学校保健と視力管理
(2)被検者との間に何の障害物もない壁の中央に,普通の人の目の高さになるようにとりつける。 (3)表面照度を300~700ルクスにし,古くなったり紙の汚れた視力表は使わない。 (4)被検者の視野の中に,明るい窓や裸の光源がなく,できれば,窓は被検者の背後にあることが望まれる。 (5)天候の影響をさけるため,視力照明装置を使用することがあるが,この場合の蛍光灯は早目にとりかえること。 その他,遮へい器のあて方,遮へいした目を圧迫しないこと,ゆっくり視標を読みとること。指先などで視標をさすと汚れるため,適当な指示棒を使うこと。 |
学校の照度基準は,学校環境衛生の基準JISZ9110に基づいて定められています。たとえば,体育館は普通教室と同じように,自然採光を主とし,人工照明はその補助として考えられています。 (2)照度差をなくすために,蛍光灯のほかに,白灯,メタルハイドランプ,水銀灯,高圧ナトリウム灯などが高い天井の上に使われ,まぶしい光源が直接目に入らないような設備が必要です。 |
保育園,幼稚園ですごした生活の中で,視力とのかかわり合い,異常の有無,既応症の有無,眼に関するくせ等について保母,養護教諭間の情報交換が必要であると思います。このことは,保育園や幼稚園だけでなく,地域の小学校から中学校,中学校から高等学校の引き継ぎも同じような必要性があると思います。 |
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(1)5mの距離で視標がわからないときは,視標の見える位置まで近づき,そこから視標までの距離を測り,その距離がxmとすれば,x/5×(見えた視標)となります。 (2)5mの視標で,1m近づいても0.1の視標が読めないときは,眼の前で検者の指の数をあてさせます。 そして,30cmとすると, R.V=30cm/指数(弁)=30cm/F.Z.=30cm/n.d=30cm/f.C. (注)n.d(numerus’digitorum-ラテン語) f.C(finger counting-英語) 眼前手動弁またはR.V=v.d.A/H.B.=m.m.=f.m.等と書きます。 (4)手の動きもわからないときは,明暗がわかれば,明暗(弁)または光覚(弁),または R.V=L.S(+)=SiL(+)=S.l. s.l(sensus luminis-ラテン語) (5)光もわからないときを,全盲または視力=0=光覚なし=S.L(-)と書きます。 (6)視力測定をした後いかなるレンズによっても矯正されないときは,( )の中にGl.b.n(眼鏡不応)または,n.c(矯正不能)と書きます。 |
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+は凸レンズ -は凹レンズ 処方箋としては,一般的には左図の書式になっています。医師法により,眼鎮を処方するのはすべて医師でなければなりません。特にはじめて眼鏡を作成する際は必ず眼科医に受診し,処方箋を発行してもらわねばなりません。 読み方としては 瞳孔距離58mm 遠くを見るために常にかけているメガネか,近くを見るための老眼鎮かを記入するための項目です。 (2)S球面 (4)軸 (5)プリズム プリズムのメガネを必要とするときはプリズムの度数を記入します。 (6)基底 (7)瞳孔距離 |
学校により,実にさまざまな受診勧告書が,子どもたちや父兄から私の診療所へもって来られます。用紙は大きく分けて,屈折異常と学校検診後の外眼部疾患に限られるようですが,その内容は,診断名,治療の必要の有無,治療報告,プールの可否等がよく書かれています。 私は,外眼部の疾患についての解答報告や回収もそれなりに必要であると思いますが,特に,屈折異常,眼筋,斜視,弱視についての報告は,医療サイドからも非常に大切なことであると思っています。私は,屈折異常の結果について,次のような返事を全員に渡しています。 |
Q.眼科医にメガネをかけるようにいわれましたが,かけたがらない子どもにはどうすればよいでしょう |
