平衡感覚 平衡感覚の概要

平衡感覚

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/20 13:02 UTC 版)

ブランコで揺られることは三半規管の機能強化・平衡感覚の向上に役立つ

概要

がどちらを向いているか、どれくらい傾いているか、動いているかどうかといった情報は運動能力のある生物においては重要である。このような情報を受け取るのが平衡感覚である。一般的に、これは体に働く加速度を受け取る形で得られ、それを受容する装置は、以下のものがある。

ヒトの平衡感覚

左上が三半規管、右下が蝸牛

平衡感覚は内耳の前庭で受容される前庭感覚 vestibular sensation と同義に考えられることが多いが、体の平衡には前庭感覚の他に深部感覚皮膚感覚、また殊に視覚が重要に作用する。前庭器系、視器系、深部感覚系の3系統が有機的に働き、前庭眼反射回路、眼運動反射回路、深部感覚運動系、自律神経系反射系が、脳幹小脳大脳視床下部その他の感覚器官と連携することで平衡感覚の機能が維持されるといわれている。

前庭には角加速度を受容する三半規管(骨半規官)と直線加速度を受容する球形嚢、卵形嚢がある。いずれも二重の嚢構造をもち、外側の嚢は外リンパ、内側の嚢は内リンパで満たされている。内リンパ嚢には刺激を受けやすい受容器があり、受容細胞は聴器の蝸牛と同様に有毛細胞である。一次求心神経は内耳神経(第VIII脳神経)のうちの前庭神経で、これが延髄の前庭神経核に入り、ここからの出力は脊髄、眼筋運動ニューロン、小脳、網様体視床大脳皮質、視床下部へと複雑に分枝するが、ほとんどが反射的調節に寄与する。

ハーバード大学医学部によると、平衡感覚が優れている人は長生きする傾向がある[2]

迷路反射

迷路を刺激して現れる反射を迷路反射(英:labyrinthine reflex、独:Labyrinthreflex)といい、前庭眼反射、前庭脊髄反射、前庭自律神経反射がある。前庭眼反射は迷路刺激による眼振(眼球振盪。眼球の不随意的往復運動)として現れ、前庭脊髄反射は迷路刺激によって現れる体平衡の異常をいう。また前庭自律神経反射は迷路刺激によって現れる自律神経反射であり、めまい感、悪心嘔吐を含む。

乗り物酔いなどの動揺病(加速度病)は前庭から視床下部への過度の信号により自律神経系に異常を来すため起こるものとされる。

前庭眼反射

前庭刺激によって起こる眼球運動系の反射が前庭眼反射(英:vestibulo-ocular reflex、独:vestibulookulärer Reflex)である。代表的なものとして眼振、回転刺激などにより現れる回旋性眼振がある。現れる眼球振盪の緩徐相速度は、入力する刺激の大きさに相関する。この反射路は前庭感覚器より前庭神経、前庭神経核を経由して内側縦束、網様体を通り、眼球運動核に至る経路が最も代表的である。

平衡機能障害

平衡機能障害(英:disequilibrium、独:Gleichgewichtsstörung)は反射系と中枢系の連携障害、体平衡系の異常によって起こる現象で、原因を大別すれば、内耳を含めた末梢神経系(前庭系)の障害と中枢神経系の障害とがある。

末梢前庭系の病態による障害では、急性に発症する場合と緩やかに発症する場合とで病態が異なる。急性期の発症では反復性のめまいとともに方向一定性眼振、耳症状を伴う。頭位変化が大きく影響し、嘔吐が見られることがある。主に内耳障害、メニエール病、耳硬化症、突発性難聴などがある。比較的緩やかに進行する場合には中枢性の代償によりめまい感、眼振は少ない。

一方、中枢神経系の病態により発症する平衡機能障害は注視方向性眼振や他の神経症状を伴う。主に小脳や脳幹など体平衡に関係する部分の異常による循環障害(脳血管障害など)、変性疾患、腫瘍などがある。中枢系の病態に認められるめまいは軽症ではあるが持続性である。


  1. ^ 平衡胞. コトバンクより。
  2. ^ Godman, Heidi (2022年9月1日). “Better balance may mean a longer life” (英語). Harvard Health. 2022年8月18日閲覧。


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