第三次試験車両
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営業車両となる三次車両による実用化は当初、2010年(平成22年)とされており遅れていたが、二次車両での結果をふまえ政府は、2012年(平成24年)度予算案に過去最多の61億8700万円を計上し、実用化に向けて二次車両より軽量化・長編成化した三次車両の設計製作に着手した。 2014年2月21日、中間車1両が日立製作所笠戸事業所より川崎重工兵庫工場へ航送された。 2014年4月19日、JR九州熊本総合車両所にて三次車両が報道陣に公開された。「FGT-9001」(1号車)・「FGT-9002」(2号車)・「FGT-9003」(3号車)・「FGT-9004」(4号車)の4両編成で全電動車(直流区間は非対応)。製造メーカーは1・3・4号車が川崎重工業、2号車が日立製作所。外観は、「ディープレッド」と「シャンパンゴールド」の2色でまとめられている。先頭車はなめらかな流線形で、側面に「FGT」のロゴが入る。車内も赤を基調とした内装になった。なお、座席は300系からの廃車発生品(モケット張替)の流用である。炭素繊維強化プラスチックを使うなどして、これまでの車両より1両当たり約2トン(4%)軽くなり、通常の新幹線並みの43トンを実現(新幹線N700系の1両あたり平均重量は43トン、東北新幹線E5系は同45トン)、FGT最大の弱点といわれた重量問題を克服している。電機品は東芝が担当した。 2014年4月20日、熊本県内で走行試験を開始した。最高速度は新幹線区間が270km/h、在来線区間が130km/h、新幹線・在来線を結ぶ接続線では50km/h、軌間変換装置の通過時は10km/hで走行する。3年間で新幹線 - 軌間変換 - 在来線を繰り返し走行する「3モード耐久走行試験」を通常の新幹線の検査周期と同じ60万km分行う予定。 2014年8月29日、国土交通省はフリーゲージトレインの開発費に2015年度予算の概算要求で前年度比35%増の28億9700万円を計上し、新たに耐雪・耐寒化の雪対策を施した寒冷地仕様車の開発も始めると発表。 2014年10月19日、4月から導入した試験車両が設計通りの性能を持つか確認していたが、結果が良好だったため、より営業運転に近い形での新幹線、軌間変換、在来線を繰り返す「3モード耐久走行試験」へ移行。 2014年12月24日、耐久走行試験の一時休止を発表。2014年11月29日までに約400回の軌間変換を行い、約3万3,000kmを走り込んだが、一部の台車を確認した際に、スラスト軸受のオイルシールに部分的な欠損が発生し、すべり軸受と車軸の接触部に微細な磨耗痕も確認されたため、必要な対策の検討をはじめ、初期段階での部品点検のための詳細調査を実施することになり、その間の走行試験を見合わせることが決まった。 2015年8月28日、国土交通省はフリーゲージトレインの開発費に2016年度予算の概算要求で前年度比36%増の27億4600万円を計上。 2015年11月27日、石井啓一国土交通大臣が会見で、トラブルの検証に一定のめどがついたため専門家による検証結果の審議を近く始めると表明。 2015年12月4日、国土交通省が、不具合の原因推定と対策案を技術評価委員会に報告、内容を公表。 2016年12月3日、車軸の摩耗具合や安定性の検証走行試験を開始。試験走行再開は試験車両の車軸の不具合で中断してから約2年ぶり。2017年3月までレール幅の異なる九州新幹線熊本 - 鹿児島中央と在来線の熊本 - 八代で約1万キロを走らせ、車軸が摩耗しないよう改良した部品の効果を確認し、技術評価委員会が耐久走行試験を再開できるかを判断するとしている。 2017年7月14日、国土交通省は、台車に改良を加えて2016年12月から実施した走行試験でも車軸に磨耗が見つかったことを明らかにし、2022年度の九州新幹線西九州ルート(長崎ルート)暫定開業時には、FGTの先行車両導入は間に合わないとの見解を示した。一方で課題だった車軸の磨耗は「従来の100分の1」まで軽減させることに成功したことも明らかにされた。 2017年7月25日、JR九州の青柳俊彦社長は、与党の整備新幹線推進プロジェクトチーム(与党PT)の会合で、「フリーゲージトレインによる運営は困難」だとして、九州新幹線 (西九州ルート)へのフリーゲージトレイン導入を断念すると発表した。フリーゲージトレインは一般の新幹線より車両関連費が2倍前後かかり、全面導入すればJRにとっては年間約50億円の負担増につながると試算されたため「前提である収支採算性が成り立たない」とし、また安全性も「まだ確立できていない状態」であることを理由に述べた。同時に、九州新幹線 (西九州ルート)博多 - 長崎間全線のフル規格での整備を求める考えも示した。 2018年8月27日、国土交通省はフリーゲージトレインについて、北陸新幹線への導入を断念する方針を明らかにした。開発に関しては近畿日本鉄道が在来線での活用を検討しており、日本国政府は予算を縮小して開発を続ける。
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