自治体や学校における対応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 22:51 UTC 版)
「生理の貧困」の記事における「自治体や学校における対応」の解説
2021年3月17日、市議会で「生理用品の支援」が質疑に挙がったことや女性議員9人から緊急要望が市長に出されたことを受け、多摩市にて防災備蓄用の生理用品(計1664枚)を、全部で26校ある市立小学校と市立中学校の女子トイレに置く取り組みを始めた。学校での配布は都の中でも珍しいと報じられた。 この背景が朝日新聞に掲載されたことに対して、若年女性の貧困対策で活動している一般社団法人Colaboの仁藤夢乃は、多摩市の教育委員会が、記事に提供した写真に「持って来られなかった人のための生理用品です。忘れてしまった人は保健室でもらってください。」と書かれていることに違和感を感じ、「誰でも使える生理用品でなければ、本当に困っている女子も使い辛いのではないか」と指摘している。また品川区の場合の写真でも「大切に使いましょう」と大書されていることにも問題があると指摘している。 2021年5月、群馬県は全ての県立学校や県所有施設(ぐんま男女共同参画センター、美術館、図書館)などで、生理用ナプキンの無償配布を始めた。県レベルでは全国初である。 2021年5月、愛知県東郷町では、町の小中学生たちが町長などに質問する「子ども議会」での小学生女子の提案が契機で、提案から2か月弱で、町内の小中学校9校の女子トイレの個室に、生理用品の常備が実現した。町の工業団地競合組合が費用を寄付し、合わせて約4000袋の生理用品が段ボールで届けられた。 学校のトイレに生理用品を置くことを目的に活動している学生コミュニティ「SURP」は、高校生以上の学生団体が集まり、各校で活動している。国際基督教大学では、大学内の3か所ある「オールジェンダートイレ」に、生理用品を置く取り組みを始めた。「生理用品に関する悩みが可視化されていなかった」ことから、学生や教職員から「助かった」という反応や、生理用品の寄付もあった。「#みんなの生理」のメンバーは、「保健室に生理用品を取りに行くことにハードルを感じる人もいるため、プライバシーを守れるトイレの個室に置きたい」と語っている。「生理の問題は多くの人が声を上げるようになれば、今まで言えなかった人も声を出せるようになる」とエールを送る一方で、役所からは「生理に理解のない人からいたずらをされないか」とも指摘を受けていて、性教育の必要性を感じている。また、「生理のある人の性自認(ジェンダー)が女性とは限らない」ため、「生理=女性」という一元論から脱却する必要性も指摘する。 その一方で、トイレに置くと誰でも持っていってしまったり、性教育をする以前の学年への懸念から、トイレではなく保健室や職員室に置くことを決めた学校もある。京都府城陽市は「トイレットペーパーのように『生理用品がトイレに置かれているのが当たり前』という認識が広がっていない」、京都市、宇治市、綾部市は「経済的困窮の問題」という理由を付けた。「保健室で受け取ってもらうことで、養護教諭が状況を聞き、必要な支援につなげる」ことを意図した自治体もある。その反面、亀岡市は「保健室に行くハードルが高い子もいる」可能性を示した。 長崎市では、6つの市民団体が、クラウドファンディングで資金を集め、市内の学校に生理用品を無料で配布するプロジェクトを始めた。 2021年6月、東京都港区では、区立の学校に通う小学校5年生から中学3年生までの女子約2400人にアンケートを行った。「学校生活で生理用品がなくて困ったことがある」が17%と想定より高い数値を示し、その内訳は「持参するのを忘れたから」が95%、「家庭で購入や準備ができなかったから」が5%だった。 NHKが実施したアンケートで、山口市は生理がある女子生徒の3割近くが「生理用品がなくて困った」と回答し、市立白石中学校で生理用品の置き場所を尋ねたところ、9割弱の女子生徒がトイレと答えた。 港区立御成門中学校では、試行的にトイレに「自由に使ってよいが、後で保健室に来ること」という内容を書いた張り紙とともに生理用品を置いたところ、1か月で10セットが使われ、使った生徒が保健室に来た。 東京都立新宿高等学校では、2021年5月から、統括校長の意向で「トイレットペーパーと同じように」校内のトイレのうちの2か所に無造作に置き始めたところ、8月末までに410枚以上のナプキンが使用されていた。その後さらに増え、保健室で渡していたころは年間10枚程度の利用だったが、単純計算で160倍に増え、2日に1回補充しないといけない状態であるという。 2021年8月3日、内閣府男女共同参画室は、全国581の自治体が学校や役所で生理用品の無料配布などを実施・検討していることを公表した。 2021年9月、石川県金沢市内の看護師と保育士からなる団体が、将来のエッセンシャルワーカーを支援しようと市内の看護教育機関の生徒向けに生理用品を寄付することを決め、9日には金沢看護専門学校で贈呈式が行われた。 高知市の私立土佐女子中学校では、先生の提案により、高知市の事業「こうちこどもファンド」に応募する動画を生徒6人で製作した。震災時の避難所で、男性が女性一人に1枚ずつナプキンを配っていた案件が契機となり、「女子校ならではの視点」で、小中学生向けに生理の知識を伝える動画を作成することにした。この動画案をプレゼンテーションに出した結果、ファンドからの助成が決まり、動画の作成が進められている。 長崎県で生理用品を無料配布している民間団体の活動では、コロナ禍で潜在化している家庭内暴力や性暴力の被害者も「生理の貧困の当事者」なのが見えてきたため、ナプキンを無料設置している場所に「支援情報のQRコード」を載せた張り紙を付けた。プロジェクト代表の看護師は「ナプキンを通して、困っている人が必要な支援へと繋がってほしい」と話す。 元養護教諭で性教育講師のにじいろ(中谷奈央子)は、性教育は「健康教育・安全教育・人権教育」と言うが、高校で養護教諭として勤務していたころと振り返ると「申し訳ない気持ちになる」と言う。保健室では「生理で困っている学生」と毎日接し、対応の中で湯たんぽや着替えや洗濯用品を貸したり、受診を進めることもあった。学校の予算の都合上、ナプキンは「あげる」のではなく「貸す」ことで、あとで返してもらうことにしていた。中谷自身も生理用品に困っていたことがあり、親が生理用品の提供や生理のはなしをしてくることがなかった過去から、役所の窓口で生理用品を受け取る提供方法には「気軽に行けない」と思った。中谷は小型の店舗で、周囲に知り合いがいないのを確かめてから、隠れるようにナプキンを買っていた記憶があり、生理があること自体を「恥」だと思っていた。その経験から、学校せ生理用品を設置することに抵抗を持つ先生方には「トイレットペーパーに置き換えて創造して欲しい」と指摘し、積極的な支援と生理の教育が不可欠で、生理中でも安心して学校で過ごせる権利は「人権と社会の問題」との認識が必要だと書いた。中谷は学校せの性教育講習で、生徒から性別を問わず「男女一緒の講習に最初は抵抗があったが、一緒に聞けて良かった」と感想を聞くことが多いという。
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