常任委員長とは? わかりやすく解説

常任委員会

(常任委員長 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/18 23:47 UTC 版)

常任委員会(じょうにんいいんかい)または常設委員会(じょうせついいんかい)とは、日本国会または地方議会で設置される委員会のうち、本会議に提出された議案を能率的・専門的に審査するために『常時』設置されているもののことである[1]

議員は、官職を兼ねる者を除き、必ずその議院・議会の常任委員会の一つ以上に所属する(国会法第42条第2項、各条例)。

概要

常任委員会は法律・条例であらかじめその設置が規定され、衆議院参議院の各々に17の常任委員会が設置されている。

国会の常任委員会の委員長は国会法第25条で本会議で常任委員から選挙で選出することになっているが、議長が指名(衆議院規則第15条・参議院規則第30条)する慣例になっている。

上述のように官職を兼ねる者を除いて、すべての議員が必ずいずれかの委員会に所属しなければならないが、通常、政党の要職に就いている議員は国家基本政策委員会に、総理大臣議長の経験者は懲罰委員会に所属することが慣例となっている。

なお、国会に提出された議案も同様に常任委員会へ付託され審議されるが、所掌するべき委員会が決まらず、かつ特別委員会を設け時間をかけて審議する必要がないと判断された場合、議長の諮問に関する事項として議院運営委員会に付託される。

日本の国会の常任委員会

衆議院の常任委員会

衆議院の常任委員会は衆議院規則で以下のように定められている。

名称 員数 所管
1 内閣委員会 40 内閣の所管に属する事項(国家安全保障会議の所管に属する事項を除く。)
宮内庁の所管に属する事項
公安委員会の所管に属する事項
他の常任委員会の所管に属さない内閣府の所管に属する事項
2 総務委員会 40 総務省の所管に属する事項(経済産業委員会及び環境委員会の所管に属する事項を除く。)
地方公共団体に関する事項
人事院の所管に属する事項
3 法務委員会 35 法務省の所管に属する事項
裁判所の司法行政に関する事項
4 外務委員会 30 外務省の所管に属する事項
5 財務金融委員会 40 財務省の所管に属する事項(予算委員会及び決算行政監視委員会の所管に属する事項を除く。)
金融庁の所管に属する事項
6 文部科学委員会 40 文部科学省の所管に属する事項
教育委員会の所管に属する事項
7 厚生労働委員会 40 厚生労働省の所管に属する事項
8 農林水産委員会 40 農林水産省の所管に属する事項
9 経済産業委員会 40 経済産業省の所管に属する事項
公正取引委員会の所管に属する事項
公害等調整委員会の所管に属する事項(鉱業等に係る土地利用に関する事項に限る。)
10 国土交通委員会 45 国土交通省の所管に属する事項
11 環境委員会 30 環境省の所管に属する事項
公害等調整委員会の所管に属する事項(経済産業委員会の所管に属する事項を除く。)
12 安全保障委員会 30 防衛省の所管に属する事項
国家安全保障会議の所管に属する事項
13 国家基本政策委員会 30 国家の基本政策に関する事項
14 予算委員会 50 予算
15 決算行政監視委員会 40 決算
予備費支出の承諾に関する事項
決算調整資金からの歳入への組入れの承諾に関する事項
国庫債務負担行為総調書
国有財産増減及び現在額総計算書並びに無償貸付状況総計算書
その他会計検査院の所管に属する事項
会計検査院が行う検査の結果並びに総務省が行う評価及び監視並びに総務省が評価及び監視に関連して行う調査の結果についての調査に関する事項
行政に関する国民からの苦情の処理に関する事項
以上に掲げる事項に係る行政監視及びこれに基づく勧告に関する事項
16 議院運営委員会 25 議院の運営に関する事項
国会法及び議院の諸規則に関する事項
議長の諮問に関する事項
裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会に関する事項
国立国会図書館に関する事項
17 懲罰委員会 20 議員の懲罰に関する事項
議員の資格争訟に関する事項

