将棋の戦法 概説

将棋の戦法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/25 10:06 UTC 版)

概説

分かりやすく言うと「攻撃」と「守備」のやり方、つまり「攻め」と「守り」のやり方のことである。

将棋では攻撃と守備のバランスが重要である。初心者がまず最初に覚えるべきこと、そして序盤で実際に重要になることは、守備の体制をつくることであり[1]、もし玉将の周囲を手薄にしていれば、相手から容易に王手がかけられ(まるで流れ弾が当たったように)あっけなく詰んで負けてしまうことが起きる(トン死)。将棋の守備の典型が囲いである。しかし攻撃においても守備と同等、あるいはそれ以上に重要であり、自分の王の周囲の護りをがっちり固めるだけで相手の王を攻撃をしなければ、(護りが固ければ確かに「負けはしない」が)いつまでたっても勝てはしない。したがって将棋では一般に、守備と攻撃の両方を行う。

飛車は攻撃に用いられる駒であり、もし飛車を元の右側の位置に置いたままにしたら右側が「攻めの陣」ということになるので、玉のほうは反対サイドの左側へ移動させ、その玉の周囲を(金将銀将などで)守り「守りの陣」とするのである[1]。逆に飛車を左方へ移動させ左側を「攻めの陣」としたら、玉は右側へと移動させその周辺を「守りの陣」とする[1]。つまり基本的には、攻めに使う駒(端的に言うと飛車)の位置と、守らなければならない一番重要な「玉」の位置は離すようにするのである[1]

基本のセオリーはこうなっており、入門者が「初心者」や「中級者」になるにはまずこうした基本のセオリーに沿った戦法を学び、しっかりと習得するわけである。ただし中級者以上になると、時としてこの基本セオリーを敢えて外すような戦法を使うこともある(詳細は下の節で解説)。

なお「戦法」という言葉は、もともと古い漠然とした言葉であり、現代的に言えば二つの意味・用法がある。一つは総称としての「戦法」、つまり「戦い方」そのものをまとめてざっくりと指す用法を示し、もう一つはかなり限定的な意味での「戦法」という用法を示す。いってみれば、現代の戦争用語の「戦略 / 戦術」という概念について、戦法で両方の概念をまとめて指している場合と、戦法で後者の戦術だけを限定的に指している場合がある、と言ってもよい。つまり文脈によって「戦法」の意味が異なる。


注釈

  1. ^ 矢倉囲いに対して左美濃に囲うことを骨子とする居角左美濃急戦など(斎藤慎太郎『常識破りの新戦法 矢倉左美濃急戦 基本編』マイナビ出版、2017年。ISBN 978-4839961725 )。
  2. ^ 超速▲3七銀や丸山ワクチンには急戦・持久戦どちらの変化もある。
  3. ^ 一度四間飛車に振り、角交換をした後に向かい飛車に振り直す。
  4. ^ 角交換四間飛車に対して、ダイレクトに向かい飛車に降るため、こう呼ばれる。

出典

  1. ^ a b c d 日本将棋連盟公式サイト、高野秀行六段 執筆、【はじめての戦法入門-第1回】「まずはじめに覚えておくべき3つのセオリー」
  2. ^ 大内延介『穴熊戦法 : イビアナ・振り飛車穴熊のすべて』創元社、1990年。ISBN 978-4422750729 
  3. ^ 畠山鎮『これからの相矢倉』マイナビ出版、2015年。ISBN 978-4839954390  米長邦雄『矢倉戦の攻防』昭文社、1992年。ISBN 978-4398235015 )。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 所司(2010)
  5. ^ a b c d e f g h i 先崎(2012)
  6. ^ a b c d 花村(2001)





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