老朽化の進行と運営者の整備不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 15:16 UTC 版)
「Toshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)」の記事における「老朽化の進行と運営者の整備不足」の解説
当時のネストル・キルチネル大統領のもとで経済の再建がなされ、再び経済成長が進み始めた同国では、経済活動の活発化により首都圏の鉄道路線全体で月曜日から金曜日の朝と夕方の乗客数が増加しており、特にその時間帯におけるサルミエント線では民営化直前と同様、混雑と慢性的な車両不足により車両の客用乗り降りドアの集中ロック機能を解除した状態で運転されることが常態化していた。車両の慢性的な不足は経年によりこの"Toshiba"の交換部品が減少していたことにより運用から外れる車両が一定数存在したことや、ミトレ線で運用されていたイギリス製電車の置き換えるために、老朽化が進んだ初期車を含む一定数の"Toshiba"をサルミエント線からミトレ線へ移動、"PUMA V.1"へ改造したうえで同線へ投入した代わり、ミトレ線からサルミエント線への同数の車両の移動は行われなかったことなどによるものであった。 さらに、2001年12月の債務不履行の後に制定された「緊急鉄道法」による「鉄道インフラ・経営救済補助」の一環として、TBAを始めとする各民間鉄道事業者へ多額の補助金が政府から提供されたにも関わらず、TBAの保有する鉄道関係の設備はますます老朽化し、列車運行上のトラブルや事故も増加するという不可思議な現象が発生。利用者からの苦情も増加し、「補助金が適切に使用されていない」という意見が現れるようになった。一度更新工事を受けた車両は"PUMA"に改造されることがない限り、車両の「全般検査」はおろか、「主要部検査」と呼ばれる定期的な整備までも受けることがなかったということが後の調査で判明している。これらの多額の補助金の多くは、TBAの社長及びその親会社であるグルーポ・プラサの幹部、最高責任者が不正に使用しており、その内容は豪遊旅行などであったということが後の調査で判明した。 このほかに、老朽化が原因とみられる、主電動機や主抵抗器からの発煙なども発生するようになり、運用に入る車両が減少。前述した各更新工事の内容と編成の構成の関係はこれ以前から曖昧であったが、さらに曖昧となり、サルミエント線では未更新の車両から"Toshiba2"まで各種の混結編成、ミトレ線ではMK更新工事の車両が後述の"PUMA V.1"の冷房を搭載していない編成に組み込まれた編成などが見られるようになった。そのような状態での運用は車両数の減少による混雑の発生という形で利用者に大きな影響を与え、2005年秋にサルミエント線のアエド(スペイン語版)において、利用者は大規模な抗議集会を実施。そこに「過激派」と呼ばれる集団も合流し、駅設備や"Toshiba"2編成("Toshiba"と"Toshiba2"のそれぞれ一編成づつ)にガソリンを撒き、火をつけて全焼させるという大きな事件へ発展するに至った。 これらの状況を打開すべく、TBAは同年内に"Toshiba"を改造した二階建て車両を試作し、将来的にサルミエント線で運用すべく展示会を行った。この車両は付随車であり、主電動機を搭載した電動車の挟まれて運用される必要があるものの、意欲的な取り組みとして高い評価を手に入れた。この展示会とサルミエント線における放火事件の数カ月後の同年12月28日、後述の"PUMA V.2"の2階建て車両を挟んだ車両1編成がサルミエント線に登場、運用を開始した。 翌2006年、政府とTBAは「58両の東芝電気自動車の復旧と近代化」という計画を策定。これはサルミエント線で運用される"Toshiba"を更新する工事であり、当初の予定では2006年度内に実施されるはずであったが、未更新の車両を後述の"PUMA V.2"および"PUMA V.3"へ改造する工事が優先され、実際にはその先何年にも渡って先伸ばしにされた結果、2009年から2011年にかけて施行された。この計画の内容は、 塗装を後述の"PUMA V.3"と同様の車体全体を紫、窓下に銀色の線と白い細線を配置したものへ変更 車体・車内の補修 というものであった。 2007年には上記の特別運用"Tren Cartonero"が経済状況の回復と対象の労働者の社会活動参加の取り組み推進により廃止され、使用されていた3編成は通常の運用に使用するために改造されることとなり、その際にこの3編成に3両が含まれていた1956年製造の丸い屋根の車両が消滅することとなった。同年にはミトレ線で運用されていた最後の未更新の車両も"PUMA"へ改造され、緑色の転換式座席を持つ車両も消滅した。 サルミエント線で運用される一両すべてが荷物室の車両に関しては、整備不足で窓にガラスが設置されず、下半分のみを板で覆ったような状況で運用されることが行われており、改造時に設置されていた握り棒と吊り革も撤去され、禁煙の編成中で唯一の「喫煙スペース」として使用する利用者が問題となったほか、一部の車両が車両番号を変更せずに電装解除され付随車となった。 2010年代に入ると整備不良により車両全体の痛みがかなり目立つようになり、サルミエント線では通常に運用される車両のなかに、車体に腐食による劣化から発生したとみられる穴が開いている車両が存在することが判明。しかし、上記の理由による車両不足を解消するために同線へ車体を完全に新造した二階建て車両を連結する"PUMA V.4"(後述)の改造が遅れ、運用数を満たすために車体に穴が開いた車両も運用を続けることとなった。 この時期、TBAはミトレ線とサルミエント線で発生した後述の重大事故により政府から運営権を取り消しされ、再び国有化されることとなった。国有化までの手続きが行われた2012年から2013年の間、両線の列車運行は政府とメトロビアスが中心となって形成したUGOMS(Unidad de Gestión Operativa Mitre Sarmiento、ミトレ・サルミエント緊急運営組織)(スペイン語版)によって行われ、その際に本形式は再び大きな更新工事を受けることになり、その更新工事を受けた車両は車体全体を水色で塗装し、窓下に銀色の太線を配置した塗装となった。 2010年代の動きはToshiba (サルミエント線・ミトレ線用電車)#引退とその後を参照。 サルミエント線用初代塗装白黒写真 ミトレ線用初代塗装写真中央 "Ferrocarriles Argentinos"塗装サルミエント線 "Ferrocarriles Argentinos"塗装ミトレ線写真は厚紙回収労働者専用列車・"Tren Cartonero"の車両で、窓に金網が設置されていることがわかる 右 - "Ferrocarriles Argentinos"塗装左 - 「ピエロ」と呼ばれるTBAの初代塗装写真は"Tren Cartonero"の車両 TBAの全室荷物車(白地)塗装連結の編成ミトレ線 白・水色・青線が特徴のTBA二代目塗装ミトレ線 全室荷物車(水色地)塗装連結の編成サルミエント線 UGOMS塗装(1・4両目)とTBA二代目塗装(2・3両目)の混結編成
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