西岡研介
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西岡 研介(にしおか けんすけ、1967年7月21日 - )は、日本のライター。
来歴
大阪府生まれ。1990年に同志社大学法学部卒業。大学2年から卒業までの2年間、キリスト教団体が運営する釜ヶ崎の労働者支援施設を手伝う。1991年神戸新聞社入社。姫路支社に配属され、姫路署記者クラブで事件取材を担当。競合する読売新聞大阪本社の記者たちから取材について学ぶ。1994年に本社社会部へ戻り、阪神・淡路大震災(兵庫県南部地震)、神戸連続児童殺傷事件などを取材。愛読していた『噂の眞相』のスタッフ募集に応募し、1998年1月退社。同年3月に噂の真相社に入社。公安記事などの硬派ネタの記事を担当、則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞[1]。同社退社。
2001年10月より『週刊文春』の専属記者となる。同誌で手掛けたJR東日本労組(JR東労組)問題を本格的に執筆できるという条件で、加藤晴之編集長のスカウトにより2006年に『週刊現代』へ移籍[2][3]。同誌の2006年7月29日号から24回連載した「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」で2007年の編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞をみたび受賞。2008年には連載をまとめた『マングローブ テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』が立花隆や福田和也に絶賛され、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞した。2009年には吉本興業のお家騒動について『週刊朝日』で執筆[4][5]。2010年に暴力団の後藤組の元組長後藤忠政の自伝『憚りながら』のインタビューと構成を担当[6]。同書は暴力団と創価学会の関係を当事者が明かしたことで話題となり[7]、発売2か月で18万部のベストセラーとなった[8][9]。
批判
JR東日本労組を巡る報道
『週刊現代』連載の「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」は、雑誌ジャーナリズム賞と講談社ノンフィクション賞を受賞した一方で批判や裁判の対象にもなった。
2006年から2007年にかけて、記事に書かれていないJR東労組とその上部団体JR総連に所属する全国の組合員個人から名誉毀損だとして本人訴訟で48件の裁判が起こされるが[10]、全て勝訴した[11]。西岡は全国50か所の地方裁判所で訴えられており、労働組合が組織的な運動として行った、嫌がらせの訴訟であるスラップだと批判している[12]。
しかし、松崎明元JR東労組会長から提訴された裁判では、一部の記述の名誉毀損にあたるとされ損害賠償を命じられている。2010年10月27日の東京高等裁判所の判決では、松崎明が革マル派最高幹部であることや組合費を横領した組合私物化については公益性と真実相当性が認められたことから名誉毀損にあたらないとされたが、列車妨害を指示したという印象を与える記述については真実相当性が低いことから名誉毀損が成立するとして330万円の損害賠償が命じられた[13][14]。2012年3月27日に最高裁判所が原告と被告の上告を棄却して二審判決が確定した[15]。
さらにJR東労組、JR総連などが講談社と西岡を提訴した裁判では、講談社と西岡がJR総連、JR東労組それぞれに220万円を支払うよう命じた判決が確定した[16]。
名誉毀損裁判では、記事の情報源が警察庁や警視庁の幹部であることが明らかになり、かつて反権力雑誌『噂の眞相』でスクープを飛ばした西岡が、リークされた公安情報に依存することで、公安が意図したJR東日本労組批判キャンペーンの役割を担ったのではないかと指摘されている[2]。『週刊金曜日』でも元読売新聞記者の山口正紀が公安情報に依存していると批判した。
これについて西岡は、公安情報だけでなく「マングローブ」元幹部からも情報を得てること、事件をもみ潰したなど公安批判もしていること、権力側からであろうと情報を得るのはジャーナリストの仕事であること、さらに西岡のスクープである森喜朗の買春検挙歴の記事の根拠となった指紋番号と犯歴番号の情報は公安からのリークであると反論している[17]。
福岡市「教師によるいじめ」事件についての報道
2008年出版の福田ますみの著書『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』で、西岡の『週刊文春』での記事がマスコミによる冤罪事件の火付け役の一端を担ったとされた。これについて西岡は、裁判では教師のいじめや体罰が認定されていて[18]、福田の冤罪論は誤りであり、『週刊文春』掲載記事を誤報だとする福田の主張に反論している[19]。 福岡市「教師によるいじめ」事件も参照のこと。
