本赤十字社からの抗議を受けリングネームを改称している[17]

なお、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律第157条第2項では、武力攻撃事態等においては、指定行政機関の長又は都道府県知事が、医療機関や医療関係者に赤十字標章等を使用させることができるとされている。

また、商標法第4条第1項第4号においては、赤十字の標章及び名称等の使用の制限に関する法律第1条の標章及び名称については、商標登録を受けることができないとされている[18]


注釈

  1. ^ これにより、中華民国紅十字会は中国の赤十字社として承認されていない。
  2. ^ 王制当時のイランにおける「イラン赤獅子太陽社」・イラン革命で王制が倒れて以後の1980年からは使用されていないが、国際条約や関係法令の条文上には現在も残っており、正式に「保護標章」として用いることが可能である。
  3. ^ ただし、中の白地部分に独自のマークを入れて用いるのはあくまでも「表示標章」としての場合に限られ、「保護標章」としては赤水晶を単独で用いる必要がある・詳細は日本赤十字社『赤十字と国際人道法普及のためのハンドブック』p.28-30および井上忠男『第2版 医師・看護師の有事行動マニュアル』第7章を参照
  4. ^ ダビデの赤盾や赤水晶については明文規定がないが、「これらに類似する記章若しくは名称は、みだりにこれを用いてはならない。」とされている。

出典

  1. ^ Annual Report 2019 - International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies”. IFRC. 2020年11月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月18日閲覧。
  2. ^ https://www.jrc.or.jp/about/naritachi/ 「国際赤十字の成り立ち」日本赤十字社 2017年5月13日閲覧
  3. ^ a b https://www.jrc.or.jp/about/principle/ 「赤十字基本7原則」日本赤十字社 2017年5月13日閲覧
  4. ^ 「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p135-136 井上忠男 PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  5. ^ 土井かおる『よくわかるキリスト教』PHP研究所、2004年、117ページ
  6. ^ 「赤十字標章ハンドブック―標章の使用と管理の条約・規則・解説集」p6-7 東信堂 2010年3月
  7. ^ 「赤十字標章ハンドブック―標章の使用と管理の条約・規則・解説集」p8 東信堂 2010年3月
  8. ^ 『知っていますかこのマークの本当の意味』日本赤十字社、2018年4月1日、10頁。 
  9. ^ 赤十字新聞 第794号 2006年7月1日発行
  10. ^ 「赤十字標章ハンドブック―標章の使用と管理の条約・規則・解説集」p14 東信堂 2010年3月
  11. ^ 知っていますか?このマークの本当の意味
  12. ^ 赤十字マーク誤用しないで 「法律違反」と日赤 共同通信(47NEWS)、2008年5月2日
  13. ^ 「知っていますか?このマークの本当の意味」日本赤十字社 2007年1月初版発行
  14. ^ 地図記号一覧国土地理院
  15. ^ 地図記号:病院
  16. ^ 地図記号:保健所
  17. ^ 2009年11月27日ニュースニュージャパンキックボクシング連盟
  18. ^ 商標審査基準 第4条第1項(不登録事由) 第1項第4号(赤十字等の標章又は名称)
  19. ^ 井上忠男「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p48-54、PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  20. ^ 井上忠男「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p59-62、PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  21. ^ 井上忠男「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p63、PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  22. ^ 井上忠男「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p80-81、PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  23. ^ https://www.jrc.or.jp/about/history/ 「歴史・沿革」日本赤十字社 2017年5月12日閲覧
  24. ^ https://www.jrc.or.jp/about/plaza/display/vol12/ 「赤十字情報プラザ 展示紹介一覧 vol.12 国際舞台にデビュー」日本赤十字社 2017年5月12日閲覧
  25. ^ 「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p209 井上忠男 PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  26. ^ 「戦争と救済の文明史 赤十字と国際人道法のなりたち」p232-233 井上忠男 PHP新書 2003年5月2日第1版第1刷
  27. ^ https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/k_jindo/naiyo.html 「ジュネーヴ諸条約及び追加議定書の主な内容」日本国外務省 2017年5月13日閲覧
  28. ^ https://www.jrc.or.jp/about/humanity/history/ 「国際人道法のあゆみ」日本赤十字社 2017年5月13日閲覧
  29. ^ 「国際4つの自由賞2014」~赤十字の活動が表彰されました|日本赤十字社”. www.jrc.or.jp. 2019年2月15日閲覧。
  30. ^ 日本赤十字新聞
  31. ^ “ガザ、救急車も標的。11台破壊、医療関係者44人死傷”. Asahi.com (朝日新聞社). (2009年1月9日). https://www.asahi.com/special/09001/TKY200901090007.html 2012年6月7日閲覧。 
  32. ^ “シリア赤新月社、ホムスに初の支援物資届ける 車両狙った攻撃も”. AFP (フランス通信社). (2014年2月9日). https://www.afpbb.com/articles/-/3008094 2014年2月12日閲覧。 
  33. ^ 赤十字への攻撃辞さず=タリバンが声明-アフガン”. 時事通信社 (2018年8月15日). 2018年8月19日閲覧。
  34. ^ https://www.afpbb.com/articles/-/3397869?cx_amp=all&act=all






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