参議院の常任委員会

参議院の常任委員会は参議院規則で以下のように定められている。

名称 員数 所管
1 内閣委員会 20 内閣及び内閣府の所管に属する事項(総務委員会、外交防衛委員会、財政金融委員会及び経済産業委員会の所管に属する事項を除く。)
宮内庁の所管に属する事項
国家公安委員会の所管に属する事項
2 総務委員会 25 総務省の所管に属する事項(環境委員会の所管に属する事項を除く。)
人事院の所管に属する事項
3 法務委員会 20 法務省の所管に属する事項
裁判所の司法行政に関する事項
4 外交防衛委員会 21 外務省の所管に属する事項
防衛省の所管に属する事項
国家安全保障会議の所管に属する事項
5 財政金融委員会 25 財務省の所管に属する事項(予算委員会及び決算行政監視委員会の所管に属する事項を除く。)
金融庁の所管に属する事項
6 文教科学委員会 20 文部科学省の所管に属する事項
教育委員会の所管に属する事項
7 厚生労働委員会 25 厚生労働省の所管に属する事項
8 農林水産委員会 20 農林水産省の所管に属する事項
9 経済産業委員会 21 経済産業省の所管に属する事項
公正取引委員会の所管に属する事項
10 国土交通委員会 25 国土交通省の所管に属する事項
11 環境委員会 20 環境省の所管に属する事項
公害等調整委員会の所管に属する事項
12 国家基本政策委員会 20 国家の基本政策に関する事項
13 予算委員会 45 予算
14 決算委員会 30 決算
予備費支出の承諾に関する事項
決算調整資金からの歳入への組入れの承諾に関する事項
国庫債務負担行為総調書
国有財産増減及び現在額総計算書並びに無償貸付状況総計算書
会計検査に関する事項
15 行政監視委員会 30 行政監視に関する事項
行政評価に関する事項
行政に対する苦情に関する事項
16 議院運営委員会 25 議院の運営に関する事項
国会法その他議院の法規に関する事項
国立国会図書館の運営に関する事項
裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会に関する事項
17 懲罰委員会 10 議員の懲罰に関する事項

国会法における常任委員会の変遷

  • 国会法の条項における序列に倣って左から記載(「委員会」の文字は省略)。
  • 1948年10月11日(第3回国会召集日)の上下2段の例(衆参共通)については、上段が同年7月5日公布の「国会法の一部を改正する法律(昭和23年法律第87号)」による内容で、下段が召集当日公布の「国会法の一部を改正する法律(昭和23年法律第214号)」による内容である。両者はともに召集当日施行のため前者による新委員会構成が後者によって即日上書き改正された形となっていて上段の委員会の存在実績はないが、前者が施行前に廃止されたわけではない(形式的には一旦施行されている)ことから、他例と同様に記載する。

衆議院

改編日 常任委員会
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
1947年
5月3日
外務 治安及び
地方制度
国土計画 司法 文教 文化 厚生 労働 農林 水産 商業 鉱工業 電気 運輸及び
交通
通信 財政及び
金融
予算 決算 議院運営 図書館運営 懲罰
1948年
10月11日
行政調査
及び人事
地方行政 経済安定 法務 外務 大蔵 文部 厚生 商工 農林 水産 運輸 逓信 労働 建設 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
内閣 人事 地方行政 経済安定 法務 外務 大蔵 文部 厚生 商工 農林 水産 運輸 逓信 労働 建設 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
1949年
10月26日
内閣 人事 地方行政 法務 外務 大蔵 文部 厚生 農林 水産 通商産業 運輸 郵政 電気通信 労働 建設 経済安定 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
1955年
3月18日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 社会労働 農林水産 商工 運輸 逓信 建設 予算 決算 議院運営 懲罰
1980年
7月17日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 社会労働 農林水産 商工 運輸 逓信 建設 科学技術 環境 予算 決算 議院運営 懲罰
1991年
8月5日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 厚生 農林水産 商工 運輸 逓信 労働 建設 科学技術 環境 予算 決算 議院運営 懲罰
1991年
11月5日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 厚生 農林水産 商工 運輸 逓信 労働 建設 安全保障 科学技術 環境 予算 決算 議院運営 懲罰
1998年
1月12日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 厚生 農林水産 商工 運輸 逓信 労働 建設 安全保障 科学技術 環境 予算 決算行政
監視
議院運営 懲罰
2000年
1月20日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 厚生 農林水産 商工 運輸 逓信 労働 建設 安全保障 科学技術 環境 国家基本
政策
予算 決算行政
監視
議院運営 懲罰
2001年
1月31日
内閣 総務 法務 外務 財務金融 文部科学 厚生労働 農林水産 経済産業 国土交通 環境 安全保障 国家基本
政策
予算 決算行政
監視
議院運営 懲罰

参議院

改編日 常任委員会
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
1947年
5月3日
外務 治安及び
地方制度
国土計画 司法 文教 文化 厚生 労働 農林 水産 商業 鉱工業 電気 運輸及び
交通
通信 財政及び
金融
予算 決算 議院運営 図書館運営 懲罰
1948年
10月11日
行政調査
及び人事
地方行政 経済安定 法務 外務 大蔵 文部 厚生 商工 農林 水産 運輸 逓信 労働 建設 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
内閣 人事 地方行政 経済安定 法務 外務 大蔵 文部 厚生 商工 農林 水産 運輸 逓信 労働 建設 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
1949年
10月26日
内閣 人事 地方行政 法務 外務 大蔵 文部 厚生 農林 水産 通商産業 運輸 郵政 電気通信 労働 建設 経済安定 予算 決算 議院運営 懲罰 図書館運営
1955年
3月18日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 社会労働 農林水産 商工 運輸 逓信 建設 予算 決算 議院運営 懲罰
1980年
7月17日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 社会労働 農林水産 商工 運輸 逓信 建設 予算 決算 議院運営 懲罰
1991年
8月5日
内閣 地方行政 法務 外務 大蔵 文教 厚生 農林水産 商工 運輸 逓信 労働 建設 予算 決算 議院運営 懲罰
1998年
1月12日
総務 法務 地方行政・
警察
外交・防衛 財政・金融 文教・科学 国民福祉 労働・社会
政策
農林水産 経済・産業 交通・情報
通信
国土・環境 予算 決算 行政監視 議院運営 懲罰
2000年
1月20日
総務 法務 地方行政・警察 外交・防衛 財政・金融 文教・科学 国民福祉 労働・社会政策 農林水産 経済・産業 交通・情報通信 国土・環境 国家基本
政策
予算 決算 行政監視 議院運営 懲罰
2001年
1月31日
内閣 総務 法務 外交防衛 財政金融 文教科学 厚生労働 農林水産 経済産業 国土交通 環境 国家基本
政策
予算 決算 行政監視 議院運営 懲罰
  • 1980年7月17日の改編前は、衆参両院の常任委員会の名称・総数は国会法の同じ条項で規定されていたため同一であった(理事・委員の数などの内部構成は各議院規則で規定するため別)。なお、当該再編では参議院の委員会には変動がなかったが、衆議院との条項分離(独立)のため国会法の条文改正は行われているので、1955年3月18日のセルとは統合せず別扱いとした。