「週刊実話」訂正謝罪への関与
「週刊実話」は、2016年5月12・19日合併号記事における李信恵に関する箇所について即日で訂正、謝罪記事を掲載した。この際、西岡が「週刊実話」編集部に圧力をかけて謝罪と訂正をさせたという指摘がある[20]。
記事で書かれた暴力事件で、李信恵は告訴され不起訴処分となっているが、その後、被害者の男性から損害賠償請求訴訟を提起されている。また、この事件について報道した鹿砦社を李が訴えた裁判では、被害者の胸ぐらをつかんだ、事件を知りながら放置したと、李が事件に関与、連座したことが認められる内容の判決が確定している[21][22][23]。
著書
- スキャンダルを追え!『噂の真相』トップ屋稼業(講談社、2001年)
- マングローブ—テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実 (講談社、2007年)
- 襲撃 中田カウスの1000日戦争(朝日新聞出版、2009年)
- 俺たち訴えられました! SLAPP裁判との闘い(河出書房新社、2010年)- 烏賀陽弘道との対談の共著
- ふたつの震災[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ(講談社、2012年) - 松本創との共著
- 百田尚樹『殉愛』の真実 (宝島社、2015年) - 角岡伸彦、家鋪渡(やしきたかじんの弟)、宝島「殉愛騒動」取材班との共著
出典
- ^ 神林広恵『噂の女』幻冬舎、2005年、pp.212-213
- ^ a b 「NEWS EYE あの情報源はやはり公安だった 『週刊現代』訴訟資料で明かされた公安の情報捜査」『創』2008年6月号、pp.26-27
- ^ 三品純構成「JR東日本最大労組の不条理を憂う西岡研介」『サイゾー』2007年9月号、pp.56-57
- ^ 中森明夫「アタシジャーナル 96 西岡研介の受賞と島村麻里の死」『週刊朝日』2008年10月3日号、p.113
- ^ 坪内祐三「文庫本を狙え! 583」『週刊文春』2009年7月23日号、p.128
- ^ 後藤忠政『憚りながら』宝島社、2010年、p.4
- ^ 「山口組系元組長がはじめて告白した創価学会との関係」『週刊文春』2010年5月20日号、p.51
- ^ 林操「ベストセラー通りすがり」『週刊ダイヤモンド』2010年6月5日号、p.84
- ^ 山内宏泰「ベストセラーウォッチング」『新潮45』2010年8月号、p.219
- ^ 石井政之「オリコンうがや訴訟7 JR「革マル派」告発の西岡研介氏、48件の“訴訟テロ”に反訴へ」My News Japan 2007年8月5日
- ^ 元木昌彦『週刊誌は死なず』朝日新書、2009年、p.217
- ^ 『俺たち訴えられました! SLAPP裁判との闘い』pp.22-58
- ^ 「労組私物化」に真実相当性 東京高裁、講談社の賠償減額 日本新聞協会公式サイト内
- ^ 時事ドットコム:講談社側の賠償減額=JR総連元幹部名誉棄損東京高裁 時事通信 2010年10月27日 ※リンク切れ
- ^ JR東労組巡る名誉毀損、週刊現代側の敗訴確定 読売新聞 2012年3月28日
- ^ JR総連通信
- ^ 『俺たち訴えられました! SLAPP裁判との闘い』pp.51-54
- ^ 教諭のいじめ、市に責任 220万賠償命令 共同通信社 2006年7月28日
- ^ 『俺たち訴えられました! SLAPP裁判との闘い』pp.55-58
- ^ 鹿砦社『反差別と暴力の連鎖』pp.50-53
- ^ 【【カウンター大学院生リンチ事件報道訴訟】速報! 対李信恵訴訟控訴審、大阪高裁で一部勝訴判決! 素人目にもわかる事実認定の誤りを修正し165万円から110万円に賠償金大幅減額! われわれの闘いは終わらない! 株式会社鹿砦社/鹿砦社特別取材班 2021-07-28 デジタル鹿砦社通信
- ^ 【カウンター大学院生リンチ事件報道訴訟を検証する〈2〉】対李信恵訴訟控訴審判決、李信恵がリンチに連座し関与したことを認定したことが最大の成果! 李信恵らによるリンチが「でっち上げ」でないことを証明 鹿砦社代表 松岡利康 2021-08-07 デジタル鹿砦社通信
- ^ 【カウンター大学院生リンチ事件報道訴訟を検証する〈3〉】敗北における勝利! ── 私たちは “名誉ある撤退” の道を選び、上告はしないことにしました 鹿砦社代表 松岡利康 2021-08-11 デジタル鹿砦社通信
関連項目
外部リンク
- 西岡研介 (@biriksk) - X(旧Twitter)
西岡研介
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「福岡市「教師によるいじめ」事件」の記事における「西岡研介」の解説
