現在の情勢・状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 02:20 UTC 版)
積極・賛成論消極・反対論世論に関する議論 村木厚子(元事務次官)は、2017年の内閣府による世論調査について、法改正容認派は70歳以上で5割を切るものの、60代では6割、50代以下では8割を超え、いずれの世代でも選択的夫婦別姓容認派が多い、婚姻の中心となる20代、30代で容認派が過半数と指摘。「国民の意見が大きく分かれている」とは言えないとしている。日本政府が世論が分かれていることを法案提出に至らない理由としてあげたことに対して、国際人権規約B規約人権員会は、法に関する態度の正当化のために統計調査を語るべきでないと批判している。 国連女性差別撤廃委員会は、本条約の批准による締約国の義務は、世論調査の結果のみに依拠するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき、としている。 百地章(日本会議理事)は、選択的夫婦別姓に賛成している人の大多数は消極的な賛成だと主張し、少数のために制度を改変するべきではない、と主張している。窪田順生(ノンフィクションライター)は、選択的夫婦別姓の世論調査に関して、マスコミは「自分たちにとって都合の悪い回答は報道していない、と主張している。 宗教界の動きに関する議論 川橋範子(宗教学者・名古屋工業大学教授)は、神道界が右傾化するとともに、男女共同参画や選択的夫婦別姓に対し反対運動を行っていることに関して、選択的夫婦別姓に反対といったことは宗教界で言うべきようなことではない、と述べている。井上順孝(宗教学者)は、神社本庁が反対の立場であることについて、夫婦別姓は東アジアでは一般的で、日本が夫婦同姓を義務づけたのは明治期のことであり、神社本庁が明治期に生まれた「創られた伝統」を日本にふさわしい伝統として享受している、と主張している。 宇佐美典也(元経産官僚)は、選択的夫婦別姓の導入により霊園の維持、経営が苦しくなる可能性が高いと考える寺社仏閣が懸念を持っているのではないか、と主張している。 国際情勢 日本経済新聞は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約批准から30年経っても夫婦同姓を強制している日本は国際的にも非難の対象となると主張している。日本はこれまでに3回、女性差別撤廃委員会から民法750条の改正を勧告されているが、2018年5月訴訟において原告は、日本は自由権規約と女性差別撤廃条約に批准しており、憲法98条2項によって、日本は条約を遵守する義務がある、と主張している。 出口治明(ライフネット生命保険会長兼CEO)は現行法の状況は歴史的にも世界的にも「ガラパゴス的」と主張している。 国際連合女性事務局長のプムジレ・ムランボヌクカは、「男女の平等を確かなものにするため、選択肢を持たなければならない。」として日本法を批判している。 青野慶久(ソフトウエア開発会社社長)は、政府が「世界中で夫婦同氏を義務付けている国は、日本以外に知らない」との答弁を行っている一方で、日本が批准している女子差別撤廃条約の条約機関から日本は3回、夫婦同氏を定めた法律の規定を改定すべきという勧告を受けているが、そのような日本の姿勢は、日本だけでなく国際的な活動を行っている個々の日本企業への信頼をも損なう、としている。 棚村政行(法学者・早稲田大学教授)は、「日本は先進国の中でも、アジアの近隣諸国と比べても、選択的夫婦別姓が認められておらず、遅れていることは明らか」としている。 黄浄愉(家族法学者・輔仁大学)は、「今日の国際的な立法趨勢として、婚姻の際に、同姓にするか別姓のままにするかは夫婦の選択に任せ、子の姓についても夫婦の協議によって定めることが採用されている。こうして姓は、次第に集団的呼称から個人的呼称になりつつある。」としている。 床谷文雄(家族法学者)は、夫婦同姓が社会常識であった多くの国で、裁判や法改正を通じて別姓が認められてきた経緯があり、そこでは、普遍的な人権である個人の尊重、人格権、平等の権利が指導理念となって、人及び家族の姓をめぐる制度の見直しが行われてきた、としている。 「#各国の状況」も参照 秦郁彦(現代史家)は、世界の姓名事情は多彩であり、「女性差別」とは無関係だと主張している。「#各国の状況」も参照 立法府の動きに関する議論 榊原富士子らは、1996年に法制審議会が答申した民法改正案要綱が、立法府で長期にわたり放置されているのは異常、と主張する。 葛西大博(毎日新聞記者)は、最高裁判決は「選択的夫婦別姓制度について合理性がないとするものではなく、国会で論じられるべき」としており、それを怠るのは司法の軽視にもあたる、と主張している。 宮内義彦(オリックスシニア・チェアマン)は、かつて自民党内で提案された選択的夫婦別姓法案が党議拘束によって成立しなかったことについて、「『自分自身で自分の名前を決めよう』という提案に、党議拘束をかける必要はない」「政党内の結束も大事だが、課題の内容によっては、党派色を抜いて一人一人の良識で考え、答えを出すべきもの」として、批判している。 河野太郎(行政改革担当相)は、「国会で党議拘束を外して議員が思うところを述べて議論する、決をとることがあってもいい」と述べている。 大串博志(政治家)は、男女同数をめざして女性の政治参画が進んでいけば選択的夫婦別姓の問題も大きく進む、としている。 野田聖子(政治家)は、2015年に、自民党の女性活躍政策に対して「女性が別姓を名乗れないことによる損失をわかっていない」と批判した。また、2016年には、立法府が時代に適応した法律を作らないのは立法府の怠慢だとしている。 小池信行(弁護士)は、法案を提出し、衆参両院の法務委員会で議論をし、地方でも公聴会などを開くべき、としている。
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