国会役職者への不信任決議
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「不信任決議」の記事における「国会役職者への不信任決議」の解説
議会が自ら選任した役員を解任するには国会法など議会法上に特段の定めがある場合を除き許されない。国会法は常任委員長についてのみ解任規定を置いている(国会法30条の2)。しかし、議会運営を混乱させて責任を明らかにする必要がある場合や誠実に職務を執行せず議会運営が停滞しているとみられる場合には当該役員に対して自ら職を辞するよう不信任決議をなしうる(常任委員長に対しても解任が相当とまではいえない場合には不信任決議をなしうる)。不信任決議によって辞任が強制されたりすることはなく決議に拘束力はないが、当該役員は在任の根拠を失うため自らの進退を決する政治的・道義的責任を負うこととなる。国会役職者に対する不信任決議については法的拘束力があるとみる学説も存在するが、1961年6月8日の「衆議院副議長久保田鶴松君不信任決議案」においてはその可決によっても当然に失職とされたわけではなく、同日午後に久保田副議長から清瀬一郎議長宛に辞職願が提出されたのを受け、国会法第30条に基づいて「副議長久保田鶴松君辞職の件」として記名投票による採決が行われた上で辞職が許可されている。 衆議院規則は議員が議長・副議長・仮議長のいずれかの信任又は不信任に関する動議若しくは決議案を発議するときは、理由を附して50人以上の賛成者と連署して議長に提出しなければならないとする(衆議院規則第28条の2第1項・第3項)。発議要件について参議院規則には同旨の規定はないが、同様の重い発議要件を課すべきとされる。 役員の不信任に関する議事は一般の議事に対しては優先して扱われる。議長の不信任決議案が発議された場合、国会法上の「議長に事故がある」ものとして扱われる(昭和53年衆議院先例集66)。そして国会法の規定に従って副議長が議長の職務を行い決議案の採決が行われる(国会法21条)。 なお、常任委員長に対する解任決議は本会議で「その院の決議をもって」行われ(国会法30条の2)、常任委員会における不信任決議においてこの規定を援用して委員長を解任することはできない(法的拘束力のない不信任決議をなしうるにとどまる)。委員長の信任または不信任動議の議事は、慣例では委員長の指名する委員会理事が代行する。 本会議での国会役職者への不信任決議議決例本会議採決日議院対象者役職採決可否票差備考 1949年(昭和24年)05月31日 参議院 松嶋喜作 副議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1949年(昭和24年)11月30日 衆議院 岩本信行 副議長 否決 129 228 099 1952年(昭和27年)6月27日 参議院 佐藤尚武 議長 否決 031 171 140 1952年(昭和27年)7月1日 参議院 佐藤尚武 議長 否決 028 118 090 1952年(昭和27年)7月31日 衆議院 岩本信行 副議長 否決 102 202 100 1953年(昭和28年)8月1日 衆議院 堤康次郎 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1954年(昭和29年)6月5日 衆議院 堤康次郎 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1956年(昭和31年)5月30日 参議院 寺尾豊 副議長 否決 068 122 054 1956年(昭和31年)6月2日 参議院 芥川治 事務総長 否決 049 128 079 1959年(昭和34年)04月3日 参議院 松野鶴平 議長 否決 065 91 026 参議院における記名投票での最小の票差。 1959年(昭和34年)12月21日 衆議院 加藤鐐五郎 議長 否決 116 224 092 1961年(昭和36年)6月8日 衆議院 清瀬一郎 議長 否決 134 223 089 1961年(昭和36年)6月8日 衆議院 久保田鶴松 副議長 可決 207 150 -057 即日辞任。 1962年(昭和37年)12月22日 参議院 重宗雄三 議長 否決 062 101 039 1962年(昭和37年)12月22日 参議院 重政庸徳 副議長 否決 056 105 049 1963年(昭和38年)6月22日 衆議院 清瀬一郎 議長 否決 129 215 086 1963年(昭和38年)6月22日 衆議院 原健三郎 副議長 否決 113 178 065 1963年(昭和38年)6月29日 参議院 重宗雄三 議長 否決 075 110 035 1965年(昭和40年)05月27日 参議院 重政庸徳 副議長 否決 056 104 048 1965年(昭和40年)05月27日 参議院 重宗雄三 議長 否決 056 105 049 1965年(昭和40年)12月03日 衆議院 田中伊三次 議長 否決 101 173 072 1965年(昭和40年)12月10日 参議院 重宗雄三 議長 否決 069 122 053 1965年(昭和40年)12月10日 参議院 河野謙三 副議長 否決 087 120 033 1969年(昭和44年)7月11日 衆議院 石井光次郎 議長 否決 130 187 057 衆議院における記名投票での否決の最小の票差。 