私の診療所でも,メガネを処方したのに,なかなかメガネを作成しない子どもがかなりいます。低学年ほど強いようです。最近では,高学年になると,メガネのファッションにもなれて,さほど抵抗感はないようになってきました。 (1)格好が悪い (3)はずかしい (4)顔に似合わない (5)ひやかされる (9)面倒くさい (16) とにかくいや など,子どもたちにしてみれば,それなりの理由があります。メガネの必要なことを説きながら,理由の一つひとつを納得いくまで話し合っていくはかありません。 特に困るのは,子どもたちだけではなく,両親までも頑固にメガネをかけさせることを拒否する場合です。この場合,「勝手にしなさい」といえば,ほとんどの人が放置したり,視力回復センター通いや,針や灸,その他治療に多額のお金を浪費してしまい,結局1~2年たつと再処方を受けにくることが多いようです。このような場合,早急に納得させることはなかなかむずかしく,何回も両親と話をし,子どもが近視になっても大騒ぎしたり,他人の子どもと比較したりしないで両眼での視力が0.6以下になれば眼鏡が必要なこと,近視治療で治ったり,視力が改善するようなことは例外的であること,考えようによっては近くの仕事をするにはより現代人に適していること等,くどいくらいに説明をし納得させなければなりません。 |
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子ども一人ひとりに視力手帳(カード)を作成すべきでしょう。すべての学童に視力値を記入させるのは大変なので,測定結果は線グラフで学童自身に書かせるとよいと思います。 利点としては, (1)視力の変動,特に低下の著しい場合は,必ず専門医の受診をうながし,適度なメガネを装用する時期を決定していく目やすとなる。 (2)視力管理手帳を眼科専門医や学校医に見せることにより,今後の指針のもととなる。 なお,視力検査の時期としては,4,9,11月の年3回が理想的です。 ただ注意したいことは,裸眼視力はあくまでもそのときの一つの目安にすぎません。そのため,子どもたちがこの視力手帳のグラフに一喜一憂するほどのことはありません。私は,次のような視力管理カードを手渡し,子どもたちの視力の経過を観察しています。 |
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視力が悪いとすぐに近視だと考える人が多いようですが,これは大きな間違いです。近視ではなく遠視や乱視の場合もありますし,このような屈折異常以外の眼科的疾患によることもあります。したがって,一概に,視力がこれくらいならメガネをかけなさい,とはいえません。視力の悪い原因やその人の年齢,生活状況などもかかわってきます。近視についていえば,子どもでは,もちろん学年にも関係しますが,0.6以下では学校生活においてかなりな不便が生じてきますので,メガネが必要でしょう。遠視や乱視については,裸眼視力が悪ければメガネは必要ですし,視力がよくても,疲労感や頭痛や斜視などの症状がある場合はメガネが必要になってきます。いずれにしても,必ず眼科医で検査をしてもらい,メガネの必要性をたずねてください。 |
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Q.視力低下で眼科受診した翌日,「見えにくい」と訴えてきました。ひとみが大きく開いています。どうしてですか。 |
眼科受診の際,視力低下があると目の無調節状態での屈折度を測定検査する必要があります。そのためにひとみを完全に開く(散瞳させる)必要があります。このときに使用する点眼薬を散瞳薬といいます。散瞳薬にはいろいろありますが,幼児ではアトロビン(正常のひとみに回復するのに10日~2週間),学童では,サイプレジン(散瞳は1~2日)が最適といわれています。その他,ミドリンPは,点眼すれば5~6時間の効果です。この場合,医師はアトロビンかサイプレジンを点眼したものと思われますので翌日も散瞳しているのだと推察されます。ところで,点眼薬の作用として散瞳している場合はまず心配いりませんが,検査や治療も受けないのに散瞳している場合は,他の病気を考える必要がありますので,眼科医へ受診させてください。 |
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眼科診療の基本は,まず視力から始まって視力に終わるといってもよいでしょう。視力の低下が屈折異常のためか,他の病気によるものか,検査をしていきます。検査の順序と項目については下図のとおりです。 |
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