西岡は、2003年9月に福岡入り。児童の母親、学校の校長、市教委などを取材した。教諭にも手紙を書くなどしてコンタクトをとったが、取材を拒否された。この取材拒否の理由について、教諭は、校長から、西岡がかなりきついことを言う記者で、教諭の名前を出すとも言っており、何を書かれるか分からないから気をつけろと言われたからと答えている。 同年10月2日発売の『週刊文春』では、児童の母親や同級生の保護者の証言として、教諭が、家庭訪問の際、児童には「穢れた血が混じっている」などの人種差別発言を行ったことや、家庭訪問の翌日以降、児童に体罰を連日行い、鼻血や歯を折ったりするなどの怪我を負わせたことなどを報じた。同記事は、そのタイトルに「史上最悪の『殺人教師』」、リード文には「悪魔のような教師」などと書き、さらには教諭の実名、顔写真や自宅の写真をも掲げて教諭を強く非難した。 上記記事掲載から11日後の11月13日、「ザ・ワイド」は、教諭の「反論」を放送。さらに翌14日には、「サンデーモーニング」が、児童や保護者に尋ねても、いじめや体罰の話が出てこないと報じた。 これに対し西岡は、同月23日発売の『週刊文春』において、教諭を擁護しているテレビ局があるとして上記2番組を批判。学校が4年3組の児童に対して行ったアンケート では、児童の8割が「体罰を見た」と回答していることなどを新たに指摘。さらに、児童らの弁護団が、教諭の体罰により折られた児童の歯を保管しているなどと書いた。 もっとも、上記の「アンケート」については、市の担当者が当初より調査方法の曖昧さを認めていた。教諭が市人事委員会に申し立てた審査請求審では、アンケートの信用性自体が否定されている。 テレビ局が教諭の言い分を垂れ流しているという西岡の批判に対して、前記有田は、西岡が教諭に対する聞き取りを行っていないことを指摘しつつ、当事者から話を聞くのは取材の基本であると反論している。 西岡の主張する「弁護団の保管する折れた歯」については、後に原告の弁護士が、知らない、保管してないと回答した。 西岡にも取材した前記福田は、裁判の経過を福田が伝えても西岡は聞こうとしなかったことを挙げ、『週刊文春』に記事を書いた後は、この事件についての関心を失ったのだろうと評した。 ところがその後、西岡は福田に対する批判を展開。2010年3月発行の烏賀陽弘道との対談で、福田の『でっちあげ』に言及し、裁判では教諭のいじめ行為が認められていると述べ、自身の記事が大筋において正しいこと恥も外聞もなくアピールした。 もっとも、下記に示すように、実際には西岡が記事に書いたいじめ行為は、裁判でも認められていない。 『週刊文春』に書かれた教諭の虐待行為福岡高裁の判断とその主な理由家庭訪問での「この子には穢れた血が混じっているんですね」などの差別発言 認められない。母親が主張する家庭訪問中の発言は教師として極めて異常であるのに、両親はその後2週間以上、何の抗議もしていない。教諭がアメリカ批判を行ったのち、アメリカの会社のダイエット食品を紹介したという母親の供述は不自然。一方、これを否定する教諭の供述は概ね一貫しており信用できる 家庭訪問後の暴力により、児童は耳を切り、歯を折り、右太ももに加療3週間の怪我を負うなど、連日傷だらけになった 認められない。両親以外に教諭の暴行について学校に抗議をしたものがいない。これを見たとする他の児童の供述の信用性に疑問がある。「アンパンマン」で歯が折れるとは考えにくい。以前から児童はアレルギー性鼻炎・両外耳道湿疹と診断されている 。母親が児童の暴行を知ってから整形外科に受診するまでの期間が長く、不自然。これら以外に児童が治療を受けた記録がない ごみ箱の中に児童の持ち物とランドセルを放り込み、上から足で踏みつけて「5秒で片付けろ」と命令 認められない。児童の供述以外の証拠が見られず、その児童の供述も全般的に信用性に疑問がある。教諭が、帰りの会の際、床に落ちていたランドセルを拾い、持ち主に取りに来るように呼びかけた上、ごみ箱に捨てたことが認められる 「お前には生きとる価値がなかけん、死ね」などの自殺強要発言 認められない。児童の供述には母親による誘導の跡が窺われるほか、全体として曖昧である。6月の社会科見学では、児童が教諭を恐れている様子は見られなかった。同年6月から9月まで通院していた病院の診療記録では、児童は学校生活を楽しんでいたことが窺われる。両親は児童から自殺強要発言を聞いた後も、病院に相談するなどの対応をしていないのは不自然 授業に監視がついた後の暴行 判断せず。 児童の同級生宅に虚偽の中傷電話を入れた 主張自体失当。 教諭の上記行為により、児童は深刻なPTSDに罹った 認められない。DSM-IVの診断基準をいずれも充たさない。前田医師の診断は診断の前提事実が事実と大きく乖離しており、信用しがたい 「判断せず」とした項目は、被告福岡市が自白したために、証拠調べによる事実認定の対象にならなかったことによる。 「主張自体失当」とした項目は、その事実の有無が法律関係の発生(ここでは不法行為の成立)に関わらないため、事実認定の対象にならなかったことによる。
※この「西岡研介」の解説は、「福岡市「教師によるいじめ」事件」の解説の一部です。
「西岡研介」を含む「福岡市「教師によるいじめ」事件」の記事については、「福岡市「教師によるいじめ」事件」の概要を参照ください。
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