1969年(昭和44年)7月11日 衆議院 小平久雄 副議長 否決 146 204 058 1969年(昭和44年)7月26日 衆議院 松田竹千代 議長 否決 125 212 087 1969年(昭和44年)7月27日 衆議院 藤枝泉介 副議長 否決 134 219 085 1969年(昭和44年)8月3日 参議院 安井謙 副議長 未決 000- 00- 000- 議長が大学管理法案の繰上げ採決を行ったため紛糾し未決。 1970年(昭和45年)1月14日 参議院 重宗雄三 議長 否決 098 128 030 1971年(昭和46年)11月26日 衆議院 船田中 議長 否決 101 263 162 1971年(昭和46年)11月26日 衆議院 荒舩清十郎 副議長 否決 094 254 160 1975年(昭和50年)6月30日 参議院 河野謙三 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1975年(昭和50年)07月3日 参議院 前田佳都男 副議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1975年(昭和50年)12月12日 参議院 河野謙三 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1978年(昭和53年)6月14日 参議院 安井謙 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1982年(昭和57年)7月30日 参議院 徳永正利 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1983年(昭和58年)11月28日 参議院 木村睦男 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1992年(平成4年)6月07日 参議院 長田裕二 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 1992年(平成4年)6月13日 衆議院 櫻内義雄 議長 否決 157 326 169 PKO国会。 1995年(平成7年)6月13日 衆議院 土井たか子 議長 否決 186 298 112 終戦50年決議の取扱について。 1995年(平成7年)6月13日 衆議院 鯨岡兵輔 副議長 否決 184 299 115 終戦50年決議の取扱について。 1997年(平成9年)12月12日 参議院 斎藤十朗 議長 否決 096 143 047 1999年(平成11年)8月12日 参議院 斎藤十朗 議長 否決 092 139 048 2000年(平成12年)10月19日 参議院 井上裕 議長 否決 096 126 030 2000年(平成12年)11月21日 衆議院 綿貫民輔 議長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 2002年(平成14年)7月31日 参議院 倉田寛之 議長 否決 097 135 038 2004年(平成16年)6月5日 参議院 倉田寛之 議長 否決 020 128 108 参議院における記名投票での最大の票差。 2004年(平成16年)6月5日 参議院 川村良典 事務総長 否決 001少数 999多数 999不明 起立採決。 2007年(平成19年)6月20日 衆議院 河野洋平 議長 否決 118 319 201 2010年(平成22年)2月25日 衆議院 横路孝弘 議長 否決 115 326 211 衆議院における記名投票での最大の票差。 2012年(平成24年)8月10日 参議院 平田健二 議長 否決 42 194 152 参議院における押しボタン式投票での最大の票差。 2013年(平成25年)6月26日 参議院 平田健二 議長 否決 100 128 028 2015年(平成27年)9月18日 参議院 山崎正昭 議長 否決 76 148 072 平和安全法案の取扱について。 2016年(平成28年)12月14日 参議院 伊達忠一 議長 否決 72 167 095 2018年(平成30年)7月19日 参議院 伊達忠一 議長 否決 69 154 085 2022年(令和4年)6月9日 衆議院 細田博之 議長 否決 105 288 183 ※太字は不信任決議可決例 委員会での国会役職者への不信任決議可決例委員会採決日議院委員会不信任対象者役職備考1948年(昭和23年)12月22日 衆議院 予算委員会 上林山栄吉 委員長 辞任拒否。 1994年(平成6年)1月12日 参議院 政治改革に関する特別委員会 本岡昭次 委員長 即日辞任。 2007年(平成19年)6月18日 衆議院 懲罰委員会 横光克彦 委員長 辞任拒否。
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