使用車両による騒音問題
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「東北・上越新幹線反対運動」の記事における「使用車両による騒音問題」の解説
「埼京線#騒音問題」も参照 東北・上越新幹線の高架化による騒音・振動公害の問題は、通勤新線(埼京線)にも新幹線と同様に懸念されていた。 そのため、国鉄東京第三工事局長および第一工事局長が連名で1982年(昭和57年)5月17日付で東京都環境保全局長へ提出した公文書「東北新幹線(西日暮里・荒川間)等の建設計画に伴う環境対策について」においては、「6 通勤別線の騒音・振動対策」の項で「通勤別線と新幹線とは、同一構造で建設し、一般高架部、橋りょう部、トンネル部すべての区間で前記の新幹線と同等の騒音・振動対策を通勤別線に対して実施する。従って、通勤別線の騒音・振動は、新幹線のそれとほぼ同等の値になるものと予想するが、周辺の立地条件等を勘案して十分な音源対策を実施し、沿線の環境保全につとめる。」としていた。また、北新連との訴訟の和解文において「3.債権者国鉄は、債権者住民らとの間において、在来線の騒音、振動対策として、今後ともロングレール化、レールの重量化、枕木のコンクリート化、ゴムパットの使用及び鉄桁対策等に努力するとともに、さらに各種発生源対策の技術開発に努める。」との文言が盛り込まれていた。 使用車両面においては、開業前後の時期、より低騒音な車両として205系が開発されており、それを埼京線に投入する案もあったが、当時投入された山手線の205系が好評だったこと、そして、当時の国鉄財政状況は最悪の状態であったため、国鉄は予算査定にシビアな姿勢で臨んでいた。日経産業新聞によれば、国鉄は以下のような計算をしていた。 1984年12月、埼京線として1985年11月の開業の目処が立ち 車両増強が必要となったため、1985年度発注分として205系を100両を発注した。車両制作期間として6か月から8か月程度を見込んでの措置であり、前年度の40両に比較して倍以上の数であった。山手線、埼京線とも当時の編成は10両であったので、編成組み換えなどの煩雑な作業による経費増加を抑えて転用することができる。 — 「国鉄 来年度100両発注 山手線のステンレス車両」、『日経産業新聞』1984年12月13日付け 3面 なお、山手線の在籍車両は当時でも550両程あるため、1985年度の100両を投入しても山手線の置き換えは完了せず、当時の時点で、4年 - 5年にまたがった更新計画として考えられている。山手線でさえこのような状況で、かつ新車を必要とする線区が数多くあった中、国鉄には埼京線に新車を回す余力はなかった。結局、埼京線への新車投入は見送り、205系を投入した山手線から103系を捻出、その分を充当して運用せざるを得なくなった。 よって、懸念されていた騒音は、上落合地区新幹線反対同盟 が、埼京線使用列車の試運転時に測定した測定値によると、各駅停車では上りの平均が72.3ホン、下りの平均が72.85ホン、快速では上りの平均が76.3ホン、下り平均が75.4ホン(当時の騒音単位、現・デシベル(dB))と、埼京線が新幹線の騒音を越えることを公表。そして、実際に開業すると、200系が最高速度110km/hで走行する新幹線よりも、埼京線に転用された103系が最高速度100km/hで走行する方が10ホンほど騒音が大きいという皮肉な結果となった。このような結果となった理由としては、103系の車両重量や走行時の主電動機の音の影響や、新幹線よりも埼京線の運転本数の方がはるかに多かったことが挙げられる。 1985年(昭和60年)10月30日に行われた、国鉄との交渉では「国鉄側も埼京線の騒音問題について誤算だったことを認め、車両の整備で対応することを約束した。」としていた。しかし、国鉄側が「昭和60年以降は、国鉄の分割民営化への動きが本格化し、担当局であった東京第三工事局の存続すら難しい局面を迎えたこともあって、もはや住民との交渉の当事者能力を喪っていった。こうして、継続交渉は何らかの合意に至ることなく幕を引かざるを得なかった。」となったことで、事実上この問題は棚上げ状態となった。 その後、埼京線用103系の置き換えは国鉄民営化を挟み、山手線の205系化が完了した後に着手され、1990年には全車両が205系に置き換えられた。しかし、東京都環境保全局による「平成10年度在来線鉄道騒音調査結果報告書」によると、同一地点(板橋区舟渡)において、205系化後の埼京線の騒音は未だ新幹線を上回っていることが示されていた。また、東京都北区生活環境部長は、2002年(平成14年)6月19日北区議会において「在来線の速度、騒音、振動測定と、対策の検証につきましては、新設線や大規模改良線の指針を除きまして、在来線につきましては、環境基準等が設定されておりません。この点につきましては、特別区長会として、国に対しこれまでも、在来線の騒音対策として、環境基準等を設けて、新幹線に準ずる防止対策を行うよう適切な措置を講じられたいとの要望をしてきているところでございます。」と答弁した。しかしこの問題も、2013年よりE233系7000番台へ置き換えられ、205系よりも騒音が小さくなったことなどから、この問題は収束に向かっていった。
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