あかん‐こくりつこうえん〔‐コクリツコウヱン〕【阿寒国立公園】
阿寒国立公園
阿寒は、森と湖と火山の公園である。3つのカルデラ湖は、あるものは火口の底に静まりかえり、あるものはマリモを育み、また、あるものはかつて湖底噴火により失った生命を、今取り戻そうとしている。硫気を激しく噴き出す火山は、地球の息吹を見る人に伝える。そして、北方針葉樹林が、それらすべてを深い静寂の中に包み込んでいる。
マリモを育む阿寒湖
阿寒、屈斜路(くっしゃろ)、摩周の3つのカルデラ地形を基盤とする公園である。昭和9年に指定され、52年に一部区域を追加した。
阿寒カルデラは、雄阿寒(おあかん)岳(1,371m)、雌阿寒(めあかん)岳(1,499m)などの山岳と、阿寒湖、ペンケトー、パンケトーなどの湖沼、及びそれらを囲む深い森林からなる。
阿寒湖(13km2)は何よりもマリモで有名である。湖中のチウルイ島にはマリモ展示館があり、展示されているマリモを観察することができる。湖岸には小島を配し、東岸に立つ雄阿寒岳を望む眺望がすぐれている。雌阿寒岳は、今も噴気を上げる火山であり、山頂部は荒涼とした荒原である。西麓には針葉樹林の中にオンネトーがある。
阿寒湖と弟子屈(てしかが)を結ぶ阿寒横断道路の双湖台付近から望む風景は、日本の森林景観の中で上位に入るものの一つであろう。エゾマツやトドマツにダケカンバを交えた森林が一帯を覆い、その中にペンケトー・パンケトーの水面が光る。全体が深い沈黙の中に静まりかえっている。少し東寄りの双岳台からは、雄阿寒岳と雌阿寒岳が同時に望める。
世界的規模の屈斜路カルデラ
[硫黄山]
屈斜路カルデラは直径が20km以上あり、世界有数の規模である。その中心となるのが屈斜路湖である。面積80km2、湖岸延長57kmの、日本第6位の広さを持つ湖であり、湖の東南部から釧路川が流出している。
阿寒湖と異なり、湖周囲の森林には広葉樹も多い。冬季、材の中の水分が凍結膨張し、立木が音を立てて裂けるほどの厳寒の地であるが、湖岸に和琴(わこと)、砂湯、池の湯などの温泉が湧出するため、小規模な不凍水面が残り、オオハクチョウが越冬する。
昭和6年の湖底噴火により、生息する魚類がほぼ全滅したが、最近は再び魚影が見られるようになってきている。周辺には北側に藻琴(もこと)山、西に大展望が得られる美幌(びほろ)峠、南岸には湖中に突き出した和琴半島がある。
カルデラ形成後に噴出した硫黄山(アトサヌプリ・512m)は、今なお硫気を盛んに噴出している。その影響を受ける山麓の平坦地には、広大なイソツツジの群落が広がり、標高わずか150mの低地ながらハイマツが生育している。利用シーズンには、川湯温泉街から歩く自然観察会が早朝に行われている。
神秘的な摩周湖
摩周湖は面積20km2。最大深度212m、流入する川も流れ出す川もない湖であり、昭和6年に透明度41.6mを記録している。その後、十勝沖地震の影響などで透明度は低下し、近年は25m前後である。
摩周カルデラは、屈斜路カルデラの南東壁上に形成されたもので、この公園のカルデラの中では最も小さい。しかし、外壁上に設けられた展望台から見下ろす湖の神秘性は、ほかでは見られないものである。立ち込める霧によって湖面が隠される日の少なくないことも、神秘性を高めている。また、湖面だけでなく、背後に広がる風景も、いかにも東北海道らしい雄大なものだ。
公園内には阿寒湖畔、雌阿寒温泉、川湯など各地に温泉が湧出している。また、阿寒湖畔では泥火山(ボッケ)も見られる。豊かな森林に覆われているこの地方には、鳥類も多く、シマフクロウやクマゲラも生息している。
[摩周湖]
関連リンク
- 阿寒国立公園 (環境省ホームページ)
阿寒摩周国立公園
(阿寒國立公園 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 07:10 UTC 版)
阿寒摩周国立公園(あかんましゅうこくりつこうえん、英称:Akan-Mashu National Park [3])は、北海道にある国立公園。2017年の「阿寒国立公園」からの名称変更に伴い、摩周湖・神の子池周辺まで区域が拡がり、1市10町に跨る総面積9万1000ヘクタールとなった[4][※ 1]。国立公園内のほぼ9割以上が未開発地域として手つかずの自然保護地域として保全された。
注釈
出典
