慰安婦「強制連行」報道
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 10:09 UTC 版)
詳細は「朝日新聞の慰安婦報道問題」を参照 1991年から翌年にかけて「従軍慰安婦」問題の連載キャンペーンを展開。吉田清治著の『私の戦争犯罪・朝鮮人連行強制記録』にある「昭和18年(1943年)に軍の命令で韓国の済州島で女性を強制連行して慰安婦にした」という体験談を、4回(この4回を含め、吉田に関しては計16回)にわたり報道し、朝日は「(朝鮮)総督府の五十人、あるいは百人の警官といっしょになって村を包囲し、女性を道路に追い出す。木剣を振るって女性を殴り、けり、トラックに詰め込む」「吉田さんらが連行した女性は、少なくみても九百五十人はいた」(1992年1月23日1面コラム「窓 論説委員室から」)などと報道した。この吉田の「体験談」は秦郁彦・拓殖大学教授(当時)の調査により嘘であることが判明し、吉田清治本人も一部がフィクションであることを認め、朝日新聞も「確認できない」という事実上の訂正記事を出した。また、1991年8月11日付の朝日新聞は、社会面トップで「思い出すと今も涙」「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」とのタイトルで、「日中戦争や第二次大戦の際、女子挺身隊として戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた朝鮮人従軍慰安婦のうち、一人が名乗り出た」と報じた(記者は植村隆)。この朝鮮人慰安婦の「女子挺身隊として戦場に連行され」たという話にも、「当時、女子挺身隊という制度自体が無いばかりか彼女は親により公娼として売られたことを語っており、全くの捏造である」との反対意見が出された。日本維新の会の中山成彬(当時文科相)は2013年3月8日の衆議院予算委員会において、朝日新聞が慰安婦資料を歪曲したとして、当時の資料を引用して朝日新聞の慰安婦報道を批判している。読売新聞は朝日新聞が「日本軍が慰安所の設置や、従軍慰安婦の募集を監督、統制していた」と報じたことが従軍慰安婦問題の発端であり、日韓間の外交問題に発展したもので、朝日新聞は「主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した」などと、戦時勤労動員制度の「女子挺身隊」を「慰安婦狩り」と誤って報じた部分があったとしている。一方で、1992年に読売新聞と毎日新聞も吉田清治氏の証言を紹介していたことも明らかになっている。産経新聞も、1993年に吉田清治氏を「国・済州島で約千人以上の女性を従軍慰安婦に連行したことを明らかにした『証言者』」とする記事を掲載していた。また、1990年代初期には毎日新聞や産経新聞も女子挺身隊と従軍慰安婦を混同していたことも確認されている。 2014年8月5日、朝日新聞は独自検証の結果、吉田証言の証拠が見つからず、虚偽と認定し記事を撤回した。しかし謝罪は一切無く、しない方針も社長の木村伊量により明らかにされたが、2014年5月の東京電力の「吉田調書」に関する誤報(「吉田調書」の誤報については後述)について同年9月、謝罪会見をし、その中で「吉田証言」に関する誤報についても木村社長は謝罪をした。 2014年8月に朝日新聞が自社のこれまでの慰安婦報道を検証し、誤報は認めたが謝罪がなかったことについて、池上彰が連載していた同紙のコラム「池上彰の新聞ななめ読み」にて「朝日新聞は謝罪するべきだ」とする批判記事を掲載しようとしたところ、朝日から池上に「掲載できない」とする連絡があり、池上はこの連載の中止を申し出た。この朝日の対応は広く知られることになり、「言論の封殺ではないか」といった批判が社外だけでなく、同社の記者からもtwitterを通じて発生し、結果的に朝日は、池上に対し「掲載したい」と連絡をつけた。池上は自身のコメントを「おことわり」として加えることで掲載に承諾。2014年9月4日朝刊に、池上の執筆した記事を全文掲載し、同時に朝日新聞はこの件について同日の紙面で謝罪、また後日おこなわれた「吉田調書誤報謝罪会見」で再度謝罪をおこなった。 2015年1月26日、日本国内外の8749人が朝日新聞が掲載した計13本の記事について「虚報」とした上で、「多くの海外メディアに紹介され、ねじ曲げられた歴史を国際社会に拡散させた」、「日本国と国民の国際的評価は著しく低下し、原告らを含む国民の人格や名誉が傷つけられた」とし、1人あたり1万円の慰謝料と謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告側事務局は「朝日新聞を糺す国民会議」。同年、3月25日、1万7千人が追加提訴し、原告数は2万5700人となった。東京地裁は2016年7月、原告側の請求を棄却。東京高裁も2017年9月の判決で原告側の控訴を棄却し、原告側が上告せず朝日新聞の勝訴が確定した。 同年2月9日、日本国内の482人は、「吉田清治証言に疑義が生じていたのに、朝日は報道内容の正確性を検証する義務を怠り、読者や国民の『知る権利』を侵害した」として、1人あたり1万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。原告側事務局は「朝日新聞を正す会」。東京地裁は2016年9月、原告側482人の請求を棄却。東京高裁も2017年3月の判決で原告側238人の控訴を棄却。最高裁判所第三小法廷も2017年10月24日付決定で原告側28人の上告を退け朝日新聞の勝訴が確定した。 また、同年2月18日、慰安婦をめぐる朝日新聞の報道(吉田証言を基とする記事、および、女子挺身隊と慰安婦を混同した記事計52本)で「誤報を長年放置した結果、慰安婦像が建てられて嫌がらせを受けるなど精神的苦痛を負った」として、米カリフォルニア州グレンデール市近隣に住む日本人3人と国内の大学教授ら計約2千人が、同社に慰謝料と主要米紙などへの謝罪広告の掲載を求める訴訟を東京地裁に起こした。訴状では「慰安婦問題に関する誤った事実と見解が真実として世界に広まり、慰安婦像の設置などで定着した」と指摘し、「日本人の尊厳を傷つけて国際社会における客観的評価を下げた。世界に対し謝罪を発信することが必要だ」とした。2017年4月、東京地裁は原告側の訴えを棄却した。原告側は控訴したが、2018年2月、東京高裁は原告側の控訴を棄却し、朝日新聞の勝訴が確定した。 同年2月19日には、朝日新聞の慰安婦報道を外部から検証してきた「朝日新聞『慰安婦報道』に対する独立検証委員会」が報告書を発表し、1991年から1992年にかけての朝日新聞の慰安婦報道について「強制連行プロパガンダ(宣伝)」と断定し、このプロパガンダによって国際社会に誤った事実が拡散し、日本の名誉を傷つけていると結論づけた。また、朝日新聞の組織した「第三者委員会」の「影響は限定的であった」との検証結果については「朝日の責任を回避する議論に終始した」と指摘した。 2018年8月、平成26年8月5日付朝刊の特集「慰安婦問題を考える 上」に掲載された記事の英訳版のソースに、検索エンジンによってサイトが表示されるのを抑制する「noindex」「nofollow」「noarchive」の3つのメタタグが埋め込まれていることが確認された。朝日新聞広報部はこのような設定がなされていたことについて、作業ミスであり現在は修正済である旨を回答している。詳細は「朝日新聞英語版慰安婦報道とメタタグ事件」を参照
※この「慰安婦「強制連行」報道」の解説は、「朝日新聞」の解説の一部です。
「慰安婦「強制連行」報道」を含む「朝日新聞」の記事については、「朝日新聞」の概要を参照ください。
- 慰安婦「強制連行」報道のページへのリンク