常任委員長の選挙

議長からの指名によらず投票で選出された例
選挙日 議院 委員会 委員長
1958年(昭和33年)6月11日 衆議院 内閣委員会 内海安吉
地方行政委員会 鈴木善幸
法務委員会 小島徹三
外務委員会 櫻内義雄
大蔵委員会 早川崇
文教委員会 坂田道太
社会労働委員会 園田直
1958年(昭和33年)6月12日 衆議院 農林水産委員会 松浦周太郎
商工委員会 長谷川四郎
運輸委員会 塚原俊郎
逓信委員会 淺香忠雄
建設委員会 堀川恭平
予算委員会 楢橋渡
決算委員会 田中彰治
議院運営委員会 江崎真澄
懲罰委員会 山口好一
1959年(昭和34年)7月1日 参議院 内閣委員会 中野文門
社会労働委員会 加藤武徳
商工委員会 山本利壽
運輸委員会 平島敏夫
1963年(昭和38年)12月9日 衆議院 内閣委員会 綱島正興
地方行政委員会 森田重次郎
法務委員長 浜野健吾
外務委員会 赤澤正道
大蔵委員会 山中貞則
文教委員会 久野忠治
1969年(昭和44年)7月28日 衆議院 議院運営委員会 塚原俊郎
1972年(昭和47年)12月25日 衆議院 大蔵委員会 鴨田宗一
社会労働委員会 田川誠一
農林水産委員会 佐々木義武
商工委員会 浦野幸男
2013年(平成25年)12月5日 参議院 内閣委員会 山東昭子[2]
経済産業委員会 北川イッセイ[3]
2025年(令和7年)6月18日 衆議院 財務金融委員会 阿久津幸彦[4]

地方議会の常任委員会

普通地方公共団体の議会には、条例で常任委員会が置かれる(地方自治法第109条第1項)。
予算その他重要な議案、陳情等について公聴会を開催し、真に利害関係を有する者又は学識経験を有する者等から意見を聴くことができる(第109条第5項)。

脚注

  1. ^ 委員会の種類 | 常陸太田市公式ホームページ
  2. ^ 水岡俊一解任決議可決後の選出。
  3. ^ 大久保勉解任決議可決後の選出。
  4. ^ 井林辰憲解任決議可決後の選出。

関連項目


常任委員長

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 14:21 UTC 版)

衆議院」の記事における「常任委員長」の解説

常任委員長は国会法上の役員である(国会法16条)。常任委員長は、本会議委員の中から選挙国会法第25条もしくは議長において指名衆議院規則第15条第1項)で選任されるが、後者場合がほとんどである。この場合事前に会派間で協議された常任委員長各会派割当て会派申出候補者基づいておこなわれる委員の選任は、総選挙後初め召集される会期始め行われる国会法42条および衆議院委員会先例9号)か、国会法または衆議院規則の改正により必要となったとき(衆議院委員会先例10号)のみであり、その他の場合異動とみなし、委員辞任補欠選任で対処することになっているまた、多く会派は、毎年秋に召集される臨時会冒頭で各委員の構成見直すことを例としていることから、実際に委員の構成大きく変わるのは総選挙後国会毎年秋に召集される臨時会であり、常任委員長が選任されるのはその際である。現職第182回国会冒頭議長によって指名された。 各議院において特に必要がある認めるときは、その院の議決をもって(すなわち本会議において)、常任委員長を解任することができる(国会法30条の2)。委員会でも、不信任動議可決することは可能であるが、この動議法的拘束力もたない衆議院本会議解任決議可決され実例はない。衆議院委員会での不信任動議可決例は過去に2例あり、1948年昭和23年12月予算委員長対するものと、2007年平成19年6月懲罰委員長対するものとがある。 委員長は、委員会議事整理し秩序保持する国会法48条)。

※この「常任委員長」の解説は、「衆議院」の解説の一部です。
「常任委員長」を含む「衆議院」の記事については、「衆議院」の概要を参照ください。

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