- ^ a b “阿寒国立公園の公園区域及び公園計画変更案の概要” (PDF). 環境省. 2017年9月11日閲覧。
- ^ “国立公園の利用者数(公園、年次別)” (PDF). 環境省. 2016年8月24日閲覧。
- ^ “阿寒摩周国立公園(英語版)”. 環境省. 2017年11月13日閲覧。
- ^ 『クォリティ(2017年9月号)』第52巻第9号、太陽、2017年9月1日、148 - 151頁。
- ^ “「阿寒国立公園」の名称変更等について”. 環境省・釧路環境事務所プレスリリース. 2017年6月16日閲覧。
- ^ a b 平成29年環境省告示第61号「阿寒国立公園の公園区域を変更する件」、『平成29年8月8日 官報 第7077号』、p.5
- ^ 1934年(昭和9年)12月4日内務省告示第568号「大雪山國立公園指定」
- ^ 1934年(昭和9年)12月4日内務省告示第569号「日光國立公園指定」
- ^ 1934年(昭和9年)12月4日内務省告示第570号「中部山岳國立公園指定」
- ^ 1934年(昭和9年)12月4日内務省告示第571号「阿蘇國立公園指定」
- ^ 1934年(昭和9年)12月4日内務省告示第567号「阿寒國立公園指定」
- ^ “屈斜路湖の魅力3 日本最大のカルデラ湖、屈斜路湖”. 北のカムイ観光圏 〜釧路湿原・阿寒・摩周〜. 2016年8月28日閲覧。
- ^ 阿寒湖のマリモ - 文化遺産オンライン(文化庁)
- ^ “阿寒湖マリモ”. 北海道ファンマガジン. 2016年8月18日閲覧。
- ^ a b 阿寒地域管理計画書 2006, p. 2.
- ^ a b “阿寒湖” (PDF). 環境省. 2016年8月18日閲覧。
- ^ “阿寒国立公園の名称変更要望提出/地元11市町”. 釧路新聞 (釧路新聞社). (2016年5月5日) 2016年8月18日閲覧。
- ^ 『先行的・集中的に取り組む8つの国立公園が決定しました - 第3回国立公園満喫プロジェクト有識者会議の結果発表 -』(プレスリリース)環境省、2016年7月25日 。2016年8月19日閲覧。
- ^ a b c 阿寒地域管理計画書 2006, p. 26.
- ^ “阿寒湖アイヌコタン”. 阿寒アイヌ工芸協同組合. 2016年8月19日閲覧。
- ^ a b c d e f g 川湯地域管理計画書 2006, p. 2.
- ^ a b c 梅川智也 (2012年10月12日). “「前田正名」という人〜阿寒湖の人と自然を守ってきた前田一歩園の初代園主とは?”. 日本交通公社. 2016年8月18日閲覧。
- ^ “前田一歩園財団”. 2016年8月18日閲覧。
- ^ 1950年(昭和25年)7月14日郵政省告示第210号「阿寒国立公園の風景を画題とする二円郵便切手等発売」
- ^ a b “阿寒湖・阿寒湖温泉・アイヌコタン”. 北海道ファンマガジン (2009年5月14日). 2016年8月18日閲覧。
- ^ “歴史とあゆみ” (PDF). 釧路市 市勢要覧2016. 釧路市. 2016年8月19日閲覧。
- ^ “和琴フィールドハウス・キャンプ場 いよいよオープン!”. スタッフブログ. 自然公園財団 (2014年7月16日). 2016年8月19日閲覧。
- ^ “阿寒摩周国立公園(阿寒湖温泉)のゼロカーボンパークの登録について”. 環境省釧路自然環境事務所. 2022年3月30日閲覧。
- ^ “国立公園集団施設地区” (PDF). 環境省 (2015年). 2016年8月18日閲覧。
- ^ a b c “国立公園集団施設地区等利用者数” (PDF). 環境省. 2016年8月18日閲覧。
- ^ a b “国立公園内ビジターセンター等利用者数” (PDF). 環境省 (2013年). 2016年8月18日閲覧。
- ^ “阿寒湖のマリモを見に来るなら”. マリモWeb. 2016年8月18日閲覧。
- ^ “釧路市阿寒湖のマリモ展示観察センター条例”. 釧路市例規類集. 釧路市. 2016年8月18日閲覧。
- 1 阿寒摩周国立公園とは
- 2 阿寒摩周国立公園の概要
- 3 概要
- 4 観光地・景勝地
- 5 集団施設地区・ビジターセンター
「阿寒国立公園」の例文・使い方・用例・文例
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