堺市立図書館「BL」本排除事件とは? わかりやすく解説

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堺市立図書館「BL」本排除事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/12 15:01 UTC 版)

ボーイズラブ」の記事における「堺市立図書館「BL」本排除事件」の解説

腐女子#児童ポルノ取り締まり・規制との関連」、「図書館学」、および「図書館の自由に関する宣言」も参照 2008年大阪府堺市立図書館で、ボーイズラブ小説収蔵貸出されていることを非難する市民の声」によって廃棄要求されボーイズラブとされた5500冊の本が開架から除去される事件起きた。この「市民の声」というのは、実際は「匿名市民ひとり(同一人物)から」と、その意向受けた市議たちで、このことは図書館側も認めている。市議上成彰は「世界日報」の記事で、図書館ボーイズラブがあることを激しく批判し実質的にポルノ本」であり、図書館にあるのはおかしいと主張している。市民活動家寺町みどりは、「堺市届いたメールから分かったことは、特定図書排除したい人たちは、『同性愛自体嫌悪している。同性愛への差別偏見から『BLをこどもに見せるな』といい、『BL本を処分せよ』と迫った。」と指摘している。 このボーイズラブ除去運動は、議員介入純潔教育やジェンダーフリーバッシング、漫画・アニメ・ゲーム性表現暴力表現法的規制をかけるためのロビー活動行っている韓国発祥カルト統一教会関連会社世界日報社」のバックアップ受けていたことが指摘されている。(なお、統一教会は「同性愛創造原理反す不自然な関係」であるとして否定しており、「同性愛倫理道徳問題であり、人権問題ではない」と主張している。)図書館が示す排除理由二転三転し、ボーイズラブとされる基準不明瞭であったが、ボーイズラブ本として約5500冊がリストアップされ、堺市側は、これらの本は「全て閉架保存」「今後収集しない」「青少年には貸出しない」と決定した。この意思決定に至る議論経過記録残っていない。図書館定まらない対応に、市民不信感募らせた。 この事件以前福井でも、バックラッシュ流れの中で、ジェンダー男女共同参画関連するとされた本「ジェンダー図書」が、「市民の声」によって図書館から排除される事件起きており、原因究明のために東京大学名誉教授上野千鶴子寺町みどりらによって「ジェンダー図書排除究明原告団が結成されていた。寺町福井事件以降同様の事件防ごうバックラッシュ派のインターネット掲示板フェミナチ監視する掲示板」に注視しており、そこで匿名男性図書館BL本が大量にあるという苦情電話をかけていることを知った述べている。同原告団は堺市決定同様の問題ととらえ、連絡受けた早稲田大学熱田敬子は除去リスト分析した熱田敬子は、除去リストには宮乃崎桜子斎姫異聞』(第5回ホワイトハート大賞受賞した少女小説)なども含まれており、深く検証する前におかしいことがわかるようなものだった述べている。堺市排除理由を「過激な描写」のあるものとしたと回答しているが、性描写のない本、ほとんどない本も含まれており、「挿絵」も理由として挙げられたが、挿絵に裸や性表現のない本やそもそも挿絵のない本も含まれていた。男性同性愛要素のない少女小説セクシュアル・マイノリティ日常描いた作品含まれていたり、同じ作家BLとされる作品でも出版社によって指定されたりされなかったりであったり、同一シリーズ一部だけが指定されていたり、ライトノベル指定される文学指定されていない少女向け女性向け思われる本は指定しているが、男性向けセックスをするのが男女であれば描写程度関わらず指定されていない男性同性愛テーマでも「ゲイ文学」と認知されているものは含まれていない、性描写程度では振り分けされていないストーリー性や文学性があっても同性愛表現があるだけで指定されているなど、図書館員共有する基準持たず各々判断選んだかのように一貫性がなく、暗黙差別あらわになる除去リストであったという。(具体的な内容は、熱田整理したリスト参照のこと) 堺市決定対し報道ネット賛成反対様々な意見があがり、BL図書館にあることを批判する声や、BL読者嫌悪するような意見もあった。「図書館の自由」や「表現の自由」を守るため、上野らや市民団体全国議員などが反対の声をあげ、堺市長と堺市教育長対し市民97人、議員46人、7団体による申し入れがされた。堺市に対して上野を代表に市民などから監査請求行われた監査請求の後、堺市立図書館は「青少年への提供は行なわない」との方針合意撤回し、「請求があれば18歳未満にも貸し出す方針決めた同日から運用始めた。」と新聞報道された。堺市は「拙速で、判断誤った」としている。「BL図書収集保存しない」という措置は、2008年時点では見直されていない堺市立図書館は、BL排除決定するよう外圧があったことを否定している。これに対し寺町は「インターネットにおける各種情報新聞等の報道からも、また、事案経過からも事実反する。」と述べている。 寺町みどりは、同性愛への嫌悪に基づく要求従った堺市立図書館にも、「『ボーイズラブ青少年見せてはいけない』という予断と、セクシュアルマイノリティへの偏見があったのだろう。だからこそ堺市立図書館起きたことは、『ジェンダー図書排除事件ほかならない。」「巷にあふれる『BL本』の悪いイメージことさらに振りまいて、自己規制を迫るのは、差別する側の常套手段だ。(中略)わたしは、図書選別し区別し、隠すことこそが『焚書』であり、『差別』につながると言いたい。」「『どのような理由であろう蔵書排除しない』を基本原則としない限り第二第三の『図書排除事件は、起きるだろう」と述べている。 熱田敬子は、そもそも図書館から本を大量に除去することが大問題であるが、このような暴な指定図書除去することの原理的な問題として、大きく分けて「『BL』という恣意的な括りで、本が排除されるということ」(BLであるかどうか明瞭な定義はないので、図書館除去する本を恣意的選べる)、「『BL』を一括り排除することがそもそも恣意的である、ということ」(図書館ゾーニングをするべきか)の2点があると述べている。他に論点として、次のものが挙げられている。 BLとは何か。 BLわいせつか。18禁か。ポルノか。 BLが有害であるとするなら、「誰にとって」「何故」有害なのか。 わいせつ図書図書館にあっていいのか。 図書館の自由という観点において、堺市図書館の対応はいかがなものか。 また論争における問題点として、次のことが指摘されている。 図書館自由に基づきありとあらゆる知を提供するという図書館立ち位置知られていないBLへの不快感自重意識から、思考停止または論点のすり替えが行われた。 この事件は、表現の自由侵害であると同時に明確な差別事件でもあったが、その点は理解されにくく、当時報道でも識者の間でもあまり注目されなかった。背景には、女性性的表現享受することに対す女性自身後ろめたさ世間冷淡さ保守的なフェミニストも含む)、男性オタクからの腐女子へのバッシングだけでなく、ホモ・フォビアセクシャル・マイノリティ差別があることも指摘されている。 BL対す表現規制動きその後継続しており、たとえば2020年代現在東京都青少年の健全な育成に関する条例によって毎月指定される不健全図書大半BL作品となっている。指定され作品都内青少年向けに販売できなくなるほか、Amazon.co.jpにおける販売停止される不健全指定され書籍のタイトルなどは東京都ウェブサイト上の不健全指定図書類一覧で確認できる)。参議院議員山田太郎は、こうした青少年健全育成理由としたBL規制危惧表明している。

※この「堺市立図書館「BL」本排除事件」の解説は、「ボーイズラブ」の解説の一部です。
「堺市立図書館「BL」本排除事件」を含む「ボーイズラブ」の記事については、「ボーイズラブ」の概要を参照ください。

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